クリスマスソングの季節到来!
12月の足音がすぐそこまでやってきています。気付けば街にクリスマスソングが流れ出す季節です。そこで今回は、クリスマスソング集として、聴きごたえのあるアルバムを紹介できればと思います。
クリスマスアルバムは数多くリリースされており、この季節はまさにリリースラッシュになることが予想されます。内容といえば玉石混交。当りもあればハズレもあります。どうせ聴くなら質の高いアルバムで、充実したミュージシャン達によるナイスな音を楽しみたいですね。 そんな素敵なアルバムと楽曲をここでご紹介したいと思います。
なんといってもクリスマスソングは、我々が幼少の頃から聴き続けている、いわばスタンダードソングです。心温まるクリスマスソングは、気温が下がる12月にはある種の防寒着にも匹敵するマストアイテムであり、カシミアのマフラーのように心地よい存在といっても過言ではないはずです。 記憶の中に、知らぬ間にインプットされた美しいメロディーの数々は、聴こえてきた瞬間に私たちを懐かしく暖かな気持ちにしてくれます。そんなアルバムや楽曲を探っていきます。
■ 推薦アルバム:フォープレイ『SNOWBOUND』(1999年)

1999年、フォープレイがリリースした名盤であり、クリスマスをテーマにしたアルバム。お約束のクリスマスベルの音などがインサートされ、クリスマス感満載だ。 楽曲は『サンタクロース・イズ・カミング・トゥ・タウン』や『アメイジング・グレイス』など、クリスマス・ムードに溢れている。 ボブ・ジェームス、ラリー・カールトン、ネイザン・イースト、ハービー・メイソンの名手達がクリスマスソングを手掛けており、その出来栄えは言わずもがなだ。 洗練された演奏に洗練されたアレンジ。企画盤にはない音楽の一体感と説得力がある。
推薦曲:「SNOWBOUND」
このアルバム中、一番意外で特筆すべき楽曲。この曲がアルバムの質を数ランクアップさせている。というのは、この楽曲のソングライターはスティーリー・ダンのメンバー、ドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーだからだ。 フォープレイのいつもの楽曲よりも一捻りも二捻りも効いたこの異質ともいえる楽曲により、アルバム全体が締まって聴こえてくる。 それをフェイゲンとベッカーが演奏するのではなく、フォープレイが演奏していることがまた面白い。スティーリー・ダンの音とは全然違うからだ。 「Snowbound~♪」というコーラスがAメロ部分でリフレインする。そこにラリー・カールトンのギターやボブ・ジェイムスのエレピが被る。クリスマスソングとは違うかも、と思う部分はあるが、「Snowbound~♪」のコーラスでクリスマス・モードに引き戻される。クリスマスソングなのだが、らしくない不思議な感覚が何ともいえない。 ボブ・ジェイムスの弾くエレクトリック・ピアノは、フェンダー・ローズピアノではなく、ローズの音を模したヤマハのデジタルシンセサイザー『モチーフ』だと想像できる。ローズにはない独特のデジタル感があるからだ。どちらかといえば、この手のバンドにはローズよりもこちらの音の方がマッチするのかもしれない。
推薦曲:「CHRISTMAS SONG」
クリスマスソングといえば、やはりボーカルトラックを聴きたくなる。スタンダード曲を独自の歌いまわしでボーカルをとるのはエリック・ベネイだ。 エリック・ベネイは1966年生まれの米国のシンガーで、柔らかく甘いヴェルベットボイスで知られている。ジャズやゴスペルを消化したスタイルには独特の温度感がある。スムースな曲を歌わせたら、このバンドとの親和性はピカ一だ。 ボブ・ジェイムスのタメの効いたエレクトリック・ピアノのソロは秀逸。それを受けたラリー・カールトンのギターソロにエリック・ベネイのスキャットが被る部分が、このトラックの白眉かもしれない。その後、スキャットはシンセサイザーのパッド音となりギターのバックに回る。フォープレイらしいアレンジだ。 アウトロ部分でベネイがメロディーをフェイクしたところで、ボブ・ジェイムスのエレクトリック・ピアノのアウトした(意図的に外した)音のフィルが入るところも洒落ている。
■ 推薦アルバム:ジミー・スミス『クリスマス・クッキン′』(1964年)

1964年、ジミー・スミスがヴァーブからリリースしたクリスマスアルバムの傑作。 プロデューサーは御大、クリード・テイラーだ。このアルバムはビッグバンドとジミー・スミスが弾くハモンドオルガンを融合するという、当時としては画期的な発想で制作された。クリード・テイラーのプロデューサーとしての慧眼が冴えわたる1枚。 ジミー・スミスはこのアルバムで、後のヒットアルバム『THE CAT』の方向性を見極めたのではないかと私は踏んでいる。クリスマスソングとハモンドオルガンとの親和性は高く、ある時はムーディーに、ある時はゴージャスに音楽を演出する。
推薦曲:「サンタが街にやってくる」
ジミー・スミスの弾くワン・アンド・オンリーなハモンドが聴ける。そのハモンドオルガンに寄り添うのはケニー・バレルのギターだ。 ジャズの巨匠2人によるアンサンブルは、ある時はメロディーをハモり、ある時はバッキングに回るなど、変幻自在なアプローチでこの楽曲をブルージーで楽しいクリスマスソングに仕立て上げている。 ジミー・スミスのソロはブルースの王道をベースにし、手癖ともいえる早弾きを多用。まさにハモンドオルガンの手本ともいえる演奏を聴かせてくれる。 音的には非常にドライな音で、レスリースピーカーを使っている形跡がない。リバーブも最小限に抑えられている。 通常はロングトーンでレスリーを回したり、ビブラートをかけたくなるところだが、ビブラートやコーラスも使っていない。 それをせずに意識的にドライな音に徹しているのは、クリード・テイラーからの指示なのだろうか? それでもフラットな演奏に聴こえないのは、ジミー・スミスの持つ独自のリズム感覚によるものなのだろう。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- アーティスト:ボブ・ジェームス、ネイザン・イースト、ラリー・カールトン、ハービー・メイソン、ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー、ジミー・スミス、ケニー・バレル など
- アルバム:『SNOWBOUND』『クリスマス・クッキン′』
- 推薦曲:「SNOWBOUND」、「THE CHRISTMAS SONG」、「サンタが街にやってくる」
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