
2021年、モジュラーシンセを中心としたシンセの祭典「SUPERBOOTH(スーパーブース)」でお披露目された気鋭のシンセブランド「PWM」。そんな最新ブランドから2024年に発売されたシンセサイザー「Mantis」と「Malevolent」を実際に使ってみたので、レビューを交えて製品の魅力をご紹介していきます。
PWM / Mantis
Mantis(マンティス)は、伝説的デザイナー・故Chris Huggett(Gnat、WASP、OSCar)とPWMのPaul Whittingtonとのコラボレーションから生まれた、ユニークなデュオフォニック・ハイブリッド・アナログ・シンセサイザーです。
アナログ音源とデジタル制御を組み合わせたハイブリッド設計は、アナログシンセ特有の温かみあるサウンドとデジタルシンセの精度を巧みに融合させており、豊かで多彩な音色生み出すことができます。
複数のオシレーターを搭載し、波形の選択肢も豊富なため、自由な音作りを楽しむことができました。特に、モジュレーションの自由度が高く、LFOやエンベロープを駆使して音に動きを加えることで、自分だけのオリジナルな音色を簡単に構築することが可能です。

また、Mantisのインターフェースは直感的で、視覚的にもわかりやすい設計になっています。パラメータの調整がしやすく、セッティングを素早く変更できるだけでなく、100種類のプリセットと、追加で100種類のユーザープリセットを設定可能なため、ライブパフォーマンスにもおすすめです。
使用してみて個人的にも魅力的だった点は、下記の3点です。
- アナログシンセ初心者でもすぐに使える豊富なプリセット
- パラメータを弄らずとも即戦力になる優れた音ばかりで、パラメータを操作すると、他では再現し難い音色変化が楽しめました。
- 飛び道具としても使い勝手のよいフィルターを搭載
- 通常のローパス、ハイパス、バンドパス以外に、独特な変調で予想外の反応を示してくれるモードがあり、飛び道具としても大変使い勝手が良かったです。
- 自由な発想を駆り立てるデュオフォニックモードを搭載
- 2機ずつのオシレーターとサブオシレーターをそれぞれ利用できるデュオフォニックモードは、ほぼポリフォニックな音にも聞こえるほど鮮明に分かれているだけでなく、それぞれパラメータを個別に設定も可能。簡易的にレイヤーにもでき、発想を駆り立ててくれる機能でした。
PWM / Malevolent
続いてMalevolent(マレヴォレント)についてご紹介していきます。ピュアなアナログ・セミモジュラー・シンセサイザーであり、刺激的なサレンキー型フィルターとマッドなレトロ・サウンドを軸に、モダンで多彩なコントロールを備えます。
名前のとおり、アナログシンセとしての独自の特性を発揮します。アナログの温かみと確かな音質が持ち味で、特にダンスミュージックやエレクトロニカに最適なサウンドを提供。しっかりとした存在感がある音で、サブベースからパッドまで多彩な音色を生み出すことができます。
Malevolentのインターフェースはシンプルで直感的なため、初心者でも扱いやすい設計です。必要十分な数のノブと各種スイッチで効果的に音色を調整できるため、素早くサウンドを作成したい方には特に向いています。もちろん、モジュラーシンセなので複雑な音作りをしたい場合も、配線次第で理想を追い求める音作りが可能。このシンプルなUIが、かえって音楽制作に集中できる環境を生み出してくれるように感じます。
オシレーターは2機。それぞれサイン、三角、パルスの3種を個別または同時に鳴らせ、波形形状の変更も可能です。また、フィルター箇所は、独立した入力で異なるフィルター状態を提供する、オプトFETコントロールの2ポール・サレンキー・フィルターとなっています。このフィルターは、入力されるオシレーターのレベルと相互作用するように設計。一般的なアナログシンセよりも幅広いレゾナンスをもたらします。設定によって対照的なフィルター動作が可能になり、サブハーモニック・ロッキング、自己発振、更に単一ソースから複数ステート入力を使用する場合の位相調整ができました。
個人的にモジュラー関連は、どちらかと言うと初心者に近く、パッチはパラメータを見ないと配線が分からないですが、Malevolentは説明書にインプット/アウトプットが色分け記載されているため、初めて購入する一台にも最適だと感じました。
他にも、MantisとMalevolentは、サイドパネルの取り外しも可能。自作パネルの使用や塗装をしたい方にもおすすめです!音色だけでなく見た目のスタイリッシュさにもこだわる、ヨーロッパらしいシンセサイザーではないでしょうか!
両モデルとも、独自のニーズに応えるシンセであり、各々のスタイルに非常に合わせやすく、音楽制作の可能性を広げる素晴らしいツールです。音楽制作の際には、ぜひこれらのシンセサイザーをお試しください。