NEUMANN ( ノイマン ) / TLM103 コンデンサーマイク
NEUMANNと言えば説明不要のマイクブランドであり、U 87 Aiコンデンサーマイクは音楽制作関係者のみならず一般リスナーでさえ見たことがある定番マイクです。U 87 Aiはその圧倒的知名度によってNEUMANNの代名詞となっていますが、NEUMANNには他にも多くの素晴らしいマイクがあります。
なかでも「現代版U 87」というコピーを持つコンデンサーマイクがTLM 103。価格もU 87 Aiの1/3程度に抑えられていて、U 87 Aiより手に入れやすいマイクです。一緒に使う機会がありましたので、レビューしてみます。

<TLM 103(手前)とU 87 Ai(奥)>
2022年8月現在、TLM 103を購入するとNEUMANNデザイン傘が付属するキャンペーンを実施しています。数量限定となっていますので、ご希望の方はお早めにご購入ください。



<数量限定のキャンペーンを実施中>
コンパクトながらもずっしりと存在感のあるマイク本体

<憧れすらあるNEUMANN木箱に入っている>
パッケージが届くとずっしりとした重さに驚きます。その理由は、低価格ながらも上位機種同様の「NEUMANN木箱」に収められているため。実は下位機種で自宅録音に使いやすいTLM 102というマイクがあるのですが、TLM 102では木箱がつきません。NEUMANNにとってもTLM 102とTLM 103の間にはある種のボーダーラインがあるのでしょう。

<手に持つと小ささと質感の高さがよくわかる>
木箱を開けてマイクを手に取ると、その質感の高さと重さに再び驚きがあります。長さはU 87 Ai 200mmに対しTLM 103は132mmとかなりコンパクトなのですが、重さは50gしか差がありません。中身が詰まっている印象を受けます。

<EA 1サスペンションは別売だがぜひ揃えておきたい>
購入すると簡易マイクホルダーしか付属しませんので、注意が必要です。また、サスペンションはU 87 Ai用のEA 87と異なりますので流用できません。EA 1というサスペンションで、TLM 103 Studio Setという製品の場合はTLM 103とEA 1サスペンションがセットになっているようです。
※注意
TLM 103 Studio Setは2022年のNEUMANNデザイン傘付きキャンペーンの対象外です。キャンペーンに参加したい場合はTLM 103本体とEA 1サスペンションを別々にお買い求めください。
現代の制作シーンにマッチしたNEUMANNサウンド
機会があったのでギターを録音してみました。

<アコースティックギターの録音に使ってみた>

<短いので横向きに設置しても問題ない>
使ってみると、コンパクトなのでマイキングの自由度がU 87 Aiよりも高い印象を受けます。TLM 103は全長が短いため設置自由度が高く、また、横向きでもサスペンションが耐えられるので、様々な位置への設置ができそうです。

<TLM 103のカプセルは専用のK 103カプセル>
音を聞いてみると、U 87 Aiとは異なるマイクの音です。U 87 Aiとは異なるマイクカプセルが使用されているため当然ではあるのですが、それは安価なチューニングがされているということではないようです。ギターよりもボーカルやナレーションを録音してみると、いわゆる「NEUMANNの音」を、特に中低域からしっかりと感じることができました。
面白いのは、録ったままで良い音だと感じやすいのはTLM 103だということです。特にエンジニア側ではなく、一般のスタジオスタッフなど、リスナーに近い方は良い音だと感じやすいようで、その理由として考えられるのはTLM 103の周波数特性です。
U 87 Aiは高域のブーストがピーキングEQ的であるのに対し、TLM 103はシェルビングEQ的なブーストになっていて、また、低い帯域から持ち上げられているのです。様々な人がマイクを使うようになった現代にあわせて、「録ったままでもいい音に聞こえる」チューニングが施されていると感じました。

<周波数特性もかなり異なっているのがわかる>
また、U 87 Aiと異なりトランスレス回路を採用しているため、特に大音量時でも低音域の歪み感が少なくクリアな音であるように感じられます。
低ノイズ・高耐入力で誰でも使いやすい
ノイズが少なく耐音圧が高いという特徴もあり、等価ノイズはレベルわずか7dB-Aに抑えられているとのこと。これはU 87 Aiの12dB-Aよりも優れた数値です。高い感度と耐音圧も相まって87dBという高いS/N比を実現しており、音に対してノイズが少ない出力音が得られます。感度も良いのでゲインをあげなくて済むのですが、ゲインを上げた場合でもノイズが少ないのでミキシングにおいては大きなアドバンテージが得られるでしょう。
トランス有りのU 87 Aiに対しケーブル引き回し可能距離が短くなります。しかし自宅や小規模スタジオでの使用なら、問題になることは少ないでしょう。

<マイクプリのゲインを上げてもノイズは極小である>
大音量に耐え、ノイズが少なく、録音後に加工せずとも高域が綺麗に聞こえる。
自宅などの固定された環境で録音するものがある程度同じという方の中で、NEUMANNクオリティを体験してみたい人にはピッタリのマイクだと言えそうです。
また、余談ですが、TLM 103を使ってみるとTLM 102という下位機種の役割も見えてきました。TLM 102はさらに狭いターゲットに絞ったマイクで、自宅でのボーカルやトーク収録に特化したマイク、しかもエンジニアではない人が使うことを想定したマイクだということがTLM 103を理解したことで見えてきました。

<TLM 102はさらにコンパクトなマイクでターゲットが絞られている>
突き詰めればやはりU 87 Aiの方が音の質感などがひとまわり緻密であり、高級感があることは否めません。しかしながら、価格差を考えるとTLM 103は相当にコストパフォーマンスが良いマイクだといえます。U 87 Aiのステレオペアはなかなか揃えられませんが、TLM 103のステレオペアならなんとか手が届きそうです。実際にTLM 103でのアコースティックギターステレオ録音がかなり良かったので、お財布と相談しているところです。
自宅でボーカルやナレーションを録るだけならTLM 102、さらなる汎用性とクオリティを求める場合はTLM 103、予算があってマイクを使いこなせるのであればU 87 Ai。いずれにせよ、U 87 Aiは高くて遠慮していた人にとっては最高の選択肢になりうるマイクだと感じました。U 87 Aiをボーカリストに勧めるのはやや気がひけるのですが、TLM 103なら全面的にお勧めできそうです。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら