NEUMANN U 87 Aiと言えば誰でも一度は見たことがある定番コンデンサーマイク。レコーディングスタジオに常備され、著名アーティストのMVでも見ることができます。筆者も以前から幾度となく使ってきました。駆け出しの頃は「落としたら今月の給料がなくなる」と言われて育った、付き合いの長いマイクです。
■ NEUMANN ( ノイマン ) / U87Ai RED
U 87 Aiは艶のない鉄の質感がプロっぽい、これぞ業務用というルックスが特徴ですが、なんと赤いU 87 Aiがあるとのこと。その名もU 87 Ai RED。中国で限定販売されたモデルがサウンドハウスで数量限定発売となっています。U 87 Ai REDならではの用途を追いかけてみました。
「映える」87。非日常空間に馴染む赤と金のインパクト。
まずは自宅でのボーカルレコーディングに使ってみました。
<自宅で使ってみたら見事に浮きました>
カッコよく見えるように煽って撮影してみたのですが、やはり浮いてしまいますね。自宅で録音に使用するだけでしたら、U 87 Ai / U 87 Ai REDの好きな方を選べば良さそうです。
ご覧の通りとおりインパクトは強いです。サスペンションをはじめとした金色は音響機器の中で光り輝き、目に痛いほどの赤色とのギャップがさらに目をひきます。通常のU 87 AiではNEUMANNロゴが目立つものですが、U 87 Ai REDでは全く目立っていないのがおわかりいただけると思います。
この強烈なルックス。音だけを考えると必要性が出てこないのですが、撮影となると途端に説得力が出てきます。撮影が同時に進行する録音現場で使用しましたので、写真をご覧ください。
<岡本太郎記念館で使うと違和感がない>
筆者がレコーディングを担当するジャズレーベルDays of Delightの録音風景です。岡本太郎記念館のアトリエでのレコーディングなのですが、U 87 Ai REDが目立つどころかむしろ馴染んでしまうのです。
<芸術品に馴染むU 87 Ai RED>
いかがでしょう。芸術品のようにも見えてきます。これが「映える」ということではないでしょうか。
反対側からもご覧ください。
<非日常空間では違和感がない>
非日常的な空間にはマッチングが良いようで、自宅での写真とは全く違う印象になるのがおわかりいただけると思います。視覚的な芸術色を強めたい場合に強い印象を与えることができるでしょう。アルバムのジャケット撮影などに使えそうです。
目をひく外観がMV撮影にベストマッチ。
教会でのピアノ弾き語りライブ撮影がありましたので、使ってみました。
<照明のある環境にも映える>
この教会はステージと照明が完備されており、ライブを行うことができます。照明がある場合も自宅での使用に比べ馴染んでいます。周囲の主張が強い環境においては比較的自然に見え、程よくマイクが主張してくれます。
スタジオなど無機質な環境では主張が強すぎて違和感がありますが、ライブ環境では思いの外馴染んでくれるのでMV撮影には唯一無二の選択肢となりそうです。もちろん赤と金なので周囲の色とのマッチングは考慮する必要があります(苦笑)。
参考までに、オフマイク・ステレオ設置のU 87 Aiに混ぜて設置した写真もありますのでご覧ください。
<普通の用途には必要性を感じない>
この強烈なルックスはMVの中だけでなく、サムネイルとして使用しても目をひくものになるでしょう。マイクが目立って欲しい場面シチュエーションではこれ以上ない選択肢と言えるのではないでしょうか。
U 87 Aiがもう1本収納できるケースとサスペンションが付属。
U 87 Aiを購入する場合に注意しなければならないのは、サスペンションが別売りであることです。サスペンションは別途購入するか、購入時にStudio Setバージョンを購入する必要があります。
U 87 Ai REDはセットでの販売のみとなっていますので、サスペンションが付属します。サスペンションは通常のU 87 Aiと同じ規格です。サスペンションだけでも高額ですので、嬉しい付属品ですね。
加えて、専用のハードケースが付属します。
<移動・運搬に便利なハードケースが付属>
MV撮影やライブ収録となると出張での現場になりますから、ハードケースも嬉しい付属品です。通常のU 87 Aiにも木箱が付属しますが、運搬には不安が残りますし、サスペンションが収納できません。U 87 Ai REDに付属するハードケースは本体だけでなくサスペンションも収納できます。
<サスペンションと一緒に収納・運搬できる>
さらには、緩衝材を組み替えることでU 87 Aiをもう一本収納できます。
<もう1本U87Aiを収納可能>
現場に持ち出す人にとってはこのケースだけでも価値がありそうです。
定番にふさわしい、一線を画す音質は健在。
前述の通りとおり音質についてはU 87 Aiとの差はありません。
改めてU 87 Aiの音質をまとめてみると、特筆すべきは音の粒の細かさ、なめらかさでしょう。低価格帯マイクの音質向上は著しいものがありますが、U 87 Aiは別格と言えます。
編集に耐える音質も特徴のひとつです。ボーカルなどソロパートにおいてはピッチ、タイミングなどの編集をするケースが多くなっていますが、編集を経ても音質の劣化が少ないマイクがU 87 Aiです。
低価格〜中価格帯のマイクを持っているもののステップアップを図りたいという方はぜひU 87 Aiを、U 87 Ai REDを使ってみてください。
届いた時はその見た目に圧倒されたU 87 Ai REDですが、使っているうちに愛着が湧いてくるもので、3日もすると慣れてきて通常のU 87 Aiが寂しく感じてしまいます。赤と金というルックスから好みはあるでしょうが、このカラーリングとインパクトに魅力を感じる方にとっては他にない選択肢となるでしょう。また、撮影が行われるスタジオのオーナーさんはこのマイクひとつで集客にもなるのではないでしょうか。U 87 Ai REDを使って撮影されたMVを見る日が楽しみです。
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