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ダイナミックマイクにファンタム電源がかかっても大丈夫か?

2022-08-08

テーマ:実録 ! サービスマン日記, Tips&お役立ち

CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / AM03 配信向けUSBコンパクトミキサー

配信向けのコンパクトミキサーですが、『ダイナミックマイクを挿しても大丈夫でしょうか?』と、ご質問をいただくことがあります。
今回の記事で、フォーカスしていきたいと思います。

数あるミキサーの中には、ファンタム電源のON/OFFの切り替えができない製品もあります。いわゆるファンタム用のスイッチがついていないものです。
CLASSICPRO「AM03」もその一つです。
(ちなみに、本機のファンタム電圧は「+18V」の仕様となっています。)
「AM03」はファンタム用スイッチがついていないため、XLR端子には常時ファンタム電圧がかかっている状態となります。
では、その状態でダイナミックマイクを繋ぐと・・・。

答えを知る前に、まずはファンタム電源がとはどういうものかをおさらいしておきましょう。

ファンタム電源とは、コンデンサーマイクに必要な電源供給を行う仕組み・装置のことを指します。

↑上記はARTのファンタム電源

ミキサー等の機材・装置から、XLR端子(マイク入力)の2番/3番に「+48V」の電圧をかけることで、コンデンサーマイクを駆動させることができます。

あくまで+48Vが基準ですが、+24V、+15V等の低い電圧をかけるタイプのミキサーや電源装置も存在します。

コンデンサーマイクでは、電源供給(DC電圧)がないと音声信号を得られないという特徴があるため、上記のようなファンタム電源という仕組みが存在しています。
コンデンサーマイクの音の出る仕組みは、以下URLも参考ください。

サウンドハウス虎の巻 / コンデンサーマイクとは/音の出る仕組みについて

それでは本題へ戻ります。
ダイナミックマイクにファンタム電源をかけると、どうなるでしょうか?

まずXLRの2番/3番に全く同じ電圧がかかるため、ボイスコイルの両端が繋がっている端子(つまり2番/3番)には、(ほぼ)電流が流れません。
単純に「バランス式」のダイナミックマイクであれば、挿しても壊れたりはしません。

さらに、ダイナミックマイクと一言にいっても、いくつか内部構造に違いがあります。
最も有名なダイナミックマイクはSHURE「SM58」ではないでしょうか。
「SM58」の構造を見てみます。

画像の赤く囲った部分は、小型のトランスです。

このようなトランスを挟んで、ボイスコイル(マイクカプセルASSY)へ配線されています。
つまり。
ファンタムの電圧がXLR端子にかかったとしてもトランス片側に電圧はかかりますが、
ボイスコイル側には何ら影響はありません。

これと同じように、XLR端子~ボイスコイル間に直流カットのコンデンサを配置しているダイナミックマイクも存在しています。※どちらかというと安価の中華製マイクに見られるようです。

以上から、トランス/コンデンサを挟んでいるダイナミックマイクでは、ボイスコイルが危険にさらされることはほぼないと言えます。

それでは、「ダイナミックマイクにファンタム電源を繋いではダメ」という、妄信が広まっているのはなぜでしょうか。

それには2つほど理由があると考えられます。
1つ目は、本当に繋ぐとダメなマイクが存在しているからです。
「バランス式」という言葉を使用してきましたが、XLR端子を装備しながら、じつは内部的に「アンバランス式」になっているマイクが一部存在しているためです。
カラオケ用マイク等で見られるものですが、XLR端子の1番と3番がショートしている(つまり繋がった状態)ものがあります。
この場合、2番/3番間には電位差が生じてしまうため、電流が流れてしまいます。
マイクのボイスコイルのみならず、ミキサー等の供給側の機材も傷めてしまう可能性があるため「バランス式のダイナミックマイク以外は接続しない」が一番です。

2つ目はPAの常識として、「ファンタム電源をONにした状態でケーブルやマイクの挿抜をしてはいけない」からです。
でも、これって実はマイクが壊れるからではないのです。
一番はミキサーから繋がっている出力スピーカーを壊さないためです。
老舗マイクメーカー、SHUREのサイトでは以下のような回答をしています。


Question
マイクロホンにダメージを与えずに、ファンタム電源を入り切りする適切な方法はありますか?
ファンタム供給をオンにした状態で、マイクを抜き差しすることは可能ですか?
マイクを接続してからファンタム電源をオンするべきでしょうか?

Answer
初めに、マイクロホンがローインピーダンスかつ、業務用マイクのようにバランス出力であると仮定します。この場合には、どのように動作させようともマイクロホンが損傷することはありません。マイクを接続する前に、ファンタム電源をオフする必要はありません。
しかし、ミキサーの電源が入っている状態でマイクを抜き差しする場合は、ラウドスピーカーを損傷させる可能性があります。マイクを抜き差しする際、大きなポップ音が発生します。マイクロホンを抜き差しする前に、ミキサーのマスターフェーダーを下げてください。これによりスピーカーの損傷を防ぐことが可能となります。

出典:SHURE FAQサイト


というように、ファンタム電源とダイナミックマイクの関係性はご理解いただけたでしょうか。
基本的にほとんどのダイナミックマイクはバランス式ですので、特に気にせずお使いいただけると思いますが、少し不安な場合はテスターなどでマイクのXLR端子の1番と2番/3番が導通していないかを確認されてもよいかと思います。

それでは、この記事がお役に立てればと思います。

技術サポート / 堀江 司

社会人経験を経て、ESPギタークラフトアカデミー卒業後、楽器音響業界へ。音響機器修理エンジニア就いて10年。PA音響機器の修理を中心に数多く携わってきました。年々修理分野の幅を広げ、現場で培ってきた知識・経験・技術を土台に、時代とともに変化する新しい技術や製品へ対応すべく歩み続けています。主にJBL、QSC、BEHRINGER、SUMMITAUDIOを中心とした音響機器の修理に従事。電源機器の修理サポートも行っています。第2種電気工事士資格保有。

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