今回は、ナットの交換についてご紹介します。
お客様から寄せられた相談は、過去に太いゲージの弦を張っていたベースに、ゲージの細い弦を張るにあたり同時にナットも代えたいという内容。
実際にチェックしてみると、このベースは過去にもナットを交換したことがあると思われ、純正ではないナットが取り付けられていて、確かに弦溝が太めのゲージの弦に合わせ広げられている状況でした。
まずはナットを外します。
外す時は1フレット側から当て木をして、ハンマーで軽く叩きナットを固定している瞬間接着剤を外します。
ハンマーの叩く力が強すぎるとナットのヘッド側にある木材を痛めてしまう場合があるので、少しずつ様子を見ながら叩いてください。
ナットが外れると、こんな感じにナット下の木部あらわになります。
写真のナット溝を見ると光を反射している箇所が見受けられますが、これがナットを接着していた瞬間接着剤の残りです。
この瞬間接着剤が残っていると新しいナットを取り付ける際に邪魔な段差となり、ナットと木材が密着しなくなることがあります。
ナット溝に残った瞬間接着剤の除去は、ホームセンター等でも販売されている、比較的に手に入りやすいデザインナイフや鉄ヤスリでも行うことができます。
また、写真で使用しているような使いやすい工具も売っているので、自分に合う作業のしやすい工具を見つけてみるのも楽しみの一つだと思います。
HOSCO (ホスコ) / TL-MC22 マイクロチゼル 2.2mm
ナット溝の掃除を終えたら、新しく取り付けるナットを用意します。
今回はこちら
GRAPHTECH (グラフテック) / PQL-1214-00
ギター、ベースのナットやブリッジサドルなどのパーツで有名なGRAPHTECHのナットです。
TUSQ(人口象牙)ナットは加工しやすく、今回のPQL-1214-00のように最初から弦溝が加工されているものが多くあります。弦溝があるタイプは、初めてナットを代えたいという方にもおすすめです。
弦溝があるタイプで、交換予定の楽器に合うナットを選ぶ際のポイントはこちら。
1.ナットの弦溝間隔を確認しましょう。
元々楽器に搭載されていた弦溝の間隔、ギターであればE to E(6-1弦間)、ベースであればE to G(4-1弦間)が最も近いモデルを探します。
2.元々搭載されていたナットよりも、少し大きいサイズを選ぶ
弦溝の間隔である程度ナットの種類を絞った後、その中から元々搭載されているナットよりも大きいものを選んでください。ナットの形成、サイズ調整は、ナット自体を削ること、つまりサイズを小さくすることでしかできません。元々のナットより小さいものを選んでしまっては、楽器に合わせた調整ができなくなってしまいます。ナット交換は楽器に合わせた材の加工が必須です。
3.ナット底面の仕様を確認する
ナット底面の仕様には大きく分けて、平らな仕様のフラットタイプと、カーブ(R)がついたカーブドタイプの2種類があります。このベースのナットは、底面にカーブ(R)のついた仕様です。ナットの底面およびナットを取り付ける部分(ナットスロット)がフラット/カーブどちらの仕様になっているかの確認も合わせて行いながら、交換用ナットを選定しましょう。
3つの項目を確認し、選んだ交換ナットを楽器に合わせ、幅、高さ、弦溝の高さを微調整しながら取り付け、交換は完了です。
ナット交換のついでに、以前外した際に入ってしまったであろう塗装のクラックもリカバリーし、見た目も美しく作業完了です。
ナットの交換作業自体は、基本的に以上の流れで行うことができますが、元々取り付けられていたナットの状態や、ギターの塗装の種類や状態によっても作業工程は変わります。楽器の状態や仕様をよく観察しながら交換してみてください。