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【PAの本音】「ワンツー」「シーシー」って何言ってるの?マイクテストの謎と、一番助かる声出し

2026-08-20

テーマ:PA, ドラム・パーカッション

こんにちは!サウンドハウスのPA担当、そしてプライベートではドラムを叩いている杉本です。

8月に入り、夏フェスや野外イベントの本番ラッシュがやってきました。ところで、ライブハウスやイベント会場の転換中、PAスタッフがステージ上や客席後方のPA席で、マイクに向かって「ワンツー、ワンツー……」「シー、シー……」と繰り返しているのを聞いたことはありませんか?

ライブに行き慣れている方にはおなじみの光景ですが、PAの仕事に馴染みがない方からすると、不思議に思うかもしれません。このマイクチェックについてよく言われるのが、「ワンは低音、ツーは高音を確認している」という説です。ただ、あらためてPAやライブサウンドについて調べてみると、この説明はまったくの間違いではないものの、実際のマイクチェックはもう少し複雑なようです。

「ワンは低音、ツーは高音」説は、どこまで本当?

先に結論を言うと、「感覚としては分かるけれど、厳密な決まりではない」というのが一番近そうです。人の声は、ひとつの周波数だけでできているわけではありません。声の高さを決める成分に加えて、母音の響きや子音、息の音など、低い音から高い音までいろいろな成分が混ざっています。実際にPA卓(X32)の画面で波形を見てみても、「ワン」「ツー」「シー」で周波数グラフのピーク位置がはっきりと変わるのが分かります。

「ワン」の発声

「ワン」と発声すると、声の土台になる低音から中音あたりの量感が分かりやすくなります。現場では、声が細すぎないか、反対に低音が膨らみすぎていないか、会場の中でモコモコとこもって聞こえないか、といった部分を確認する材料になります。また、「ワン」と言いながらマイクとの距離を変え、低音の出方(近接効果)を確認するPAもいると思います。

「ツー」「シー」「チェック」の発声

一方、「ツー」の出だしや、「シー」「スー」といった息が擦れるような子音(シビランス成分)には、高い音の成分が含まれています。そのため、言葉の輪郭がきちんと聞こえるか、声が前に出てくるか、高音が耳に刺さらないかなどを確認しやすくなります。

「ワンは低音寄り、ツーやシーは高音寄り」という覚え方は、この違いを分かりやすく表したものだと思います。

ただし、PAが「ワン」と言った瞬間に低音だけを聞き、「ツー」と言った瞬間に高音だけを聞いているわけではありません。いろいろな発音を短く繰り返しながら、低音から高音までのバランスや、声全体の聞こえ方をまとめて確認している、という方が実際の感覚に近いと思います。

PAは「ワンツー」で何を聞いているのか?

PAが「ワンツー」と発声するときは、特定の音域だけでなく、マイクからスピーカーまでのPAシステム全体を確認しています。

  • 音の開通確認: マイクへ入れた声がケーブルやミキサーを通り、狙ったスピーカーから正しく出ているか。左右を間違えていないか、途中でノイズが入ったりしていないかを確認します。
  • 音色のバランス調整: 低音が膨らみすぎていないか、中音が引っ込んで言葉が聞き取りにくくなっていないか、高音が耳に刺さらないか。必要に応じて、ローカットやEQを調整します。
  • ダイナミクスの調整: 少し強めに声を出したときに入力が歪まないか、声の頭が不自然につぶれないか、ハウリングが起こりそうになっていないかを確認します。
  • モニターの返りチェック: ステージ上の演奏者用モニタースピーカー(コロガシ)から声が十分に返っているか、音がこもっていないか、ハウリングしそうになっていないかも大事なチェック項目です。

PAスタッフにとって自分の声は、一番手軽で、一番聞き慣れている確認用の音です。 いつも聞いている自分の声だからこそ、スピーカーから出てきたときの違和感に気づきやすくなります。

なぜ「シー、シー」と言う?人によって言葉が違う理由

PAのマイクテストといえば、「シー、シー」という独特の発声もよく聞きます。

「シー」や「スー」には、サ行特有の、息が擦れるような高い音が含まれています。これを少し強めに発音すると、言葉の輪郭やクリアさが客席まで届いているか、サ行だけが痛い音になっていないかを確認しやすくなります。このサ行の「シーッ」「シャーッ」と聞こえる成分は、音響の世界では「シビランス」と呼ばれます。

海外のPAエンジニアによるコラムを見ても、マイクテストに使う言葉は本当に人それぞれで、定番の「Check, One, Two」はもちろん、「Hey, Hey」「Hello」「Sibilance」と言う人もいれば、歌い始める人、決まったフレーズを喋る人もいます。

PAとして助かる、リハーサルでの声出しのコツ

バンドのサウンドチェックで、ボーカルやドラムコーラスの方がマイクに向かって、小さな声で「あー、あー…」と喋っている方がいます。「あー」という発声自体が悪いわけではありませんが、それだけでは実際の歌に含まれる音域や、曲の中で一番大きな声がどのくらいなのかまでは把握しづらくなります。

また、リハーサルで小さな話し声だったのに、本番になると急に全力で歌われると、PAが作った入力レベルや音質のバランスが変わってしまうことがあります。

リハーサル時の声出しのポイントを、3つご紹介します。

1. 本番で歌う曲の「サビの一節」を歌う

話し声ではなく、実際に歌うときのフォームと声量で、曲の一節を歌ってもらうと助かります。特にサビや高音部分など、その曲の中で一番声を張るところを数秒聞かせてもらえると、「今日の最大音量はこのくらいだな」という目安が分かります。

2. 本番と同じ「マイクワーク」で歌う

静かなところではマイクへ近づき、声を張るところでは少し離すなど、普段からマイクとの距離を変えている方は、その動きも含めて本番に近い状態を見せてもらえると助かります。ドラムコーラスの方も、できれば立ったままではなくドラムスツールに座り、実際の演奏姿勢で歌ってもらった方が、本番に近いコーラス音を作りやすくなります。

3. 「ワンツー」から実際の歌へつなげる

いきなりリハーサルの頭から歌うのが照れくさい場合は、「ワンツー、ワンツー」と声を出してから実際の歌につないでも問題ありません。「ワンツー」で音が出ていることを確認したあと、実際の曲も一節歌ってもらえると、本番の歌声をイメージしながら調整しやすくなります。

まとめ

PAスタッフが何気なく繰り返している「ワンツー」「シーシー」。今回あらためて調べてみると、「ワンは低音、ツーは高音」というよく聞く話にも理由はあるものの、それだけを確認しているわけではないことが分かりました。PAスタッフは、自分の聞き慣れた声を使って、低音や高音だけでなく、マイクからスピーカーまでの音を全体的に確認しています。

次にライブハウスやイベント会場へ行ったときは、ぜひPAスタッフのマイクテストにも耳を傾けてみてください。

ちなみに、実際のマイクチェックがどんな感じなのか気になった方は、こちらの動画もぜひチェックしてみてください。

杉本亘

学生時代はドラムを担当し、ライブやスタジオに明け暮れていました。今でも洋楽やロックを中心に幅広く音楽を聴いており、新しいアーティストやライブ映像を探すのが日課です。スポーツ観戦も好きで、休日は試合を見ながら音楽を流して過ごしていることが多め。いつかはワールドカップを現地観戦するのが夢です。

 
 
 
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