リハーサルスタジオやライブハウスに置いてあるベースアンプの定番といえばAmpegかHARTKEではないでしょうか。
今回はそのHARTKEにおける大定番商品、古くからのロングセラーでもあったHA2500とHA3500(以下HAシリーズ)が販売終了となったことを受けて、改めてその特徴について書いてみようと思いました。
販売終了の告知を本国メーカーより案内された瞬間に、こんな定番商品なくしてメーカーさん、アンタこれからどーすんの!的な思いがやまず、何度も確認を行いましたが、本国メーカーからの答えは変わらずでした。おそらくコロナ禍においてHARTKEもパーツ供給難の波にもまれ、苦渋の決断だったのでしょう。また復活することや、後継機が発売されることを切に願います。
そんなHAシリーズですが、楽器を嗜んでおられる方なら一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
見た目にも特徴的な10バンドのEQ、チューブとソリッドステートのハイブリッドができる仕様、10バンドEQを加えた後にさらにLOW,HIGHのコントロールができ、使い勝手、コストパフォーマンスにおいて他に類を見ないほど優れたヘッドアンプでした。
他のアンプと比べて何が優れてるかと申しますと、やはりどんなジャンルの音楽でもこなしてくれる音作りの幅広さではないでしょうか。
ベースを長く続けていて気付いたのですが、このアンプ1台あればアンプ直でも十分に使えるくらい便利だなーと感じます。
コンプレッサーも付いており、スラップやフレットレスで低音弦だけやたら音がでかいなーって時にもしっかりと引き締めてくれ、とても使い勝手の良いアンプだと思います。
実は筆者が初めて買ったベースアンプもHARTKEでした(A100というコンボアンプ)。みんなが練習するスタジオにあるメーカーだから間違いないでしょ!的なノリで最初は大した違いも分からず買いましたが今でもずっとお世話になっています。
なんでHARTKEはこんなに幅広く使える仕様を思いついたのかなーって考えた時にやっぱりジャコ・パストリアスの存在があったからかなーとか考えてしまいます。
実はHARTKEの代名詞であるアルミキャビネット、HARTKE 410(現行品はHD410)の開発にはジャコが絡んでいたそうです。HARTKE創業者のラリー・ハートキー氏はジャコとの出会いによりプロトタイプのアルミペーパーコーンを開発。ジャコはその音を大層気に入っていたとの逸話が残っています(詳しくは「ジャコ・パストリアス HARTKE」とかでググってみたら出てくるので興味がある方は見てくださいな)。
ジャコの演奏については言わずもがな、当時かなり革新的な音使いを連発していました。
筆者の推測ですが、ラリー・ハートキーはそんな彼の演奏にもついていける、幅広い設定が可能なアンプを目指していたのかもしれません。
話がそれましたが、改めてHAシリーズを弾いてみた感想に加えて、メーカーにHAシリーズ無くなったら何を弾いたらいいの?って聞いたところLXシリーズ(LX5500とLX8500)がおすすめだよと言われたのでそちらを実際に弾いてみた感想も書いてみました。
スペックなどは今回割愛致します (気になった方は商品ページポチって見てください) 。あくまで、筆者個人の主観ですがぜひ参考にしてみてください。
とりあえず4機種をHD410の上にスタックしてみた。かなり壮観。(スタックしてるだけでもちろん配線は別々です!)
これだけでベースがうまくなった気がしました。

HA2500
前途した通り、音作りの幅が半端ないです。逆に言うと自分の音が決まってない人からしたら、どの設定で弾いたらいい音なんだろうと迷う時があるくらいです。
PAさんからベースの音が抜けないから、ここのレベルいじってみてとか言われても速攻で対応ができ、バンド演奏においてもかなり重宝できる存在だと思います。
HA3500
HA2500とほぼ仕様は一緒で、こちらは出力が350Wであることくらいしかスペックに違いがないので比較をした時のお話になります。まず見た目が少し違います。HA3500にはコンプレッサーとイコライザーにLEDがついていてオンの時に光るので視認性が良くなります。
また350Wと出力が大きくなるため、同じ音量に設定した時の音の艶が違います。
圧倒的にHA3500の方が艶のある音(レンジが広い、倍音が豊かな感じの音)をしており、EQをいじった時の音作りの楽しさが倍増します。これがヘッドルームに余裕がある、ってことなんですかね?
↓上がHA2500で下がHA3500、見た目と大きさはほぼ一緒。


もしお金とキャビネットの容量に余裕があるなら断然HA3500をお勧めしますが、使い勝手には違いがほぼなく、スタジオルームなど狭い空間での使用であればHA3500は持てあますかもしれません。そういった場合にはHA2500でも全く問題なく使用できます。
次に本国メーカーいちおし、HARTKEの現フラッグシップモデルであるLXシリーズも弾いてみました。

LX5500
見た目は頑丈そうな筐体をしていますがかなり軽量に作られています(重さ約3.6kg)。筐体に持ち手も作られていて、手軽に持ち運びができるようにという配慮を感じます。
HAシリーズはソリッドとチューブのハイブリットができる仕様でしたが、LXシリーズはチューブプリアンプのみの仕様となっております。
そのため、HAシリーズほどの音作りの幅はありませんが、HAをチューブのみで鳴らした時に比較して、こちらの方が出ている音がファット、低域が気持ちよく聞こえると感じました。(出力が500Wと大きいからかも)
またDRIVEコントロールがついているため、HAシリーズよりも歪ませた音作りが可能となっています。
EQはグラフィックイコライザーではなくパラメトリックイコライザーとなっており、BASSが80Hz帯、TREBLEが6kHz帯、FREQUENCYで200~800Hzの帯域を調整し、SHAPEでそのFREQUENCYの強弱を決めてあげる仕様になっています。
BRITEスイッチを押すと高音域(10kHz)がブーストされ、ジャキジャキのスラップとかベースソロなどでアタック感を際立たせたい時に使えます。
背面にはFX LOOPとTUNER OUTを搭載しているので、別のイコライザーをつないで使用したり、パワーアンプのみで使用したりもできます。
割となんでもこなせる感じで、持ち運びもしやすいのでライブハウスだけでなく、スタジオ、自宅用としても使い勝手がよさそうに感じました。
LX8500
前面の仕様はLX5500と全く同じですが、こちらは出力800Wとなっています。同じ音量でもLX5500と比較して全音域のレンジが広いためか、かなり艶感のある音に聞こえました。古い弦のまま試奏しましたが、LX8500だけは新しい弦に負けないくらいの艶っぽさを感じました。
音だけで言うならHAシリーズ、LXシリーズ全部通して一番好きな音でしたね。
大きさはLX5500より少しだけ奥行が出る分重くなっていますが、持った感じそんなに変わりはなかったです。(約3.85kg)

< 下がLX8500で上がLX5500 >
背面の仕様が少し異なっていて、こちらはFOOT SWITCHが使用可能となっています。
SWITCH はTRS仕様を2系統、それぞれDRIVEとFX、BRITEとFREQUENCYをスイッチでON/OFFが可能になります。HARTKE純正のスイッチはラインナップされていないため、他メーカーのTRS仕様のフットスイッチが必要です。
エフェクトよりもアンプで音作りをされるベーシストで、足元でサウンドバリエーションを作りたい場合にはおすすめの仕様です。

■ 総評
全てを弾き比べて思ったことは、こっちが完全におすすめ!みたいなのはありませんでした。それぞれに良さと特徴があったので自分の用途に合わせて選んでもらえればと思います。
HAシリーズはいろんなベースを持っているオールラウンドタイプの人におすすめで、LXシリーズはシンプルに何かいい音がするアンプが欲しいなーって人にぜひ試してもらいたい音でした。ちなみに僕は後者なのでLX8500が欲しくなりました。
■ おわりに
それでもやっぱりHAシリーズ無くなるの悲しい……。7月MR.BIGのライブ行くけど、ビリーシーン使ってくれないかなー。(校正者注:HAシリーズのグライコを山なりにしたセッティング、真似したっていうベーシストの方も多いんじゃないでしょうか。)
昔のアルバム再現ライブらしいので機材も今のじゃなくて昔のHARTKE使ってくれたら胸アツです。