
~ レスリースピーカーとは ~
ドナルド・レスリーによって1940年代に開発されたスピーカーです。
ホーンローター(高音を鳴らすスピーカー、ツイーターのようなもの)とロワーローター(低音を鳴らすスピーカー、ウーハーのようなもの)と呼ばれる、2種類のスピーカーが可変式のモーターにより、回転することが特徴です。
■ ドップラー効果
救急車のサイレン等で知られる物理効果です。
近づくにつれ音が高くなるように聞こえ、逆に遠ざかることで低くなるように聞こえます。
レスリースピーカーは、スピーカーの回転速度によりこの効果を利用します。

こちらはホーンスピーカーの画像です。
このスピーカーが回転することで音が近づいたり遠ざかったりします。
スピーカーの回転は速度を変更することができます。
回転数が早いほど近づく回数が増え、音が高くなり、遅いほど近づく回数が減り、音が低くなるということが起きます。
これがレスリースピーカーのドップラー効果を利用している原理です。
画像からは確認できませんがロワースピーカーでも同様のことが生じています。

Leslie speaker unit, CC BY-SA 3.0
(Wikipediaより引用)

現在のエレクトリックオルガンは、このレスリースピーカーをモデリングした発音方法が存在するものが多く以前ご紹介したVISCOUNT LEGEND LIVE KeyB、HAMMOND SKX PROについても同様に、レスリースピーカーのように音を鳴らすボタンがあります。
それなのになぜ今さら別でスピーカーを買うのかという疑問が生じるかと思います。
これには大きく2種類の理由があると私は考えています。
1つはギターなどでもプリアンプで録音した音と、アンプで録音した音には体感的に違うものを感じるのと同様に、鍵盤もライン入力した音と、アンプで鳴らした音は違うように感じられる点があります。
2つ目はこれらのスピーカーのリアルな動きや揺らぎは、モデリングで再現していてもしきれない点があることです。
いずれもモデリング機能がどれだけ充実していても迫力や温度感など、体感として実物が勝るように思われます。
サウンドハウスにも取り扱いのあるキーボードアンプとしてBEHRINGERやLANEYがあげられますが、レスリースピーカーも出しているHAMMOND、VISCOUNTもあります。
実際に活用するにあたりこれらのキーボードアンプに比べ、レスリースピーカーにはいくつか異なる点があるのでそちらをご紹介します。
■ ロータリー効果
これまでに記述してきた通り、レスリースピーカーとはスピーカーが回転することで音に変化を与えるスピーカーです。
スピーカーごとにSLOW / FAST / STOPの各速度や、変化するためにかかる時間をツイーター、ウーハーごとに設定することができます。
オルガンとレスリースピーカーを組み合わせる際は、フットスイッチやレスリースイッチというものを利用し、これらのパラメーターの変更などを操作します。
■ キーボードとの接続方式
一般的なキーボードはMIDIやUSB、オーディオケーブルによる接続が基本です。
MIDIやUSBはMIDIキーボードを外部コントローラーとしての接続や、音を同時出力する際の接続方法として使うことが多いかと思います。
また、オーディオケーブル接続はギターなど他の楽器と同様にフォンケーブルやキャノンケーブルによって音声信号を出力するケーブルです。
レスリースピーカーにはこれらの端子がついている機種もありますが、現代でオルガンと接続する際、最も主流なのは11ピンケーブルによる接続方式です。
このケーブルは例えるならば、電源ソケットサイズのMIDIケーブルのようなもので、その名の通り11個のピンがついているケーブルです。
このケーブルは音声信号の他にMIDI信号等の特殊なパラメーターの信号を送ることができ、この出力方法を使うことで音をスピーカーから出力するだけでなくSLOW / FAST / STOPなどのパラメーター変化を連動させることや、ノブなどのスイッチ操作をオルガン本体から操作することができます。

また、過去にはMIDIケーブルさながらの8ピンケーブルや6ピンケーブルなど他にもMIDI接続の方式があるようです。
最近ではHAMMONDより122H、142Hというレスリースピーカーが、HAMMOND B3など、6ピンコネクターしかない古い型の機種にも接続ができるビンテージ復刻モデルというものも発売され、11ピンでは対応できなかった古い機種なども対応できるようになりました。

■ スピーカー配置
キーボードアンプはウーハーとツイーターが1つ以上取り付けられている物が多く、モノラルによる出力が一般的です。
他にも各ユニットが2個以上配置されステレオ出力に対応した機種などもあります。
見た目はギターのコンボアンプなどの様に正面から見ると正方形のような形をしています。

対してレスリースピーカーはツイーターとウーハーが1つずつ搭載されている物が多く、文字だけで見ると通常のスピーカーと大差はないように思えます。
ですが、これらのスピーカーが回転するための空間、あるいは機構を備えるため、大きさや重量が倍以上になるものが主流です。

現在ではHAMMONDの2101mk2やVISCOUNTのSpin Tone 400など、ツイーターのみ回転しウーハーはモデリングスピーカーにすることで、重量やサイズ感を抑えた物も発売されています。