コンパクト・ベースアンプヘッドといえば何が思い浮かびますでしょうか?
最近のソリッドステートアンプには比較的お手軽な価格を実現したモデルも多くあるため、学校の部活動用品としてご購入いただくケースも多く見られる印象です。
私が学生の頃はHartke「HAシリーズ」やAMPEG「PFシリーズ」が部室/スタジオ機材の定番だったように思います。つい最近HA2500/3500が生産終了となってしまい、もの悲しい気持ちです。
近年人気のソリッドステートアンプには、大出力でも安定した信号を得られるというD級タイプを採用しているモデルが多く見られます。Markbass「Little Markシリーズ」もそのひとつ、軽量な筐体からは想像できないほどのパワーとサウンドが高く評価され、今やベースアンプのスタンダードとなりました。
今回、Markbassアンプヘッドの最新モデルである2機種「Little Mark IV」および「Little Mark 58R」を比較&実機レビューしましたので記事にします。
58Rは2023年3月末に発売された新製品で、IVモデルをさらに軽量化したモデルです。出力はいずれも同じ(500W@4Ω / 300W@8Ω)。
デザイン比較
■ 左「Little Mark 58R」右「Little Mark IV」

並べてみると、これぞMarkbassといった佇まい。ベーシストの方なら一度は目にしたことがあるであろう色づかいとなっており、黒地に黄色いプリントが識字しやすい印象です。
一見すると58Rの方が色々増えた..?と思いきや、どれもIVで馴染み深いコントロールや入出力が搭載されていました。58Rでは、IVのリアパネルにあったセンド/リターン端子、LINE OUTなどがフロントにきています。スイッチ類はボタンタイプからレバー型のトグルスイッチに変更されています。つまみの形も違っていて、58Rは「Little Mark Vintage」のようなボコボコした形状。個人的には58Rのつまみの方が操作性が良くて好きです。
■ IVのフロントパネル

■ 58Rのフロントパネル

■ IVのリアパネル

■ 58Rのリアパネル

サイズ感的には上から見てもほぼ同じですが、持ち上げたときの58Rの軽さに驚きました。メーカー公表の重量としては、IV: 約2.45kg / 58R: 約2.0kg。58Rの筐体表面はざらっとした質感で、未来と環境を見据えたエコな素材を採用しつつ軽量化を実現しているとのことです。


サウンド
聴き比べた感想として、IVは音のまとまりがありEQフラットでもローミッドがしっかり出る印象、58Rはベースの原音を損なわないナチュラルな印象を受けました。
58Rは既に生産完了となった「Little Mark III」の特性を引き継いでおり、特にピック弾きにおいてピッキングニュアンスを素直に表現してくれるように思います。
IVは低域の重厚感/安定感はもちろんのこと、耳当たりのよい上品な高域が印象的でした。
2機種ともにアンプのキャラクターを主張しすぎず、アンプ側のEQ調整で自在にサウンドを操ることができると思いました。アンプのセッティング次第で、どちらにも代えがたい魅力を感じます!
IVから新しく設計されたリミッター「BI-BAND Limiter」。従来のリミッターと比較して素早くダイナミックなレスポンスが特徴。ハイエンドがより自然なサウンドを生み出します。大音量で素早くパンチの効いたアタックを楽しみたい方にも対応します。IVは特にアタックがはっきりしており、スラップ奏法においてはメリハリのあるサウンドを実現できると感じます。
搭載されているEQは、このサイズ感にして十分な4バンド仕様(Low/68Hz、Mid-Low/360Hz、Mid-High/800Hz、High/10kHz)。個人的にはLow、Mid-Lowの効きがよく、色々なパターンで遊べると思います!
また今回の2機種を見て、従来のIIIモデルなどには付いていたVLE / VPFコントロールがないことにお気づきの方もいらっしゃるかと思います。これらは、それぞれのつまみで特定の周波数を即席に調整できるというMarkbassオリジナルの仕様です。
代わりに搭載されている「OLD SCHOOL」と「3-way ロータリースイッチ」。今回の2機種においては、これらがVLE / VPFコントロールの役割を担っているとのことです。「OLD SCHOOL」は、高周波数をカットして丸くて滑らかなサウンドを表現できるコントロール。削っていくとトーンを絞ったような、ほどよくモコっとしたビンテージサウンドを再現できます。個人的には特にプレシジョンベースタイプとの相性が良いように感じました。
「3-way ロータリースイッチ」を用いると、いわゆるドンシャリサウンドを即座に作ることができます。IVよりも58Rの方が、ジャリッとした明るいドンシャリを表現できるように感じました。
周波数のバランスがとれた”FLAT”のほか、ドンシャリサウンドを表現できる“Scooped-Mid”、オプションのフットペダルを用いて選択可能となる”FSW”を切り替えられます。下の写真における波形マークが“Scooped-Mid”にあたります。

”FSW”においては、オプションのデュアル・フットスイッチを接続し、ミュートと”Scooped-Mid”を足元で即座に切り替えられるという機能を持ちます。
これらMarkbassオリジナルのコントロールを活用すると、誰でもアンプのキャラクターを最大限に生かしたサウンドを表現することができますが、4バンドEQを調整してプレイヤーの好みに応じた細かな表現にも対応できる汎用性の高いモデルだと思いました。
総括
IV、58Rモデルともに、ポータブルなデザインでありながら抜けが良くパワー感あるサウンドは従来のMarkbassアンプのイメージ通りでした。音作りの幅が広く、誰でも楽しみながら好みのサウンドを探せるアンプだと思います。
さらに58Rでは、つまみやスイッチの形状/コントロールの配置などの変更点から、より即席的な操作がしやすくなったように感じます。プレイヤー目線から改良点を導き、丁寧に考えられて誕生したモデルだと実感しました。
サウンドは、アンプのセッティングによってどちらのモデルにも代えがたい魅力を感じます。普段お使いのベースや奏法によって好みが分かれるかと思いますが、弾けば弾くほどどちらも良い。汎用性が高く調整が効くので、なかなか選ぶのが難しい2モデルではないでしょうか!
2機種ともに、LINE OUTを備えている点も魅力的。宅録はもちろんのこと、ライブの際にD.I.を用意せずにミキサーへ繋ぐことができます。新学期シーズンにおいて、汎用性の高いアンプヘッドをお探しの方にもおすすめしたいです。
関連商品
⇒ MARKBASS ( マークベース ) / Little Mark IV
⇒ MARKBASS ( マークベース ) / Little Mark 58R