前回の前編を読み返しながら「そうそう、こうゆうのもあるんだよね~、まだまだ紹介しきれていない国産の名品が沢山あるよな~」と思いつつ、今回は海外製品を紹介する、、、。
しかも何と西ドイツ製。

何度も言うが、あまりにコンデンサーの世界はディ-プ過ぎてとてもとても数回のブログで書き切れる物じゃない。
その中から特に知ってもらいたい名品のみ紹介していきたいと思う。
さて、ベルリンの壁が崩壊したのが1989年11月、この時を持ってあらゆる生産品からMADE IN W.Germanyの表記は消え去った。
1961年から28年続いた高度経済成長とリンクして西ドイツには沢山の素晴らしい工業製品や電子部品が誕生した。
どのぐらい素晴らしいかというと、今時どんな田舎道でもポルシェやベンツ、BMWやワーゲンなどは頻繁に見かける。それだけでも良い製品を作っている国なのだと分かる。高性能で信頼度の高いこれらの車はみな西ドイツで生まれたのだ。
一言でいうと西ドイツの物造りは日本に似た部分があり、キッチリ作って無駄がない。
しかも高性能である。目指した性能を達成した時点で無駄な余裕を付け足すことはない。
これがUSAになると必要以上のオーバースペックで無駄だらけ(その分の恩恵が余裕のある音質や耐久性につながっているのだが)。
まずは見ていただこう。
私がドロ沼にはまるきっかけになったのがこのコンデンサーだ。
■ ERO FOLⅡ

初めてこのコンデンサーを見た時なんてかっこいいコンデンサーなんだろうかと思った。
なんか、こう、全身で「俺を使ってみな!最高の音になるぜ!!」と言っている気がした。
余りの見た目の良さに惚れ惚れしてしばらくコンデンサーをつまんだまま店先でぼーっとたたずんでいた。
今思えばただのアブないヤツだ(似たようなヤツは時々秋葉原で見かける)。
ビンテージと言う言葉がこれほど似合うコンデンサーも珍しい。
見た目に「ビンテージ!!」という雰囲気をまとい、ただ古いだけではなく現行品と遜色ない性能と信頼性を持っているため、どこぞのコンデンサーみたいに「高圧部分には使えない」だの「アンプには使用できません」だの不良品前提で販売しているものとは大違いで、立派にリプレンスメントパーツとして販売されていた。
このシリーズはKT-1800という品番になり何回か色合いが変わったりしたが音質に関しては全く変わっていない。

一言でいうと「ノスタルジックなローファイサウンド」だ。
ローファイだから音質はダメな訳ではなく、このコンデンサーならではの味がある。
しっとり落ち着いた音の随所にちらりちらりと鮮やかな色艶が見え隠れするのだが全く出しゃばる事がない。
まるで田舎の田園風景を影絵で見せられているようなノスタルジックな雰囲気がある。
ディストーションのハイカットに使ってみたが、同じ数値なのにも拘わらずセラミックコンデンサーで決定した部分をこのコンデンサーに差し替えてみたら音が激変した。
■ ERO MKT-1813

現在EROのアキシャルリード(チューブラ)コンデンサーで最も生産数が多いと思われる。
ボディカラーは年代順にシャンパンゴールド→シースルーグリーン→イエローと変化している。
いわゆる汎用コンデンサーだが静電容量と耐圧の生産幅が広いためスピーカーネットワークからあらゆる機器のカップリングに使用されている。
音質は「明るい、素直、見た目が良くて正直」と、まるで婚活女子のプロフィールのようだ。
それゆえあらゆる機器に使用され結果を出しているのだろう。
つまりこれを使えば「間違いない」のだ。
しかしFender HOTROD DeluxeのカップリングコンデンサーをすべてこのMKT-1813(イエロー)に交換したものを鳴らしたことがあるがそのアンプは私的に大変つまらない音であった。
Fender 特有の深みが有って艶っぽい粘りが全部消え去って、単純明快ストレートなまるでトランジスターアンプのような反応の良い音になっていた。
これが良い事なのか悪い事なのかは実際に使用する人が判断すべき事だが、私が思ったことは「これじゃ別にFender じゃなくても良くね?」だった。
但し、ノイズは極小、本当に無駄な音が無くなって研ぎ澄まされた芯のある音だったのだが多少ふくよかで丸みのある音が私は好きなので残念と思った次第。
■ ERO KC-1853

正にHi-Fi機器のために作られたようなコンデンサーだ。その鮮やかな高音、スパっと切れの良い後味(ビールじゃないぞ)。
再生音の倍音さえこのコンデンサーの恩恵を受けて綺麗な透明感を醸し出す。
誘電体にポリカーボネイトを使用した無誘導タイプの傑作コンデンサーだ。
プリアンプのトーン回路やギターのハイパス回路など音像の彫りを深く鮮やかな余韻が欲しい場合によく使用している。
私的にかなり信頼度の高いコンデンサーだが残念ながら入手が少し難しくあまり種類が見つからない。
■ ERO KP-1834

ポリスチロールコンデンサー(国内で言うところのスチコン)。
誘導タイプなので高周波特性は無誘導タイプに一歩譲るが人間どころか犬の耳でもその違いは判断できまい。
意外と高耐圧タイプも出回っているようでフィルター補正やハイパス(特に真空管アンプ)に大変重宝する。
元々国産のスチコンは好きでノーブルやFujiコンや秋葉原で入手できる銅箔スチコンなどよく使用したがこのKP-1834を入手してから他のスチコンは使わなくなった。
基板に実装する際の国産スチコンの足の弱々しさにかなりの不安感があったし熱に弱い事もマイナス要因であったがこのKP-1834は内部電極から平べったい板状のリード線が出ていて大変安心感がある。
また薄平べったいリード線のため、フィルムの巻いてある部分にも隙間ができづらく容量誤差も少ない。
ここら辺が西ドイツならではの造りの良さと言ったところか。
少し柔らか目で自然な音なのでよくストラトのハイパス回路に使用した。
古いMarshallアンプのボリュームについているハイパスにも大変よろしい。
簡単ではあるが西ドイツ製のRoederstein(ERO)を紹介してみた。
次回は番外編(まだ続くのか、、、。)
フェチを自認する輩が見た事も聞いた事もないような国内外の激レア品を色々紹介したい。
それを楽しみに待っている時点であなたはすでにドロ沼に腰まで浸かっているのである。