本来POTの物理的破損の対処法は「POTの交換一択」なのですが、今回のネタは、「どうしても交換パーツが入手出来ない」とか、「今直ぐ対処したい」時の、暫定的対処法の範疇ながら、最低限の耐久性を意識した「特定の工具を必要とする中難度の修復手法」となります。
ホームセンターに行けば沢山の種類の接着剤があるので、用途に適した接着剤を選定すれば簡単に直せそうなものですが、接着剤のパッケージに記載されている用途を参照して適合する対象物となる素材用の物を購入して来ても、POTのシャフトを強固に接着出来るものは恐らくないでしょう。
というのも、POTシャフトの素材の多くはアルミニウムや塩化ビニールである事と、接着面積と、そこに求められる強度のバランスが合わない、つまり、接着後に完全乾燥した後でも、ちょっと強い力が加わると「ポロッ」と剥がれてしまう為です。
その原因としては、接着面積が小さく、殆どのPOTの取付け状況が、操作パネルにシャフト径一杯に開けられたホールに通されている事と、POT本体と操作ツマミ間の隙間が狭い事から、例えば折れた部分をテーピングするとか、エポキシ系接着剤で肉盛りする様な手段が選べない為です。また、不用意に瞬間接着剤を使おうものなら、瞬時に接着液がPOT内部に吸い込まれて、内部で固着してしまって「POTそのものが使用不能」になってしまい、その時点で失敗終了してしまいますので、余程の好条件でない限り、瞬間接着剤は使用しない方が賢明です。
また、もし瞬間接着剤で当座はある程度の強度をもって接着されたかの様に仕上がる場合もありますが、瞬間接着剤もそれ以外でもそうですが、どんな高価な接着剤でも、接着剤の成分がアルミニウムや塩化ビニールに溶け込んで「溶着」させることが出来ず、接合面との接着剤の結合力だけで繋がっている為、長期的に強度を保つ事は出来ません。
故に、「POTの破損は交換必須」となる訳ですが、「それでももう少し踏み込んで何とかしたい」という場合の対処方法として、「歯科技術のインプラント」とは程遠いながらも、そんなイメージで、「補強シャフトと接着剤の併用」で接着強度を向上させる方法をご紹介します。
但し、POTシャフトの形状が細い物や、良くギターアンプなどで使われている様な、中心に深い切込みが入っているシャフトの場合は、より高度な方法で対処出来なくもありませんが、先ず修復不可能でしょう。

POTの一例
前置きが長くなってしまいましたが、今回の例で使用する主なものは、ゼムクリップと接着剤、ピンバイスです。接着剤についてはPOTのサイズや実装状態に応じて、エポキシ系、ゴム系、若しくは粘土の高いシアノ系の中から選択します。
接着剤の種類や特性、使用用途などにつきましては皆さんでお調べください。

ゼムクリップとピンバイスの一例
先ずポットシャフトの折れ方が「ポキッ」と平らに折れて、折れた先端を乗せるとガタつきなく元通りに置ける場合は、そのまま加工に進む事が出来ますが、破断面の荒れや変形が見られる場合は、更に棒ヤスリ等を使用して破断面を整える必要があります。
次に、出来れば折れた先端からツマミを外して、シャフトのみで加工出来る状態にしてからの方が、その後の作業もし易く、ツマミとシャフトの固着や、ツマミを傷める心配も無くなります。
前準備が整ったら、ピンバイスで、折れたシャフトのPOT側と先端側それぞれの中央に、出来るだけ正確な位置と垂直度を意識して、双方とも慎重に5mm程の深さの穴を開けます。
あとはお察しの通り、10mm弱に切断したゼムクリップで作った補強ピンを差し込んで、勘合具合を確かめます。
その時、なるべくガタや隙間が無い方がベターですが、多少の曲がりや隙間があっても、接着剤による補強により、ほぼ問題なく仕上がると思います。
そこまで確認出来たら、あとはツマミの回転位置や垂直度などを確認しながら、ごく少量の接着剤を使って補強ピンを埋め込み、慎重に接着、硬化を待つだけですが、もし硬化しても上手く接着出来ず、ツマミを操作するとPOT本体と連動せず先端だけ回ってしまう場合は、別の接着剤で再度の接着を試みるか、難易度は増しますが、補強ピンをもう1本追加して、都合2本埋め込んでしまう、などの拡張技を駆使する必要が出てくる場合もありますが、以上をご参考にお試し頂ければと思います。