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「極秘情報Vintage Marshallのサウンドの秘密を暴露する!」 Marshallユーザー必見の書。

2022-03-29

テーマ:ギター, Tips&お役立ち, 実録 ! サービスマン日記

今回もまたまたMarshallの社員が見たら思わず眉をひそめそうなタイトルだ。
さて、ギタリストならだれでも憧れるアイテムの一つにMarshallが有る。
しかもVintage(プレキシとかピンスイッチとかあの辺の年代)と呼ばれる古いやつ。

同じスペックを持ったレプリカでも本物のVintage にはかなわない、なぜか?
その秘密を今回特別に教えよう。
ま~た、ホントかよ?などと思わずに、騙されたと思って(全然騙すつもりはないが)最後まで読んで欲しい。
目からうろこが数十枚はがれる事は保証する。
実際私は心の中でこう思っている「コレを読むなら金をくれ!」と…。

注意!!

※このブログをもとに自前のMarshallを自分で改造しようなどとは絶対に思わない事!
真空管アンプの内部は高電圧が使用されているので感電の危険が有ります。
最悪の場合死に至る事も有るので、もしどうしてもイジリたい人は専門の修理業者に相談して素直に預ける事。

さて、まずは解説から。
本物のVintageと現行のMarshallとの一番の違いは何であろうか?
「それは値段だ!」と思った君は性格に難がある。
そう、部品であることは間違いないが実はここに大きな落とし穴がある。
当時と同じコンデンサー(マスタードと呼ばれているヤツ)を入手してそれに交換するぐらいでは同じ音にはならない。

   

当時の真空管はTESLAやMullardだからそれに付け替えた…、う~ん、違う。

現在のアンプビルダーでこの謎を解明した人物はラインハルト ボグナー氏だけだと思う。

以前Bogner AMPのカスタマーエンジニアをしていた時、事あるごとにそう思った。 また、最初期のMarshallをボグナー本人が改造したMarshall Bogner MOD AMPも修理した事があるがこの時の経験が現在も大いに役立っている。
凄い音のAMPだった。かのVan Halenが自分の当時愛用していたフランケンギターと交換したぐらいだからね。

話を戻そう。

一番の違いは部品であり、部品ではない。
正確に言うと、同じ部品じゃなくても良いが同じ数値にしろ!だ。
Vintage AMPに使用している抵抗の多くが海外の場合アランブラッドレーやMEPCO、スタックポールなどのソリッドカーボン抵抗という代物が使用されている。
これがカギなのだ。

    

自作オーディオマニアやアンプの修理屋ならば一度は手にしたことが有る抵抗だと思うが特にこのアランブラッドレー抵抗ってやつ、経年劣化で抵抗値がドンと高くなるのだ。
100KΩ表示なのに実測120k~130kΩなんてのはざらにある。
未使用品状態でもそうなのだから40年以上使用されているアンプの抵抗値が正確な訳が無い。
ボグナー氏はこの変動してしまった抵抗の実測値を自社アンプに採用したのだ。
今ではアンプの回路図などWebで探せばいくらでも入手できると思うので確認してみるといい。
抵抗の表示が470kΩを使用すべきところに499kΩや500kΩを使ったり47kΩの所に56kΩを使ったりしている。
全体の抵抗をこのように20%ぐらい大きい値を使用しているが、ボリュームやトーンに使用する可変抵抗は昔も今も同じ物を使用していて回路図通りの値になっている。
理解できたであろうか?
現在のアンプとVintageでは表面上の抵抗表記は同じでも中身の部品(抵抗値)は回路図に表記されている数値とはまるで違うのだ。

使用されていたソリッドカーボン抵抗はとにかく丈夫、しかも音が良いと言われている。
ただ、雑音係数はイマイチで表示に対しての抵抗値もあまり正確ではない。

しかも最悪な事に、温度係数が悪く温度の高い場所に取り付けると一気に抵抗値が上昇してしまったりする弱点を持っている。 さらに生産性が悪く、値段もお高い…、しかし音が良い。
ウェスタンエレクトリック、マッキントッシュ、マランツなど世界の名機と言われるアンプにもすべてこの抵抗が使用されてきた。なんでもメーカーからの指定銘柄だそうな。

現在入手できるソリッドカーボン抵抗はXiconというメーカーが有るがアランブラッドレーのような経年劣化は少なく炭素の質もちょっと違う。
であれば、現在入手できる高品質の抵抗を選び経年劣化したソリッドカーボン抵抗の値の物を使用すれば良いのではないか?(まさにこれこそ貧乏…、もとい、エンジニアの発想)

次の音質要因はトランス。
これはもうどうしようもない、なんせ当時は絶縁材料が紙で現在はポリエステル。
当然、紙の方が静電容量の関係でトランス内での劣化が少なく抜けの良い音だ。
何度か古い海外トランスをバラしたことが有るがバラしていながら気付いたことが有った。
トランスのワイヤーをほどいていくと段差部分に紙が巻いてあるのだがオイルが染みた茶色のこの紙はもしかしてペーパーコンデンサーの中身ではないか?そうだ間違いない。
しかもトランスに巻いてあるエナメルの質も中の銅線もクオリティが現在の物とは段違いだ。
ボグナーの場合はやはりと言うか、さすがと言うか特注でオリジナルのトランスを作っている。さすが分かってるね~旦那!!

国内でもオーダーで1個からトランスを作ってくれる会社が有る。
さすがにペーパー巻きで作ってくれるかどうかは分からないが結構質は良い。
1976年製Marshall 1959の電源トランスが死んで一度オーダーして載せ替えたことが有るが物凄く元気な音になり歪みづらくなった。
綺麗で張りの有る音なのだが、歪みまくる音を想像していたので少々面食らった。
いわゆるクランチ一歩手前という感じ、しかし、まあ、そうね、良い音には違いない。
(METAL好きとしては物足りないが)。

実際に体験したことのある人は少ないと思うが、Vintage Marshallをフルアップで鳴らしても歪みまくった音は出ないし、歪んだとしてもエフェクターを通したようなキメの細かい音ではない。
何とも言えないラウドでダイナミック溢れる荒々しい音が正解。
歪んでいる音ではないのだが妙にサスティ-ンが効いていて本当の意味での真空管のオーバードライブサウンドだ。
しかも驚くことにこの音を録音するといかにも「ハードロックです、なんか文句ある?」てな音になるから不思議。
スピーカーから出ている生の音と録音した音が、これほど差があるのはMarshallならではのあるある。

思い出してほしい、せっせとエフェクターを数珠のように繋ぎアンプに繋いで完全無欠なサウンドだぜ!と思い録音したら再生された音はショボショボペラペラの薄くてセコい音だった経験はないかい?
生っぽくてもいいし、中途半端な感じでもいい、最終的な音が良ければすべて良しなのだ。

最後に一つ、Vintage Marshallだけの事ではないのだが真空管アンプを使用する人に教えましょう。
プレゼンスコントロールが付いている場合、これを全開にした音がそのアンプ本来の音である、と言う事を知っておいて欲しい。
その回路構成上、一度スピーカーアウトジャックまでいった信号の一部をもう一度パワーアンプの入力に戻す作業(NFBネガティブフィードバック)をして出力信号の安定とノイズ、周波数特性の改善をしている。
この作業をするコントロールがプレゼンスだ。
つまりプレゼンスを上げれば(NFBを掛けない状態)そのアンプが持つ本来のサウンドを出す事ができる。
なに?そんなことすると高音がキンキンで耳障りな音になるって?
そーゆー時は男なら黙ってトレブルを下げるのだ(プレゼンスは下げない)。
Van Halenのブラウンサウンドの秘密がこれだ。トレブリーでは無いのに低音もミドルもカリカリの気持ちいい音。
それを積極的に音造りの要因として採用したのがPeaveyの5150だ。
これについては長くなるので今は話さない、いずれ機会が有ったら詳しくブログにするかもしれない。

今回はこのぐらいにしよう。何かしら得るものはあっただろうか?
ではまた。

 

技術サポート / 盛 寿

Bogner、 ENGLのカスタマーエンジニア経験を経てあらゆるメーカーのAMPを修理し続け早や20年、中でもMarshallの修理では他の追従を許さぬほどの経験値あり。Noasharkエフェクターの回路設計者でもあり、あらゆる音響機器に造詣が深く、自分用のエフェクターは自分で作るがモットー。しかしただのビンテージコンデンサーフェチではないか?と噂されている事を本人は知らない。

 
 
 
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