幻のギターアンプとして知られているダンブルアンプ。その創業者アレクサンダー・ハワード・ダンブル氏が22年1月に亡くなったとの知らせが入りました。
全てのアンプはカスタムメイドとして制作され、さらにはダンブル氏自身が気に入ったギタリストにしか制作しないという話ですが、それでもラリー・カールトン、ロベン・フォード、スティービー・レイ・ヴォーン、エリック・ジョンソン、カルロス・サンタナ、ケニー・ウェイン・シェパード、ジョン・メイヤーなど著名なギタリストが使用していることからアンプマニアの間では有名なアンプとなっています。
ギタリストそれぞれに合わせてチューンアップして販売していたという話とか、一般には小売りされていなかったこともあり、実際に弾いてみたことがある人はもちろん、販売しているのを見たことがある人も少ないと思われます。
近年ではダンブルアンプのコピーやモディファイした製品を作っているメーカーなども多数あり、筆者も「Two Rock」「Fuchs」「AKG」「Ceriatone」などは触って弾いたことはあります。
そのどれもは、いわゆる「Overdrive Special」という機種を元に制作され、最初の印象はというとクリーンチャンネルはパキパキ、オーバードライブチャンネルは太い音と言えば聞こえはいいがもっさりとした抜けの悪いファズのような音というものでした。それぞれチャンネルのサウンドのキャラが全然違い、フットスイッチでチャンネルを切り替えて使用しようとするとバランスが悪く音作りが難しいアンプだった印象です。
アンプシミュレーター系の中にもダンブルアンプをシミュレーションしたサウンドなどもよくありますが、わりとそんな感じの印象を持った方も多いと思います。
ただし自分の好みのポイントを見つけると、他のアンプとは違うオーバードライブを奏でてくれます。
噂のとおり弾きやすいサウンドではないですが、弾きこなせたときのサウンドは格別です。その辺りでも弾き手を選ぶと言われており、だからこそ、その魅力に取りつかれた人が多いことが頷けました。
サウンドハウスで取り扱いのあるアンプでは、なんとVHTからダンブル系アンプを発売しています。
サウンド的にはわりとダンブルモディファイ系で扱いやすいドライブサウンドになっている印象で、ハンドワイヤードで制作されています。
また、アンプよりも手軽にダンブル気分を味わえるという点では、数々のエフェクターでいわゆる『ダンブル系』と言われるオーバードライブが色々なメーカーから発売されています。筆者も過去にスティービー・レイ・ヴォーンが好きだったころに「ダンブルってどんな音がするのだろ?」と思いダンブル系の走りだった『Hao Rumble O.D.S』を買いました。
いま考えると、スティービー・レイ・ヴォーンが使用したダンブルアンプは『Steel String Singer』というクリーンサウンドを突き詰めたようなアンプなので、オーバードライブを買ってもレイ・ヴォーンの音にはならないのですが(笑)
JC-120などに繋いでもいまいち良い音のしなかったオーバードライブでしたが、とあるセッションでFender の59’Bassmanに繋いだ時に、これまでに聞いたことない甘いドライブサウンドになり、エフェクターはアンプとの相性があるのだと勉強になりました。
サウンドハウスでも多くのダンブル系エフェクターを販売しております。
MAD PROFESSOR ( マッドプロフェッサー ) / Sweet Honey Overdrive Factory
個人的な感想ですが、あまり歪みは深くなくサウンド的にはモディファイTSといった感じ。クランチオーバードライブとしてヌケがよく扱いやすい印象。通常のTONEではなくFOCUSの動きが独特で上げると音のハリ感が上がるといった印象で、FOCUSの癖を手なずければ強力な武器となると思います。
One Control ( ワンコントロール ) / GOLDEN ACORN OVERDRIVE SPECIAL
歪みの質感はまさにダンブルサウンドといった感じ。ブリッとしたファズのようなドライブサウンドです。HaoのRumble ODSもこの感じだった印象ですが、こちらの方がわかりやすく音作りもしやすいです。この手のオーバードライブはアンサンブルのなかでヌケが悪くなりがちですがBRIGHTを気持ち上げ目にするといいと思います。ピッキングニュアンスもかなり出るので上級者向けオーバードライブとも言えるかもしれません。逆に考えればこのオーバードライブを使っていればピッキングニュアンスをつけるのが上手くなれる!かも。。
ROWIN ( ローウィン ) / LEF-315 DUMBLER オーバードライブ
こちらもモディファイTSといった印象、元にしているエフェクターがつまみ構成から想像できますが驚異のコストパフォーマンス!エフェクターを自作したことがある人ならわかると思いますが、この値段では自作するより安い。
ちなみにTSとはIbanez のTUBE SCREEMER のこと。一時期TSをモディファイするのがマニアの間で流行っていました。クリッピングのダイオードをカットするのをダンブルモードなんて言われていましたが、なぜダンブルと言われていたのかはよくわかりません。
VERTEX ( バーテックス ) / STEEL STRING CLEAN DRIVE MKII
今回紹介する中では唯一オーバードライブではなくクリーンブースター。元のイメージとなった『Steel String Singer』はスティービー・レイ・ヴォーンが使用したことが有名なダンブルアンプで、クリーンサウンドのヘッドルームが広い、らしいですが『Overdrive Special』より希少なこのアンプは、コピー品すら触ったことがないので本物に近づくのかどうかはわかりません。しかしクリーンブースターとして非常に艶のある音になります。
SHIN'S MUSIC ( シンズミュージック ) / DUMBLOID
Dumbloidは筆者も過去に持っていました。ダンブル系のアンプが持つ扱い辛いファズのようなオーバードライブが見事に再現されており、ピッキングニュアンスへの反応、フェンダーアンプにつないだ時の甘いドライブサウンドは見事でした。セッティングが難しく自分の好みの音を見つけるのに苦労しましたがそれも本物らしいと感じるポイントでした。
ハワード・ダンブル氏が亡くなったことで、ふとダンブルサウンドとは何だったのかを考えるきっかけとなりました。これまでにギター界に与えた影響は大きかったと思います。
ご冥福をお祈り申し上げます。
そしていつの日か本物のダンブルアンプを弾いてみたいと思うのでした。