今回の鍵盤狂漂流記もコルグのKingKORG NEOの「仕様リポート」と「使用リポート」です。
今回はKingKORG NEOの音作りに関する詳細をお届けします。
KORG ( コルグ ) / King KORG NEO バーチャルアナログシンセ
コルグ KingKORG NEO(写真上部)下はヤマハYC61
■ KingKORG NEOはバーチャルアナログを進化させたシンセサイザー
KingKORG NEOはホワイトボディのバーチャルアナログ・シンセサイザーで、小さめな躯体の中に多くの機能が詰め込まれています。
バーチャルアナログ・シンセサイザーは、従来のアナログ・シンセサイザーのプロセスをデジタル信号に置き換え発音する技術。このプロセスをデジタル化することでコストダウンを図れるというメリットがあります。
一方で完全にアナログをシミュレートすることは不可能。アナログに寄せることで新しいカテゴリー音源の1つとして捉えられています。
アナログ音源をサンプリングした音源もありますがアナログのタッチを出すことは難しく、このバーチャルアナログという音源が生まれました。
よく知られるところではクラビアのノードリード・シンセサイザーがあります。赤い躯体から発音されるバーチャルアナログ音源は世界中の演奏家から支持を受け、プロミュージッシャンの多くがノードリード・シンセを使っています。重量も軽く、少し硬めのアナログライクな音が演奏家の琴線に触れたのかもしれません。
私が所有していたウォルドルフのブロフェルド・シンセサイザーもバーチャルアナログ音源でした。非常にいい音がしました。鍵盤もファタール製で非常に弾き心地が良かったです。
WALDORF ( ウォルドルフ ) / Blofeld Keyboard White デジタルシンセ
国内外でローランドやモーダルなどもバーチャルアナログ音源を発売しています。最近ではヤマハのフラッグシップ機であるモンタージュにもこのバーチャルアナログ音源が新たに搭載され、話題をよびました。
そしてコルグからも新たにバーチャルアナログ・シンセ、KingKORG NEOがリリースされました。
■ バーチャルアナログ・シンセKingKORG NEOの大きな特色その1、オシレーター
KingKORG NEOパネル俯瞰写真
まず操作パネルからです。写真からも分かるようにこのKingKORG NEOの概念はとてもシンプルです。
アナログ・シンセサイザーの心得のある方ならマニュアルを見なくてもある程度の音作りはできるはずです。
アナログ・シンセサイザーはオシレーター(発振器)+フィルター+EG(エンベロープ・ジェネレーター)+LFO+アンプ(アンプリファイアー)というのが主な流れですが、このKingKORG NEOも同様です。操作パネルは音の流れが理解できるよう、整然とレイアウトされています。
今回のリポートはKingKORG NEOの特色であるオシレーター(音源)部分とフィルター部分にスポットを当てたいと思います。
音作りの流れはシンプルですがKingKORG NEOのオシレーター(音源)の内部はシンプルではありません。
通常のアナログシンセの場合、オシレーターの波形はサイン波、三角波、ノコギリ波、パルス波にノイズジェネレーターがある位で、これらの中から1つ波形を選択して音を作ります。オシレーターが2つある場合はさらに異なる波や同じ波のオクターブを変えたり、ピッチをずらしたりすることで音に厚みを付けます。
通常のアナログ・シンセサイザーの場合、オシレーターは2つですが、サブオシレーターといってオクターブ下の音を出す発信器を備えた機種もあります。これで十分な音作りは可能です。しかしKingKORG NEOはオシレーターが3つも搭載されています。
オシレーターは3基搭載
■ 音作りの一例
ここに1つの音作りのガイドを記します。まず、液晶画面左側のダイヤルで波形タイプを選択。この画面ではSAW(ノコギリ波)が選択されています。KingKORG NEOのオシレーターは3つあり、1つのオシレーターに138種もの波形が入っています。気が遠くなる波形数です。液晶にはANALOG、DWGS、PCMなどの波形のタイプも表示されます。
オシレーターの表示例
左上部の1,2,3のランプが付いている部分が選択されているオシレーター。液晶画面左側にポルタメントのオン、オフのタッチスイッチとその下にポルタメントタイムの設定ノブがあります。
液晶左下にはオシレーターのピッチを変えるTUNEノブが付いています。
3つのオシレーターの波形を選択し、各オシレーターのピッチをTUNEノブで僅かにズラすだけで厚みのある音を作ることもできます。
さらにNEOの場合、1つのオシレーターでデチューンさせることも可能。音作りのバリエーションは広がるばかりです。
3つのオシレーターと138種類の波形。膨大な選択肢の中から音を作り出すことができます。
■ フィルターがまた凄かった!!
NEOに搭載されたフィルターが凄いことになっています。通常、シンセサイザーのフィルターはロウパス・フィルター、ハイパス・フィルター位でバンドパス・フィルターも稀に搭載されてはいるものの、主に2種類のフィルターで音作りをします。
元々、シンセサイザーのフィルターはその固有機種に搭載されたフィルターに特色があり、そのフィルターを通した音がユーザーに好まれ、名機として語り継がれています。
そういう意味ではオシレーターとフィルターの特色がシンセサイザーの特色であるといっても過言ではありません。
ミニモーグのフィルターしかり、プロフィット5のフィルター、オーバーハイムのフィルターしかりです。
話はNEOに飛びます。NEOにはミニモーグなどに搭載されたラダー・フィルターやプロフィット5に搭載さ入れたカーチスのフィルターなどをシミュレートし、モデリングされたフィルターを搭載。さらにコルグの名機であるMS-20のフィルターなど、18種類ものフィルターが用意されています。
ビンテージシンセの名機と呼ばれていたシンセサイザーのフィルターを選択し、音作りをする楽しみはユーザーにとって至福の時間であると言えます。
プロフィット5をシミュレートしたLPF P5フィルター
オーバーハイムをシミュレートしたLPF OBフィルター
歴史的名機をモデリングしたフィルターは機種ごとに特色があり、それぞれ異なった音作りを楽しめます。モーグのフィイルターは少しキツめであり、プロフィット5のフィルターはおとなしめで端正。オーバーハイムのフィルターは主張が強く、ファットな音色など、名機の特色を反映した音作りが可能。オシレーターと並び、フィルターもNEOの大きなセールスポイントです。
これって反則なんじゃない?なんて声も聞こえてきそうですが、ユーザーにとってそんな反則?が嬉しいんですよね。
繰り返しになりますが、KingKORG NEOのシンセサイズプロセスはアナログシンセのスキルのある方なら全く難しいことはありません。基本さえ押さえれば操作は簡単です。そして山ほどの波形を搭載したオシレーターと反則技のフィルター搭載など…KingKORG NEOというシンセサイザーを購入したくなる理由は沢山あるのです。
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