先日、コルグのKingKORG NEOをサウンドハウスより購入しました
KORG ( コルグ ) / King KORG NEO バーチャルアナログシンセ
アナログ人間な私はデジタル一辺倒の音があまり好みではありません。
以前、コルグから発売されたバーチャルアナログシンセサイザー「KingKORG」のリニューアル版です。名称からそう受け取ることができます。
「KingKORG」は以前に試奏したことがあり、音が太かったという記憶があります。また、この「KingKORG」はキーボーディストの浅倉大介さんがショルダーキーボードKX5の音源として使用していることなどから音源としての求心力があるという認識も持っていました。そいう意味では「KingKORG」は記憶の中にしっかりとメモリーされている特別なシンセサイザーでした。
そこに登場したのがコルグからリリースされた「KingKORG NEO」。
「おまけ」かどうかはさておき、このシンセサイザーにはなんとボコーダーが付いていたのです。
たまたま、私が参加しているバンドに女子ボーカリストが加入しました。 彼女はシックのボーカリスト、キム・デイヴィス・ジョーンズにボイストレーニングを受けていることからシックのコピーにトライすることになりました。曲はどうするのかという話になり、ナイル・ロジャーズとファレル・ウィリアムスがコラボした「ゲット・ラッキー」と「I WANT TO LOVE」をやることになりました。
そして「ゲット・ラッキー」にはボコーダーのパートがあったのです。
という訳でいくつかの偶然に加え、KingKORGは音が太い!という私の記憶を強引な理由にして「KingKORG NEO」を購入する運びとなりました。
今回は「KingKORG NEO」のボコーダー機能やボコーダーの起源、ボコーダーを使った代表曲などをご紹介したいと考えています。
■ 戦争を背景にしたボコーダーの起源は…
1940年代初期に人間の声の帯域を複数に分けて圧縮し、効率的に音声を送信する技術が開発されました。
第二次世界大戦中、英国のチャーチル首相と米国のルーズベルト大統領との秘密会談の送信手段にも、この技術が使われました。
これを音楽に転用したのがボコーダーと言われる音声変換エフェクトです。
代表的な音がロボット・ボイス。ボコーダーでなければ出せない音です。
ボコーダーとは別にギタリストなどがプレイしたスピーカーからの出音をチューブで口の中に送り、その音をボーカルマイクで拾うなどして面白い音を出すトーキング・モジュレーター(トーキング・ワウ)というエフェクトもありました。ジェフ・ベックや深町純などがこのトーキング・モジュレーターを使っています。
ボコーダーはシンセサイザーなどに人の声を入力し、アウトプットするので、より音声の加工感が強いエフェクトです。
このエフェクトはせいぜいアルバムの中の楽曲の一部として使われることで効果を発揮します。沢山使いすぎるとイモ臭くなります。それだけボコーダーはインパクトが大きなエフェクトです。演奏家にはその辺りのポイントを見分ける音楽的センスが問われることになります。

KingKORG NEO(上部の白い鍵盤・私物)
■ キング・コルグNEOのボコーダー機能は
KingKORG NEOの躯体は白くファッショナブルな印象。
ボコーダーを使用する場合はパネルの左隅にボコーダー専用のマイク端子(キャノン端子)があり、そこに付属のマイクを差し込む。入力レベルを設定するつまみが付いている。
ボコーダーの音色セレクトを決め、鍵盤でコード等を押さえ、マイクに向かって歌えばボコーダーの音が出力される。
音色は数種類あり、それぞれ音が異なる。演奏家は自身の好みや、楽曲のイメージに合ったプリセットを選択すればいい。
また、エフェクトはフェイザー、フランジャーなどモジュレーション系とリバーブ、ディレイ等の2系統がありそれぞれ設定が可能になっている。
さてボコーダーを使った代表曲のご紹介をしたいと思います。
■ 推薦アルバム:『Random Access Memories』ダフト・パンク(2013年)

2013年リリースのダフト・パンクの大ヒットアルバム。第56回グラミー賞では「最優秀アルバム」、「ベスト・ダンス/エレクトロニカ・アルバム」、「ベスト・エンジニア・アルバム」を受賞している。
推薦曲:「ゲット・ラッキー」ダフト・パンク ファレル・ウィリアムス
32か国以上でチャート1位を獲得。2014年の「第56回グラミー賞」では最優秀レコード賞と最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞を獲得している。
レコーディングメンバーはナイル・ロジャース(G)、ポール・ジャクソン・ジュニア(G)、ネイザン・イースト(B)、オマー・ハキム(Dr)という鬼のような最強メンバーが名を連ねている。
後半部分のボーカルパートでボコーダーが印象的に使われている。しかもボコーダーのボーカルパートには更にボコーダーで別のフレーズを被せている。
■ 推薦アルバム:『天空の女神』アース・ウインド&ファイアー(1981年)

アース・ウインド&ファイアー1981年リリースの14枚目のアルバム。アース・ウインド&ファイアーの勢いが陰りを見せた前作から一転、「無敵艦隊アース」の意地を示した1枚。ジャケットは太陽神や黙示録を手掛けたアース御用達の長岡秀星が担当。
推薦曲:「レッツ・グルーブ」
冒頭からボコーダーによる印象的なリフがリスナーの心をつかんだ。
ミニモーグ・シンセサイザーのキャッチーなベースラインと共にこの楽曲は世界中に拡散された。
■ 『ソリッド・ステイト・サバイバー』イエロー・マジック・オーケストラ(1979年)

YMOの歴史的大ヒット・セカンド・アルバム。坂本龍一、高橋ユキヒロ名義の楽曲も多く、メンバーの力量も均一化されている。「テクノポリス」「ライディーン」といった楽曲はポップかつキャッチーでYMOというテクノバンドの周知としては申し分なかった。そしてそれはYMO世界席巻を意味していた。
推薦曲:「テクノポリス」
「TOKIO」を連呼するボコーダーの音からスタートする「テクノポリス」。坂本龍一は中学生の頃から先生について作曲を学んでいたことから、作曲能力はもちろん、編曲の能力も非常に優れたミュージシャンだ。学生時代のアルバイトでも様々なミュージシャンのサポート演奏やアレンジも手掛けていた。
当然、楽曲のどの部分に何をアサインすれば、どうなるのかというツボも心得ていた。
テクノポリス冒頭の「TOKIO」のボコーダーはそんな坂本龍一の遊び心を垣間見ることができる。
当然、世界を見据えたときにこのテクノポリスである「TOKIO」フレーズはマストフレーズだったに違いない。
ボコーダーは当時として特に新しいものではなく、旧知のエフェクトだったはず。それを楽曲冒頭に使うことでYMOの時代を演出するムードとボコーダーのギミック性が見事に合致した。坂本龍一はそんなインテリジェンスも備えたミュージシャンだったのだ。
ローランドのボコーダー、VP-330はYMOのマストアイテムとして世に知られることになった。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲
- ダフト・パンク、アース・ウインド&ファイアーなど
- アルバム:『Random Access Memories 』『天空の女神』『ソリッド・ステイト・サバイバー』
- 推薦曲:「Get Lucky」「レッツ・ブルーブ」「テクノポリス」
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