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蠱惑の楽器たち 84.u-he Filterscape VA レビュー3 Noise

2024-07-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器

今回はソフトシンセu-he Filterscape VAのホワイトノイズを発生するノイズジェネレータを見ていきます。

u-he ( ユーヒー ) / Filterscape

NOISE ノイズジェネレータ

ノイズはシンセサイザーが登場したときから音作りに欠かせないものであり、現在も重要なジェネレータであり続けています。初期のアナログシンセでは回路的にはツェナーダイオードなどを使ってホワイトノイズを発生させていました。

Zener Diode, CC BY 3.0 (Wikipediaより引用)

ノイズにはいくつか種類がありますが、最も多用されているのはすべての周波数を均等に含んでいるホワイトノイズです。ソフトウェアの場合、ホワイトノイズの生成方法はいくつかありますが主に乱数を使います。しかし、コンピュータを使った本当の意味でのランダムは難しく、実際には疑似乱数が多用されます。Filterscape VAでは下記のNOISEと書かれたノブでノイズレベルを調整します。基本的な操作はこのノブ調整だけとなります。

上記の設定でホワイトノイズだけを出力してみます。波形と周波数特性は以下のようになります。黄色が波形で、緑が周波数スペクトラムになります。Filterscape VAのノイズジェネレータは若干高域が下がる傾向にありますが、再生できる範囲ですべての周波数が含まれています。また周波数を均等に含んでいるため音程はありません。また、どの鍵盤を弾いても同じようなノイズが発生します。

実際のホワイトノイズの音となります。テレビやラジオの局間ノイズとして、おなじみの音です。

ノイズの種類

ホワイトノイズのホワイトは白色を意味しますが、白色以外のノイズも存在します。代表的なノイズにはピンクノイズ(1/fノイズ)、ブラウニアンノイズ(1/f^2ノイズ)、ブルーノイズ(1オクターヴあたり3dB上昇)などがあります。それぞれ周波数の偏りがあり、色に例えられています。Filterscape VAではEQがありますので、ホワイトノイズをEQ加工することで、これらのカラーノイズを表現できます。

各ノイズの音です。ピンク、ブラウニアン、ブルーの順となっています。ノイズの違いは周波数スペクトラムで見るよりも、音で聴いた方が大きく感じます。

ノイズの用途

ノイズの用途は多岐に渡ります。音程感のないノイズを、音楽にどのように使うのか、疑問に思う人もいるかもしれませんが、実際の楽器の音にはノイズ成分が大なり小なり含まれています。特に打楽器などは音程感が希薄で、ノイズ成分が大半を占めています。また抜群の音程感のあるピアノでさえも、アタックの音にはノイズが含まれます。ギターのピッキングもノイズといえます。バイオリンの弓や、管楽器のブレスにも、ノイズがふんだんに含まれています。ノイズの加減で表情が豊かになり、表現力が増すため、音作りにとって欠かせない要素となります。

また楽器にノイズがあるということは楽曲全体にもノイズが乗ることになります。打楽器が目立つポピュラー音楽などでは、ノイズの割合は、かなりのもので、見方によってはノイズ成分の方が勝っているかもしれません。

ホワイトノイズを使った音作り

ノイズだけを使った効果音、楽器音をFilterscape VAを使って作ってみました。昔からよく使われているテクニックを中心に紹介していますが、VAならではのEQを使うことで、より効果的に扱うこともできます。音色作成のポイントも触れておきます。

水滴、風、雨、波、雷

1980年代ぐらいまでは、シンセで作った自然の音はよく使われましたが、1990年代になると本物の音を録音して使うことが多くなったように思います。個人的にはシンセで作る場合、本物に近づけるよりは、絵を描くようにデフォルメした方が面白いと思っています。風はフィルターにランダムLFOを使っています。雨は同じような設定ですが、粒立ちを得るためにrand holdを使っています。波も似たような設定でフィルターの掛け方を工夫してそれっぽい音にしています。最後の雷はFilterscape VAならではのEQを使って、ホワイトノイズのバランスを変えてアタックを強めています。雷の音だけは他のシンセで同じように鳴らすのは難しいかもしれません。設定は以下のようになっています。

ハイハット、バスドラ、スネア、シェイカー等打楽器

ホワイトノイズのみを使った打楽器だけのアンサンブルです。ホワイトノイズは、すべての周波数を含んでいるため、EQなどで加工することで様々な音を作り出すことができます。音程感がないので打楽器には向いています。ハイハットやシンバルなどはホワイトノイズに近い周波数特性のため、比較的再現しやすいと思います。初期の808などのアナログ・ドラムマシンなどに使われていました。下の設定はハイハットとなります。

OSCにノイズを効果的に利用

サンプルはオルガンを模した音ですが、ノイズを入れることでパイプを吹いた時のノイズ音を再現しています。同じように管楽器やバイオリンなどでもノイズを入れることでリアリティを増すことができます。

ノイズジェネレータまとめ

上記はノイズを使用した代表的な音作りですが、ほんの一例にすぎません。アイデア次第で、さまざまな音を作り出すことができます。Filterscape VAは柔軟なEQがあるので、通常のアナログシンセに比べて、さらに幅広い音作りを可能としています。


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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あちゃぴー

楽器メーカーで楽器開発していました。楽器は不思議な道具で、人間が生きていく上で、必要不可欠でもないのに、いつの時代も、たいへんな魅力を放っています。音楽そのものが、実用性という意味では摩訶不思議な立ち位置ですが、その音楽を奏でる楽器も、道具としては一風変わった存在なのです。そんな掴み所のない楽器について、作り手視点で、あれこれ書いていきたいと思います。
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