
このコラムは、これから初めて弾き語りライブを計画している方に向けて、私ゲンダユウのこれまでの様々な経験をもとに綴っています。参考にしていただけたら幸いです。
演出を工夫するメリット
弾き語りに限らずライブは音楽がメインであり、極端な話、何も喋らずひたすら歌と演奏だけで終わったとしても、それはそれで成立するものです。ですが、演出を少し工夫するだけで、聴き手の集中力を引き出し、結果的に音楽をより深く届けられるというメリットを得られる場合があります。
慣れないうちは歌や演奏に集中することで精一杯だと思いますが、少し余裕が出てきたらあなたらしい演出を盛り込んでいくことをオススメします。今回は演出の種類やちょっとしたコツ等を私自身の経験を交えながらお伝えしたいと思います。既にライブ経験を積んだ方のお役にも立てたら嬉しいです。
MCも大切な演出のひとつ
まずはじめに、曲と曲の間の喋り、いわゆるMC(master of ceremonyの略)も大切な演出のひとつと捉えて良いと思います。MCがうまいと聴き手との距離も縮まりますし、曲を集中して聴いてもらえるようにもなります。でも喋りは得意不得意がありますので、無理してうまくなる必要もありませんし、あなたらしい喋りができれば良いと思います。
とは言え、ちょっとしたコツはある気がします。まず思い浮かぶのは自己紹介。これは間違いなく聴き手にとっては興味深い内容です。それも事細かに紹介するのではなく、印象に残るネタを3つくらい盛り込んでいくと良いかも知れません。ちなみに私の場合は、「アーティスト名の由来=ひいお爺ちゃんの名前(源太夫)」「オリジナル曲150曲以上あり」「鎌倉在住。会社員をしながら活動」の3つがよく話すネタで比較的覚えてもらえているような気がします。
また、次に歌う曲の解説や聴きどころもネタとしては王道です。あまり解説し過ぎるとそれはそれで歌う意味合いが薄れてしまうので良くありませんが、自然なMCネタと言えるでしょう。あとは共通項が感じられる内容もネタとしては強いと思います。最近のトレンドやニュースに触れたりするのも良いでしょう。「話題の○○食べました?」なんて直接音楽に関わる類のものじゃなくても良いと思います。身近で起きたエピソードも自身の人柄を伝える上では良いネタです。いずれにしても、そのままさりげなく次の曲の曲紹介に話を繋げることができたらカッコいいですね。
ちなみに、ミュージシャンの中にはお笑い芸人顔負けの話術で聴き手の笑いを誘える人もいますが、そこまでできる人は稀ですし、あくまでも音楽ライブですのでそのような能力は必要ありません。逆に、曲より喋りの方がウケてしまうとそれはそれでミュージシャンとしては深い悩みになってしまうでしょう(苦笑)。
主体的な情報発信は効果的な演出になり得る
聴き手のミュージシャンへの興味は至ってシンプルです。それは「この人はどんな音楽やるのだろう?」「この人は一体何者?」という2つ。この興味を演出によって満たすことも聴き手の集中力を引き出すことに繋がります。
前者については実際にステージが始まればすぐに分かると思いますが、後者については、演者側から主体的に発信しないと伝わりません。聴き手の中には手元のスマホで演者の名前をネット検索してブログやSNSを確認してくれる人もいますが、受け身であることは否めません。おススメするのは「プロフィール&活動情報」というチラシ(フライヤーとも言います)を作成して、会場で渡すという方法です。私もこれまで実践して来て効果を感じています。
私の場合は、自身の写真を添えて「自己紹介」「活動履歴」「作品視聴方法(YouTube)」「情報発信媒体(SNS等)」「好きなアーティスト」、そして「直近のライブ情報」を記載するようにしています。ここでポイントとなるのは、「よく質問される内容を記載すること」と「ライブ前に名刺のように手渡しすること」の2つ。こうすることで、自然に挨拶や会話ができますし、名前も含めて覚えてもらう可能性も高まります。また、記載内容のどこかに共通点があると話も弾んだりします。実際に「同じ歳なんですね!」とか「私もビリージョエル好きなんですよ!」等のリアクションをいただき、ライブも集中して観ていただけたことも多々あります。演者側の主体的な情報発信、いわゆる自己開示こそ、聴き手側の心を解きほぐし、自身の音楽の世界に引き込むための最も効果的な演出なのではないか?とすら思います。
ちなみに、このフライヤーは会場に置き忘れられたり、普通にゴミとして捨てられたりすることを前提として作成する必要があります。電話番号をはじめとした重要な個人情報は記載しないように注意しましょう。
また、これ以外の情報発信で私が試した事例としては、当日のセットリストの事前周知。これについては賛否あると思いますが、コース料理のメニュー表のイメージです。フライヤーの中に記載しておいたこともありますが、最近では譜面台のところに客席から見えるように大きく掲示しておくことが定番になりました。ストリートミュージシャンがボードを掲示している様子をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。余談ではありますが、「いきものがかり」はアマチュア時代、会場で演奏曲の歌詞を冊子にして配布していたそうです。曲を伝えたいという意気込みを感じますね。
またユニークなところでは、これまでの音楽にまつわるエピソードをエッセイ風にした小冊子「ゲンダユウの音楽に纏わるここだけの話」を作成して配布したこともあります。A3用紙に印刷して8つ折りにした物なので安価で用意できました。なかなか面白い読み物だったはずですが、会場で読むには不向きで効果をいまひとつ実感できなかった印象です。
視覚にも訴える演出も考えてみよう
人間の知覚の中で最もダイレクトに訴えることのできるものは、もちろん「視覚」。ライブにおいても服装等のミュージシャンのビジュアルは、奏でる音楽のイメージをも左右する要素となり得ます。このあたりはファッションやセンスに疎い私(苦笑)よりも皆さんの方がよっぽど良い選択をされるかと思いますが、ここでは改めて「奏でる音楽に合った服装」をすることの大切さを強調しておきます。私の場合は、ある時期から仕事のスーツ姿のままライブに出ています。仕事帰りの平日の夜にライブをやるので着替えは荷物になる…ということがキッカケですが、ビリージョエルを敬愛していることと、スーツ姿の出演者が意外と珍しいと言うこともその理由です。
自分で似合う服装が分からない時は、プロミュージシャンの服装を参考にしてみたり、友人に相談してみたりしても良いかも知れません。服装以外にも、髪型や帽子やメガネ等の小物もミュージシャンとしてのイメージや奏でる音楽の印象に影響することと思います。もちろん持っている楽器の色や形もビジュアルのひとつになるので、服装や小物と合わせて効果的に活用してみましょう。

この他に、私がこれまで実践した視覚的演出をご紹介します。
弾き語りライブの演出としてはかなりユニークですのであくまでもご参考まで。
① イルミネーション
100均やホームセンター等で購入できる電池式のイルミネーションを、譜面台やマイクスタンドに取り付けて華やかさを演出したことがあります。自身にポップな曲が多いのでイメージにも合っていたように思います。クリスマスソングを歌う時は体に巻き付けたことも(笑)
② 映像とのリンク
会場にスクリーン等の設備があることが前提ですが、演奏曲のイメージに合う画像や動画を流したこともありました。具体的には、過去の思い出の場所をテーマにしたオリジナル曲を、当時の写真をスライドショーとして流しながら歌いました。いつか他の曲でも歌詞を画面に流しながら歌いたいとも思っています。
③ 被り物・変装
しっとりと真面目に歌う場合よりも、エンタメ色の強いステージの場合に限りますが、自身自身、数々の被り物と変装(コスプレ)にも挑戦して来ました。ジョンレノンの歌を歌う時には長髪のカツラと丸メガネを掛けてみたり、ミスチルメドレーを歌う時には桜井さんのお面を被ってみたり、自作の箱根駅伝のコスプレ姿で走りながら登場したこともあります。自らを振り返ると照れ隠しの部分もあった気もしますが、大いに場が盛り上がった記憶があります。ただし、この演出は音楽を浸透させると言うよりは、やはり場を盛り上げると言う効果の要素が強いですね。
④ バックダンサー
これは1度しか経験がないのですが、オリジナル曲の盆踊りバーションを披露した時に、仲間2人(女性)に依頼して、浴衣を着てサイドで盆踊りを踊ってもらったことがあります。サザンの桑田さんもよく取り入れていますが、ジャンル問わず、演奏時にダンサーがいることでエンタメ指数がグッと上がり飛躍的に楽しい空間になる場合があります。ただし、曲や会場の雰囲気を吟味しないと逆効果になる可能性もありますので、十分に検討してから取り入れましょう。弾き語りライブでは少し難しいかも知れませんが…。
1番盛り上がるのは参加型の演出
何事もそうですが、人間は自身に関わることや共通点があることについては強い興味を示すものです。また、それがポジティブなものであれば楽しくなって来ます。私もライブの時は極力、聴き手の方々を巻き込んで楽しんでいただける工夫をして来ました。経験上、1番盛り上がる演出だったと思います。そして、これらの演出後は皆さんの集中力が明らかに高まり、場の一体感も増し、良いライブになっていったように記憶しています。こちらも実践したものを含め、いくつか事例を紹介したいと思います。
① 客席に行く
これはピアノではなく、ギターではないと難しいかも知れませんが、昔からのテッパン演出ですね。客席まで行って生ギターで1曲歌う…と言うなんてサプライズ曲があっても良いかも知れません。アリーナクラスでライブをやっているプロの方も、メインステージとは別に中央に円形ステージを組んで歌う時間がありますが根本的にはこのような狙いがあるのだと思います。
② リクエスト曲を歌う
リクエストした曲を演奏してもらえることは、誰でも嬉しいものです。オリジナル曲からリクエストしてもらうことが難しかったとしても、カバー含め予め用意していたリクエスト曲リストの中から選んでもらったり、その方の今の気持ちを聴いてそれにマッチする曲を選んでみたり等、やり方は色々と考えられると思います。
③ 打楽器等で曲に参加してもらう
演奏曲の中でゆるく楽しく盛り上がれる曲がある場合は、客席の中からご指名してステージに招き、打楽器等で参加してもらう演出も楽しいでしょう。私もこれまでタンバリや鈴、ミニボンゴなどで協力してもらったことがあります。ただし、協力が強制やプレッシャーになったり、叩き方が難しいものにならないように注意してください。
④ 聴き手に関連する歌を歌う
誕生日が近い方にバースデーソングを歌うという演出はよくあることかも知れませんが、来てくださった方に何かしらの関連のある歌を歌うことも喜ばれます。私も小学校時代の友人が来てくれた時は、校歌をジャズバージョンで弾き語ってみたり、目標を持つ仲間に向けてマッチするオリジナル曲でエールを送ったり、歌詞をその日バージョンに変えて聴き手の方へメッセージを送ったりと色々やって来ました。
私が特におススメする2つの演出
私の場合、楽しんでいただきたいというエンタメ精神が強いこともあり、これ以外にも様々な演出をライブの中に取り入れて来ました。歌詞の朗読、オリジナル曲に派生した朗読劇、手品(聴き手に小さい子がいたので)、モノマネ、BGMで登場(プロレスのように)、景品付きゲーム企画等、常にアイディアを探し、プロアマ問わずステージを見て面白いと思った演出については、可能な限り再現できるようチャレンジして来たように思います。
最後に、私が実際によく取り入れている特におススメの演出を2つ紹介します。
① 仲間のゲストミュージシャンとのコラボ
弾き語りのブッキングライブは通常5〜6曲程度をソロで歌うと思いますが、中盤の3、4曲目あたりで仲間のゲストミュージシャンをステージに招いてコラボする時間はよく取り入れています。ゲストの仲間にとっても自分にとっても楽しいですし、聴き手にとってもアクセントになります。また、仲間との絆も深まりますし、仲間がお客さんを呼んでくれれば集客数の増加にも繋がります。うまくいけば誰にとってもハッピーな演出となること間違いなしです。
② 思わずクスッと笑える!?「アンコール促しプレート」
これはミュージシャンのキャラにより適合性が分かれる演出となります。予め「誰かアンコール!って言って♥」という文言を書いたA3サイズくらいのプレート(厚紙等)を作成し、首から掛けられるようヒモを付けておくか、譜面台に掛けられるようにしてステージに隠しておきます。最後の曲が終わったら、表情を変えずにそのプレートを客席に向かって見えるように掲げ「今日はありがとうございました!気をつけてお帰りください!」などと何食わぬ顔でクローズの雰囲気を作っていくと、客席からクスクスと言った静かな笑いが起き、誰かが「アンコール!」って言ってくれます(笑)。その時に「えっ!?アンコールですか!?想定外です。ありがとうございます!」なんて言うと、ほぼ100%ウケて和みます。そこで、アンコールに真面目なかっこいい1曲をやれば、そのギャップにあなたのファンも更に増えるでしょう!?
ただし、この演出には注意点があります。まず、当然ですが自分の持ち時間を超えないこと。またブッキングライブに出演する場合は、共演者とのバランスを考えて出演の順番がラストの時にやるのが無難でしょう。ラストの場合は次の出演者がいないので、お店側も特別にアンコールのために時間超過を認めてくれる場合が多いと思いますが、予めマスターには内々に話しておき、許可を取っておいた方が良いでしょう。
今回はこのように様々な演出の工夫について紹介して来ましたが、演出が音楽の印象や存在感を上回らないよう心掛けながら、あなたらしさを大切に、楽しんで取り入れて欲しいと思います。あなたの音楽やライブが演出により更なる輝きを増すことを願っています。
※持ち込みのイルミネーションによる演出にも触れましたが、こちらのアイテムもおススメです。USBによる充電で磁石でも接着可能。特にノリノリの曲を演奏する場合には、聴き手もそしてあなた自身の気持ちも上がること間違いなし!です。
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