

弦楽器弓の、品質や性能を判断したい時のポイントは
- 工作の精度 単純にきれい、丁寧にできているか
- 全体のフォルム ヘッドの形、スティックの削り方
- 材質 (ヘルナンブコ材が良いとされていますがその他のブラジル材でも良い弓はあります)
- 重量 (下記に解説)
この他にも
- 弓の弾性
- 重心の位置
- 毛の質
- 毛の張られ方
このように見るべきポイントはありますが、いずれも感覚に基づく判断要素が多く、ほとんどの場合は自分の判断というよりは
「ちゃんとした楽器専門店で、良いと言われてすすめられた」(から半信半疑ながら買った)
「有名な人の記事がネットに書いてあった」(からいいと思って選んだ)
「バイオリンの先生がこれをすすめた」(から買わざるを得なかった)
といった、その人にとっての「ご意見番」の存在が評価を決定づける要素が多いようです。
自力で弓の良し悪しを判断して選ぶことができるというのは、ある程度の数の弓を見た人でなければ難しいものです。しかし、そういう人であっても自分の意見、見解こそ正しいなどとは思っていないはずです。
沢山見れば見るほど、文字通りの千差万別ですし弓の選定は「慣れている人でも難しい」という事が身にしみて分かります。
今日はご意見番よろしく解説していきますが果たしてうまくいくかどうか??

弦楽器の弓は楽器の種類によって形状サイズが異なります。
画像の上から2本はコントラバス用です。

① ジャーマン式 長さ約80cm 重さ150g前後

フロッグが大きく、これにより弓の持ち方が逆手(フレンチ弓と比較して)になります。
② フレンチ式

チェロ弓をグッと大きく太くしたイメージです。持ち方もチェロ弓に似ています。
③ バイオリン用
4/4サイズで長さは約74cm。重さは58g程度から65g程度まで。60.0gから61.5g程度が丁度いい重さとおっしゃる方が多いようですが、実際には楽器との相性とその弓の性質で音は千差万別です。

④ ビオラ用
長さは約75cm、バイオリン弓とほぼ変わりませんが重さは70g前後のものが多いです。画像はバイオリン、ビオラ、チェロの順です


パッと見てバイオリン弓との区別がつきにくいこともあり、フロッグの角を丸めて作られているものが多いです。(オールドの弓では角ばっているものも存在します)
⑤ チェロ用
約70cm 重さは80g前後です。形状もバイオリン、ビオラとは区別がつきやすいと思います。チェロ弓もフロッグの角が丸いものが多いようです(オールドの弓では角張っているものも存在します)
⑥ から⑪(3/4,1/2,1/4,1/8,1/10,1/16)
分数サイズのバイオリン弓はメーカーにより長さ、重さにばらつきがあります。厳密な規格というのは存在していないようで、各メーカーが準拠している基準が何なのかは実際のところ判明していません。
次に掲載した表は、PLAYTECH PVB300番台の分数弓の実測データとSUZUKI No.10の弓を計測したデータをまとめた表です。
PLAYTECH PVB300番台の弓は長さにはばらつきはほぼないですが、重さは一定しておらず、複数本計測しての平均値を記載しています。
このように見るとPLAYTECHとSUZUKIを比較してみると大きな差は無い事が分かります。
| メーカー | 品番 | Size | 長さ(mm) | 重さの平均 | PVBはSUZUKIに比べて |
|---|---|---|---|---|---|
| PLAYTECH | PVB334 | 3/4 | 691 | 57.25 | 11mm長く 重さはほぼ同じ |
| PVB312 | 1/2 | 620 | 50.81 | 5mm長く 1g軽い | |
| PVB314 | 1/4 | 551 | 46.45 | 3mm短く 0.75g重い | |
| PVB318 | 1/8 | 508 | 41.13 | 12mm短く 1g軽い | |
| PVB310 | 1/10 | 455 | 36.95 | 13mm短く 4g軽い | |
| PVB316 | 1/16 | 428 | 36.11 | 2mm短く 4g軽い |
| メーカー | 品番 | Size | 長さ(mm) | 重さの平均 | Default |
|---|---|---|---|---|---|
| SUZUKI | N10 | 3/4 | 680 | 57.3 | |
| 1/2 | 615 | 51.8 | |||
| 1/4 | 554 | 45.7 | |||
| 1/8 | 520 | 42.2 | |||
| 1/10 | 468 | 41.1 | |||
| 1/16 | 430 | 40.2 |
※SUZUKIの表はメーカーが公表している値ではなく、このブログのために現品を実測したものです。従ってこの表のデータをメーカー仕様として提示するものではございません。
あくまでも比較のための参考データです。
価格を抑えたPLAYTECHの弓はこちらから
⇒ PLAYTECH 弓 一覧
SUZUKI VIOLINの弓はこちらから
⇒ SUZUKI 弓 一覧
最初のポイントに戻ってみましょう。
- 工作の精度 単純にきれい、丁寧にできているか
- 全体のフォルム ヘッドの形、スティックの削り方
- 材質 ヘルナンブコ材が良いとされていますがその他のブラジル材でも良い弓はあります
1から3は製造上の先天的な性質は、商品として完成している以上奏者が手を加えることはできません。
- 重量 〇
- 弓の弾性 〇
- 重心の位置 〇
- 毛の質 〇
- 毛の張られ方 〇
この中では4から8番がその項目と言えるでしょう。中でも「重量」は客観的なデータなので関心を持ちたい重要なポイントです。しかし肝心の音、については弾いて初めて分かるものですから、実際に手に持って感覚として感じ取れる項目が実際に判断する項目になってきます。
弓の重量
全ての楽器種の弓について解説するのは困難なので、ここはやはり4/4のバイオリン弓についてのお話をしましょう。
前回のブログ「弦楽器の弓の話 プロローグ『弓に関する雑談とそこから見つけられる課題』」
「Francesco Viotoni」バイオリンに合わせた弓の重さが62g位でやや重いものの、素晴らしくいい音が出ましたという内容のお話をしました。これは「4/4サイズのバイオリン弓の最適な重さは62g」という意味ではない事は文脈で明らかにしています。
(怖いのは「」の中だけが検索にかかって、早合点した人がそのように思い込んでしまうことです)

Francesco Viotoni Violin 1925
4/4サイズのバイオリン弓
と一言で言っても一本3,000円の量産弓から〇千万クラスの金額、いわば王様の弓??と驚くような代物まで存在しています。この両者が同じテーブルに並ぶ事は決してありませんし、後者は恐らく一生のうち一回見られるかどうかのものです。
だから王様の弓について我々は「考える必要のない存在」ですがここでは都合上話題として持ち出しているにすぎません。
3,000円(正確には)の弓 PLAYTECH PVB300はこちら
PLAYTECH ( プレイテック ) / PVB300 バイオリン弓 4/4サイズ 角弓
値段はともかく重量は?
当たり前ではありますが、3,000円の弓と王様の弓、重量はかけ離れた数字ではありません。
仮に王様の弓が61.5gと仮定して、61.5gの3,000円弓を探すのはさほど困難ではありません。ほら。

PVB300を何本か計量したら61.5gのものがありました。
61.5g?どこから出た数字?
これは筆者の主観ですが、過去に触れた弓の中で「いい感じ」を持ったものの中でこの数値のものが多かった(ような印象)ので、根拠は薄くともこの数値を一つの基準にして、これより軽いとか重いというような見方をする習慣ができています。
つまりはどういう事?
4/4の弓の重量については「58g~64g程度が、一般的な4/4の弓の重さ」、と考えます。
これには異論を唱える方も多数いらっしゃることでしょうし、何しろ断定するとややこしくなる時代なので「と考えます」などとぼかしています。しかし、実際のところこの数値でうなずく楽器屋さんも多いはずです。
思い出話:昔々ある日の楽器店の店内での会話
「この弓、おんぼろでメーカーも分からない58gだけどすごく弾きやすい。欲しい」
「このフレンチのオールド弓は60.5gか。いくらですか?え、そうなの?何か気に入らないな~」
このコメントは同じ人のものです。あるアマチュアのそこそこ弾けるS君のコメントです。私の創作ではありません(あ、でもちょっと脚色あります。ごめんなさい)
「58gの弓」は、私がかつて勤めていたお店の音出し用の備品の弓で、買い取った中古の古いマサキチ・スズキについていた弓でした。
一方「60.5gの弓」は、とあるフランスの業者から買い取り仕入れをした、鑑定書付きのものでした。値段は書かない方が良いでしょう。
・・・・・・(イライラ)で?結局何グラムならいいの?どうなの?
(詰問来た~)あ、ハイッ。えっと、これでいかがでしょうか
「58gより軽いもの、64gより重いもので良い弓に当たる確率は下がると考えられますっ!61.5gを基準に多少の軽重、具体的には60gから63g位で選ぶと良いケースが比較的多いですっっ!!」
今日のまとめ
予想通りではありますが、次のようなまとめ方になるでしょう。
「重さも価格も、弓の性能を決定づける要因にはならない。ついている値段、軽量した数値で良し悪しが判断できるか否かは、その人次第。他者のアドバイスも結局は主観だけれども、重量は選定の目安にはなる」という事になります。
2行でまとまる内容を引っ張っただけのブログ、というわけですがこのブログから何かを読み取っていただくのは読者の方次第です。
弓選びは、結局のところ「その人の感覚が問われている」、ということになります。
その手立てになる方法を次回からも一緒に考えてまいりましょう。

アルコールランプ・・? 何に使うのかは次の機会に!







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