映画にとって音楽は欠かせないものです。とくに「名作映画」と呼ばれる作品の音楽は、一流の作曲家が手掛けることがあり、音楽単体でも素晴らしいものが多いのではないでしょうか。また、主題歌だけでなく、劇中の効果音なども映画を楽しむうえでの重要な要素の一つです。今回は作中に和楽器の音が流れる映画をご紹介します。
1. 七人の侍

(c)1954 TOHO CO., LTD.
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、木村功、津島恵子、千秋実
製作国:日本
公開:1954年
あらすじ:
野武士が野蛮化した戦国時代。ある貧しい村に住む百姓たちは、侍を雇って野武士から村を守ることに決める。そうして集まった七人の侍と村人たちのもとに、野武士が襲いかかる。
スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス、フランシス・フォード・コッポラなどの名監督が影響を受けたと言われる黒澤明監督の「七人の侍」。そんな名作映画にも和楽器が登場します。
- 琵琶 -
百姓たちが町に侍を雇いに行った時に泊まった宿で、盲目の琵琶法師が雨の音をバックに琵琶を奏でます。独特の古典音階が、なかなか侍が見つからない絶望的な百姓たちの心境を表しているようで、物悲しい雰囲気を醸し出しています。

- 篠笛、締太鼓、ささら、鉦 -
戦いが終わったあとの田植えのシーンで、百姓達によって「田植え歌」が披露されます。太鼓や鉦のリズムに合わせて元気な掛け声を上げ、村人が踊りながら稲を植えていきます。野武士が去って村に平穏が訪れたことを表しているような明るい笛の音と、死んでいった侍達の墓の映像との対比が印象的なシーンです。
大岡紫水 ( オオオカシスイ ) / 紫水流 篠笛 紫水号 ドレミファ音階 C調
2. KUBO/クボ 二本の弦の秘密

(c)2016 TWO STRINGS, LLC. All Rights Reserved.
監督:トラヴィス・ナイト
声の出演:シャーリーズ・セロン、マシュー・マコノヒー、アート・パーキンソン
製作国:アメリカ
公開:2017年
あらすじ:
魔法の三味線と折り紙を操る片目の少年クボ。母親の力によって命を吹き込まれたサルとともに「3つの武具」を探し、自身の出生の秘密に迫る旅に出る。
- 三味線 -
三味線や折り紙など、古(いにしえ)の日本を舞台としたストップモーション・アニメーション。三味線を持った男の子が主人公で、随所に三味線の音色が流れます。心に染みわたる落ち着いた音色から、戦いの場では力強い音が表現され、場面の雰囲気に合わせて効果的に使われています。三味線以外にも尺八や箏、盆踊りのシーンでは九州の民謡「炭坑節」が流れたり、クワガタ、灯篭流しなど、日本の魅力がたくさん詰まった映画です。また、日本語吹替え版のエンディングテーマには、津軽三味線奏者の吉田兄弟が参加しています。
SUZUKI ( スズキ ) / 三味線セット かえで MS-8 和楽器
3. ラストサムライ

(C)2003 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
監督:エドワード・ズウィック
出演:トム・クルーズ、渡辺謙、真田広之、小雪
製作国:アメリカ
公開:2003年
あらすじ:
明治維新の直後。南北戦争で功績をあげたオールグレン大尉は近代的軍隊の養成を依頼され、日本を訪れる。ある日、彼は武士たちに拉致され、一人の侍と出会う。剣の時代の終焉を冷静に見つめる侍のもとで、武士道の精神を知っていく。
- 尺八 -
サウンドトラックは「パイレーツ・オブ・カリビアン」「バックドラフト」などで有名な映画音楽作曲家のハンス・ジマーが手がけています。映像に楽器は登場しませんが、BGMとして箏、太鼓、尺八などの和楽器に、壮大なストリングスやシンセサイザーの音が絡み、聴き応えのある楽曲が揃っています。尺八の音色は、ムラ息、ナヤシ、スリ上げ、といった演奏技法により尺八らしい音が表現されています。尺八が映画の雰囲気を作り出している、と言っても過言ではない活躍をしています。
日本コンダクター販売 ( ニホンコンダクターハンバイ ) / プラスチック尺八 悠 1尺8寸
4. 無法松の一生

(C)東宝
監督:稲垣浩
出演:三船敏郎、高峰秀子、芥川比呂志、笠智衆
製作国:日本
公開:1958年
あらすじ:
天涯孤独で喧嘩っ早いが純粋な心を持つ人力車夫の松五郎。ある日、いじめられていた少年を助けたことで彼の家族と親しくなった。後に少年の父が病死し、松五郎と残された母子は本当の家族のような絆を深めていく。
- 和太鼓 -
昭和の大スター、三船敏郎の名演が光る作品。「無法松の一生」は演歌歌手の村田英雄のヒット曲としても知られています。この映画の最大の見どころは、三船演じる松五郎が祇園太鼓を披露する場面です。寡黙で不器用な男が「ちょっと真似事だけやってみるかの」などと控えめに言いながら、本格的な太鼓を打ち始め、群衆を虜にしていきます。日本海の荒波を連想させるような力強い太鼓の連打シーンはとにかくカッコよく、映画史に残る名シーンと言えるでしょう。
ROLAND ( ローランド ) / TAIKO-1 電子和太鼓
5. 武士の一分

(c)2006「武士の一分」製作委員会
監督:山田洋次
出演:木村拓哉、檀れい、笹野高史、坂東三津五郎
製作国:日本
公開:2006年
あらすじ:
下級武士の三村新之丞(木村拓哉)は、妻とともに幸せに暮らしていたが、藩主の毒見役を務め、失明してしまったことから人生の歯車が狂い始める。
- 尺八、笙、琵琶 -
音楽は世界的シンセサイザーアーティスト・作曲家の冨田勲が手がけ、邦楽界の貴公子とも称される藤原道山の奏でる尺八の素晴らしい音色は、侍の心情や境遇が表現されています。笙、琵琶、風鈴の音、鳥や虫の鳴き声などをバックに尺八の音が効果的に使われており、自宅で鑑賞される方は、ぜひ大きめのスピーカー音量、またはヘッドホンで視聴されることをおすすめします。
今回紹介した映画以外にも、洋画、邦画を問わず、和楽器が登場したり劇伴に使われている映画は沢山あるので、ぜひ探してみてください。