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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 ~日本を代表するギタリスト渡辺香津美さん取材記Ⅰ~ その77

2022-05-27

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

私のミュージシャン取材記 日本ナンバーワンギタリスト渡辺香津美さん

鍵盤狂漂流記は前回までは私がサンウドハウスさんから購入したシンセサイザーやスピーカーを取り上げました。
今回は私の取材したミュージシャン備忘録です。鍵盤狂漂流記ですから当然、鍵盤奏者…ではなく、今回は日本でナンバーワンジャズギタリストである渡辺香津美さんの取材記です。

テレビ企画「音のある風景」で・・・

私が所属していた放送局のTVニュース企画で「音のある風景」という人気シリーズがありました。TVは映像主体のメディアですが「音」をテーマにして話を進める面白い企画です。例えば小川のせせらぎを強調したり、街の喧噪を切り口にしたり等々…。
世の中に溢れる「音」を強調することで物事の真理をあぶりだす企画で取材者のセンスが問われます。

日本を代表するジャズギタリスト渡辺香津美が静岡に!

「音のある風景」には「音楽」もその範疇に入ります。企画を考えている時にぴったりなニュースが入ってきました。
渡辺香津美さんと福田進一さんの両ギタリストが静岡市の音楽ホール、静岡音楽館AOIでDUOコンサートをするというのです。
私は静岡音楽館AOIでジャズピアニスト、マル・ウォルドロンの取材やゲイリー・バートンと小曽根真さんのDUO、香取良彦オーケストラなどを観ています。音の響きがとても綺麗なこじんまりとしたホールです。アコースティックギターDUOにはもってこいのホールであり、TV的にもストライクした。

ギタリスト渡辺香津美さんと福田進一さんのリハーサル

ギタリストの渡辺香津美さんは1953年東京生まれの日本を代表するジャズギタリストです。17歳でデビューし、日本のジャズ界を背負ってきた人物です。また、福田進一さんも日本を代表するクラシックのギタリストです。
ステージでは二人のリハーサルが始まりました。最初に二人が演奏したのはビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」でした。

リポートに必要なもの…それは予定稿です!

取材をする際、必要な事があります。それはあらかじめテーマ設定を含めたコンセプトや構成を考え、原稿に書く事です。予定原稿…「予定稿」といいます。「予定稿」を書く事で取材するテーマが見えてきます。ただ現場に出かけて撮るだけでは何も見えてきませんし、核心的な映像も撮影できません。
私はDUOコンサートから見える二人の音の違いや、その背景、音楽への想いなどにフォーカスし、断片を掬い取れればと考えました。

渡辺香津美と福田進一・・・「音のある風景」のテーマは?

私は音楽モノの取材の際に必ず、リハーサルを撮影するようにしています。メインイベントは本番ですが、それを放送するだけでは意味がありません。
大切なのは自分が設定したテーマ(視聴者に伝えるテーマ)を現場で掬い取ることです。
リハーサルを取材する意味は大切な断片が沢山、落ちているからです。二人がどんな会話をするか等を「音」を生かして撮影したり、表情を撮ったりなど、想定していたシーンをカメラを回しながら考え、掬い取ります。

リポート取材で大切な事は音楽も同じ!

私が駆け出しだった頃、先輩に言われたことがありました。

先輩:「お前は何を撮ってきたの」
私:「コンサートです」
先輩:「ただ、それだけか?」「それでは誰がリポートしても同じものになってしまうよ。このリポートでお前は何を見つけたの?何を撮ってきたの?」「お前はどこにいるの?」

この話は音楽にも共通します。
リポートは取材者本人のフィルターを通すことが大切です。
音楽も同じです!
アマチュアならば、好きなミュージシャンをコピーして演奏すれば楽しい…これでOKです。
しかし、プロを目指すのであれば人と同じことをやってもしようがありません。
音楽家が何を表現するのか?そのためにどうするのか?どう弾くのか?それらは全て個人に委ねられています。圧倒的に強力な個人のフィルター、人が真似できないようなオリジナリティが必要なのです。シンプルな話ですが、分かっている人は多くありません。
「あいみょん」や「坂本龍一」、「エリック・クラプトン」が二人いる必要はないのです。

TVリポート取材の話と真面目な音楽の話…両方とも同じだと思います。

■ 推薦アルバム:渡辺香津美『ギター・イズ・ビューティフルKW45』(2016年)

渡辺香津美ギター生活45周年を記念して制作されたギターDUOアルバム。渡辺香津美と親交の深い国内外のギタリストとの最小アンサンブル「DUO」、共演がテーマになっている。

推薦曲:『トリステ』

アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「トリステ」。日本のボサノバギタリストである伊藤ゴローさんとのDUO。
ジョビンの名盤である「WAVE」ではジョビンのピアノがメロディをとっていたが、このアルバムでは二人のギタリストによる美しい演奏が展開される。澄みきった水が淀みなく流れる様を思わせる。渡辺香津美は複雑なコードワークを駆使したアドリブを展開している。

次回は「音のある風景」の取材の様子と圧倒的な渡辺香津美さんのインタビューをお届けします。
どうして渡辺香津美さんが日本で一番のギタリストになりえたかのヒントがインタビューから見えてきます。乞うご期待!


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:渡辺香津美、福田進一
  • アルバム:「ギター・イズ・ビューティフルKW45」
  • 曲名:「トリステ」

⇨ SOUND HOUSE ピアノ/シンセサイザー 一覧


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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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