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スピーカーのハムやヒスの原因と除去方法について

2022-11-01

テーマ:How to

PAスピーカーを使ったライブへの参加があるなら、スピーカーからハムやヒス、バズと呼ばれるノイズが発生し、演奏を台無しにされた経験があると思います。この記事では、スピーカーからハム音やヒス音が発生する原因を探り、PAシステムのノイズを除去するための効果的な方法について説明します。

スピーカーのハム音、ヒス音とは

スピーカーから聞こえるハム音とヒス音のようなノイズを止めるには、まず、ノイズが何であるかを定義する必要があります。

ハム : 唇を閉じてハミングしているように聞こえる、倍音のない低周波ノイズ(50または60Hz)で、ベースギターの低いB♭に非常に似ています。

ヒス : ホワイトノイズに似た定常的なノイズで、屋根に降る雨やヤカンから出る蒸気のような音です。

バズ : もう一つのB♭の定常音で、ピッチの高い倍音を多く含むノイズです。ギターをギターアンプに接続して電源を入れた状態で、ギターケーブルの先端に触れたときに発生します。

ハッシュ : ベーコンを焼くような音がする、ブーンという脈打つタイプのノイズ。定常的な場合もあれば、変調周期を持つ場合もあり、原因によって異なります。

アナログテープのヒスノイズやアンプのゲインなど、オーディオ信号にはもともとノイズが含まれていますが、一般的にスピーカーのハムやヒスの多くは、配線不良やグランドループ、その他の電磁干渉(AC電源ラインのハム、RF干渉、USBやコンピューターのノイズ)により誘発されます。ここでは、ノイズに起因する各問題について、トラブルシューティングを詳細に説明します。

音声信号に含まれる固有ノイズ

スタジオの空調ノイズ、録音中に拾った環境ノイズ、ノイズの多い真空管の使用、風などによって、オーディオ信号にヒスやハムが録音されている作品もあります。スピーカーは音声信号全体を再生するので、録音時のノイズも再生します。

解決策

このような固有のノイズを除去するには、ノイズと実際の音声信号を分離するハードウェアまたはソフトウェアを使用して、音声の後処理を行います。オーディオ・トラックの重要な部分を削除しないように、細心の注意が必要です。

アナログ機器からのノイズ

アナログオーディオ機器(アナログテープ、アナログレコード、およびそれらの再生システム)は、しばしばハムやヒスを発生させます。アナログレコードは、その暖かさと音質が好まれているため、特に大音量で聴く場合には、その固有のノイズが問題になります。

解決策

ターンテーブルのカートリッジやレコードの溝、テープレコーダーのヘッドをクリーニングすれば、不要なノイズを減らせます。また、デジタル機器の使用も、ノイズを減らす一つの方法です。しかし、DAコンバーターもノイズの発生源になりえます。

パワーアンプのゲインによるノイズ

単体のパワーアンプも内蔵アンプも、オーディオ信号にノイズを加える原因となります。これは、特に低価格帯のアンプに多くみられます。試しに、パワーアンプのゲインを上げたり、アクティブスピーカーに音声信号を送らずに音量を上げてみてください。ヒスノイズが発生するかもしれません。これがアンプによるノイズであり、入力信号とその信号に内在するノイズの両方にゲインをかけているのです。さらに、オーディオアンプの電子部品も信号にノイズを加えます。よくできたアンプであれば問題ありませんが、低価格帯のアンプでは、このノイズが気になる場合があります。

解決策

アンプのゲインによるノイズを軽減するには、ゲインを正しく設定し、スピーカーを適切なパワーアンプにマッチングさせます(このトピックについては、2部構成のビデオで詳しく説明しています)。アクティブスピーカーの場合、スピーカーにオーディオ信号が送られていないときのノイズの大きさが、製品の設計と使用部品の品質を示します。

配線不良

配線や接続が悪いと、スピーカーにノイズが乗ったり、スピーカーが壊れる原因となります。アナログオーディオ信号は、導電性のワイヤーを介して伝送される交流電気信号です。XLRプラグが接続されると、電気信号は、あるコンポーネントから別のコンポーネントに渡されます。配線に問題があると、ヒスノイズ、ハムノイズ、ポップノイズ、クラックリングなどのノイズがスピーカーに送られます。配線の問題は、不適切な配線、合わないジャックやプラグの使用、ケーブル配線切れや損傷、はんだの緩みなどが原因の可能性があります。

解決策

オーディオシステムの配線の問題を解決するには、スピーカーのノイズを聞きながら、ケーブルを動かします。スピーカーにダメージを与えないよう、低い音量で行ってください。シグナルチェーンの接続ケーブルやプラグ/ジャック接続不良が原因である可能性があります。また、スピーカーに問題がある場合、ユニットを分解し、接続をはんだ付けし直すか、ワイヤーを交換する必要があります。オーディオケーブルの詳細については、こちらのブログ(What are the differences between balanced, unbalanced and loudspeaker cables?)をご覧ください。

グランドループ

グランドループノイズ(50Hzまたは60Hzのハムノイズ)は、特に古い建物に設置されたオーディオシステムでよく見られる問題です。グランドループは、様々なオーディオ機器が異なるACコンセントに接続されている場合に発生します。これらの機器が信号線やケーブルで電気的に接続されている場合、グランドループが発生する危険性があります。どのようなオーディオシステムでも、AC電源の元はすべて共通のアース(地面に対してゼロボルトの電位を意味します)に接続されている必要があります。

例として、異なる接地電位を持つ2つのコンセント(AとB)と、2つのオーディオデバイス(コンセントAに接続されたコンピュータと、コンセントBに接続されたアクティブスピーカー)があると考えます。オーディオケーブルのシールドは通常、コンピューターとスピーカー、両方のアースされたシャーシに接続されているため、コンセントAとBの間のグランドループができます。グランドループは、電源(50または60Hz)の浮遊磁界を拾うアンテナの役割を果たします。この磁場が電磁誘導によってループに電流を誘起し、スピーカーで典型的な50または60 Hzのハム音として聞こえます。

60 Hzハム音の例

解決策

グラウンドループは、スピーカーのハム音として簡単に認識できます。このハム音を除去するには、ACループを断ち切る必要があります。最も簡単な方法は、電源タップ(サージ保護機能付き)やパワーコンディショナーを使用し、すべてのオーディオ機器を単一のACコンセントに接続します。グランド接続を外すことは、グラウンドハム除去のために良いアイデアに思えるかもしれませんが、推奨されません。グランドハムを除去できても、それに伴う感電の危険性があります。すべてのオーディオ機器を1つのコンセントへ接続するのが現実的でない場合、「ハム除去装置」が単独のデバイスとして市販されています。また、多くのダイレクトボックスにも組み込まれています。これらのデバイスは、グランドループを安全に遮断する働きをします。

ACラインノイズ

モーターを搭載した電気機器は、電磁波を発生させ、ハムやノイズとしてスピーカーに現れます(電気ノイズの例)。ミキサーなどの家庭用電化製品が一般的な例です。これらの機器が発するノイズの他に、EMI(電磁波)がオーディオ信号の中にノイズを発生させます。調光器や蛍光灯も、このEMIを放射しています。

電気ノイズの例

解決策

ACラインのハム音は、グランドループと似たような音です。多くの場合、グランドループの解決で、ACラインハムも解消されます。ACラインハムを除去する最も簡単な方法は、このノイズや干渉を発生させるデバイスを外します。オンラインUPS(無停電電源装置)、絶縁変圧器、パワーコンディショナーを使用しても、AC機器の干渉によるハムノイズを効果的に除去できます。

電波障害について

RFI(Radio Frequency Interference)とは、無線周波数帯で発生する電磁波干渉の一種です。現在、ほとんどの無線機器(Bluetoothを含む)は、RFキャリア信号を使用してデータを無線送信しており、環境中に存在するこれらすべてのRF信号は、オーディオシステムのノイズの原因となります。

RFIオーディオの例

解決策

オーディオシステムの近くに置かれたRF機器がワイヤレスでデータを送信している場合、バズやヒスが発生します。簡単な対策としては、ワイヤレス機器をオーディオシステムとスピーカーから離して設置。また、RF干渉が問題となる場合は、RFフィルターを設置します。

コンピュータノイズ

コンピュータの内蔵サウンドカードやマザーボード(スマートフォンやタブレットを含む)は、ノイズの影響を受けます。これらは構造上排除できないEMI(電磁波)の影響を受けやすいのです。また、コンピューターの出力に使用されているDA変換器からもノイズが発生する場合があります。

コンピューターの音声ノイズ例

解決策

コンピュータを使用して音声を出力している場合、ハム、ヒス、その他のノイズが出力信号の一部である可能性があります。サウンドカードをアップグレードするか、別のPCIまたはPCIeサウンドカードをインストールし、このようなノイズを低減または除去できる場合があります。また、高品質の外部オーディオインターフェースの使用により、この問題を解決できる場合があります。

USBケーブルのノイズ

USB(およびHDMI)接続は、ノイズと全く無縁というわけではなく、スピーカーに独自のハムやヒスをもたらすことがあります。これは主に、USBケーブルのシールドに漏れる迷走電流が原因です。

解決策

この問題を解決する一般的な方法として、まず、フェライト・リング(フェライトチョークとも呼ばれる)を使用します。一部のUSBケーブルは、フェライト・リングを内蔵して販売されています。フェライト・リングは、後付け部品として購入できます。この際、部品がケーブルに適合するかを確認する必要があります。

もう1つの方法は、USBオーディオ・インターフェース(またはHDMI接続のオーディオコンポーネント)のシャーシからコンピュータのシャーシまで、USB(HDMI)ケーブルのシールドよりも抵抗の少ないワイヤーを通します(特にスピーカーワイヤーが効果的です)。電気は常に抵抗が最も少ない経路をたどるので、過電流はケーブルのシールドではなく、グラウンドワイヤーを流れます。これは、グランドシャント、または単にシャントとも呼ばれます。

3つ目の方法は、USBノイズフィルターの追加。これは基本的にUSBのアイソレーターで、シールド接続を分離させます。

トランス・ノイズ

トランスは、オーディオシステムの様々なコンポーネントの電源に、物理的な誘導によるハムノイズを発生させます。アクティブスピーカーのアンプがこれに悩まされ、ノイズを発生させます。

トランス・ノイズの例

解決策

トランスのノイズが問題である場合、ノイズはACライン電圧の品質に依存するため、ノイズ量は電圧とともに変化します。グランドループやRF干渉ではないノイズに耳を傾けてください。トランスノイズが持続する場合、電源とオーディオシステムの間にAC電源を設置すると、電源のDC成分を除去し、スピーカーに送られるトランス・ノイズも除去が可能です。

壊れたトランスデューサー(スピーカー)

壊れたトランスデューサーは、ヒスノイズやハムノイズを発生させます。損傷の度合いによっては、トランスデューサーが完全に動作しなくなります。トランスデューサーの最も一般的な損傷は、ボイスコイルの焼損または溶融、またはトランスデューサーのサスペンションとコーンの劣化です。

解決策

ノイズや歪み、周波数特性の変化、その他の音の非線形性を聴き取ります。トランスデューサー全体の交換が最も効果的な対策となります。

まとめ

上記の基本的な方法を用い、オーディオシステム内のすべての不要なノイズを除去できるようになり、また、不可避と思っていたようなノイズも除去できるはずです。一般論として、ノイズゲート(ハードウェアまたはプラグイン)も、不要なノイズの問題に対処するのに役立つかもしれません。ノイズゲートは、デバイスを通過する設定されたスレッショルド以下の音やノイズをブロックします。音が設定されたしきい値よりも大きい場合、ゲートが開き、音が通過します。

多くが演奏前やセッティング中にハムやヒスの問題に直面する可能性が高いです。この記事で紹介した主要な機器を入手し、典型的なノイズのトラブルに対応できるよう、ツールボックスへの常備をお勧めします。ノイズのないリスニングをお楽しみください。

参考資料

本記事で提供しているノイズの例は、すべてpixabay.comのライブラリを使用しています。

この記事はQSCによるWhat Causes Loudspeaker Hum and Hiss and How to eliminate itの翻訳です。

Christophe Anet

Christophe Anetは、電気音響エンジニアであり、QSC Live Soundのシニア・プロダクト・マーケティング・マネージャーです。長年にわたり音響への情熱を持ち、世界中のレコーディングスタジオの設計、音響心理学の講義、レコーディングスタジオのコントロールルームの調整などを行ってきました。ギターを弾いていない時は、スイスアルプスでロッククライミングをするか、大自然の中で水彩画を描いています。

 
 
 
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