ギターのピックアップって、イイですよね。自分で改造する時の圧倒的定番パーツで、効果が分かりやすく、見た目にも影響が大きい。ハムバッカーやシングルに限定したとしても、そのバリエーションは驚くほどに多彩です。
メーカーごとに見てみても、個性豊かなモデルがたくさんあります。
その中で今回はSeymour Duncan(以降、ダンカン)のとあるモデルについて、その歴史も交えつつフォーカスしていこうと思います。
ダンカンの型番表記
ダンカンのハムバッカーを検討したことのあるギタリストなら、SH-OOといった型番がついたモデルを一度は目にしたことがあるんじゃないでしょうか。定番モデルと言われる”59”、”JB”などの現行品には必ずついています。近年発表されたモデルはモデル名がそのまま型番になっていたり、”APH-2”のように例外的な付け方をされたりしているものもありますが、ダンカン黎明期からの伝統的な表記です。
では、現在も販売されているモデルを先頭から順に少し並べてみます。
- SH-1 b/n The 59 Model
- SH-2 b/n Jazz Model
- SH-3 Stag Mag
- SH-4 The JB Model
- SH-5 Duncan Custom
- SH-6 b/n Duncan Distortion
- SH-8 b/n Invader
- SH-10 Full Shred
- SH-11 Custom Custom
となるんですが、なにやらおかしいところに気づきませんでしたか?
まあすぐ気付きますよね。そう、7と9が抜けているんです。飛ばしたことに気付いていない訳でも、日本のアパートが部屋番に4を付けないようにゲン担ぎしている訳でもありません。
ではなぜ、欠番になってしまったのでしょう……?
SH-7とSH-9の存在
まず、この写真を見てください。

ステッカーには”SEY”の文字。ベースプレートの刻印からしても、正真正銘ダンカンです。ちなみにこの時期の表記であれば、”59”であれば”59”、”Duncan Custom”であれば”DC”、”Duncan Distortion”であれば”DD”と、長いモデル名は頭文字をとった表記になります。では、”SEY”は……?
これがSH-7、”Seymourizer II”です。セイモライザーと読みます。なぜIIなのかは不明です。70年代のもので既にIIでした。
抵抗値は12.31kΩ。やや高め、といったところでしょうか。
次はこれです(これは搭載されているものしか見たことがありません。レアすぎるんです)。

特徴的なブレードポールピースに、エスカッション内寸よりも広い横幅。ボビンに刻印されたダンカンのロゴも特徴です。ちなみにこれはFenderより過去に発売されていた、Nokie Edwards(The Ventures Gt.)のシグネチャーに搭載されていました。オリジナルかどうかは不明ですが。
そう、これがSH-9、”Silverbird”です。シルバーバードと読みます。日産の往年の名車を思い出します。あれは青か。
弾かせてもらっただけなので抵抗値などは測れませんでした。とにかくどこまでも澄んだ音がした記憶があります。
転生の成功、不成功
さて、欠番の正体を明かしたわけですが、実はSH-7、今でも違うモデルとして手に入ります。現在のSH-6nがそれにあたります。
SEYMOUR DUNCAN ( セイモアダンカン ) / SH-6n Duncan Distortion Neck Black
元々はDuncan Distortion、Seymourizer IIとして販売していたものの、当時からリアにSH-6、フロントにSH-7というセットを推奨していたようで、古いカタログなんかを見るとそんな文言が書いてあったりします。
そして時は流れ、SH-6側に統合される形でSH-7が消滅、現在に至る訳です。
と、今でも名を変えてその存在を残すSH-7とは対照的に、SH-9は後継機種が存在しないどころかまともな情報も残っていません。少なくとも僕は見たことがありません。モデルとして存在し、所持する人がいるということは確定しているものの、どういったスペックや方向性で作られたピックアップなのか。まるで存在を消し去ろうとしているかの如く、ないモノ扱いをされている。そんな印象があります。学生の頃、個人的にダンカンに問い合わせのメールを送ったことがあるのですが、”We have no information.”とだけ返ってきました。くやしい。
ただ、あの独特な見た目は受け継がれていて、SLUG、El Diabloといったかなり変わり種モデルに採用されています。(どちらもCustom Shop製品)
といった感じで、Seymour Duncanの欠番にフォーカスしてみました。
今は無いモデルの情報を集めながら、当時のことを想像するのはとても楽しいです。
Silverbirdを手に入れたら細かいスペックなどを計測して、また追記したいですね。
そして、つぎにダンカンのピックアップを扱う時は、ステッカーから見る年代区分についてとかやりたいとか思っています。
では!
⇒ SEYMOUR DUNCAN / ギター用PU/ハムバッカー 一覧
ちなみに、ダンカンのピックアップのモデル名で一番好きなのが”Saturday Night Special”
なので、サヨナラのBGMはこれで!
Bay City Rollers - Saturday Night (Audio) - YouTube