『私、リッチー・ブラックモアの熱狂的信者です』
……という人は全国に何万人いるだろうか。私もご多分に漏れず、長年ファンを続けている。
来日したら東京公演はすべて観て(あるいは外に漏れてくる音を聴き)、膨大なライブ盤はほとんど押さえてコレクションし、直筆サインは複数所有。使用されたステージ衣装を壁に飾り、貼りメイプル指板と白ローズのストラトでライブをする。もちろんライブ盤にならってアドリブを決める。間違ってもアルバム通りには弾かない。
■ドイツ製BSMペダルとは
BSMエフェクター(以下ペダル)とはそんなフリークのためにある。間違ってもマイケル・シェンカーファンのギタリストには全く役に立たない。(しかしBSMが本気になったら『ワウペダルの半止めサウンド』のペダルが作れるだろう)
BSMはあるアーティストに特化したペダルの製作をしている。ロリー・ギャラガー、トニー・アイオミ、ブライアン・メイ、ロン・ウッド……。そして圧倒的に商品数が多いのが御大リッチー・ブラックモアの音を追及した製品だ。
しかもディープ・パープル2期に愛用していた英国製ホーンズビー・スキューズ社のトレブルブースターのモディファイ再現からはじまり、1980年代前半にレインボーのステージで目玉がギョロギョロ光っていた当時に使用されたハイパワー・ピックアップ・サウンドに特化した物まで各時代別に再現されており、購入を検討する「信者」を悩ませる。
しかもコントロール系がオン・オフだけという全くシンプルな物がBSMの基本で、つまみがあってもレベルとトーン2つくらいだ。BSMは良質のアンプを使うことにより、さらに威力を発揮する。特に真空管アンプのナチュラルなサウンドに相性が良い。
■ BSMとの出逢い
15年ほど前、ハイエンドな音を求め「故ジョン・ランドグラフの製作していたペダル」など良質なオーバードライブを求めていた私。
だがサウンドハウス様には当時ランドグラフの取り扱いが無かったので、スタッフさんが「マーシャルにはBSMのトレブルブースターがおすすめですよ。特に大音量では相性良いですよ。」と教えてくださった。
という事で「オン・オフ スイッチだけのモデルよりはレベルがあった方が良いかな?」とつまみが1つの【HS CUSTOM】を選んだ。ギターはFENDER JAPANの最高峰と近年評価されている富士弦楽器製造【EXTRAD虎杢メイプルネック、カスタムカラーのスワンプアッシュボディのフルオーダーメイド・ストラトキャスター(ピックアップはLindy Fralin Real54)】に【クランチサウンドが秀逸なマーシャル100W 2203】につないで、レベルをやや上げたらDeep Purpleの名盤『Live In Japan』そのものの音がした。少なくともそう思えた。普通のペダルでは出ない真空管特有の音圧、艶、歪み。さすが使用用途がリッチーのサウンドと言うだけある。
注) 【HS】は【ホーンズビー・スキューズ】の回路を再現したものなのでこの類いの使用アーティストが存在しただろう。なので完全にオリジナル・サウンドとは言い難い。【HS CUSTOM】がブラックモアのトレブルブースターの再現と言える。
【HS CUSTOM】は音色にバリエーションがそれほど無いため、私は次に【ランドグラフ・ダイナミック・オーバードライブ】を入手する。これはこれで素晴らしいペダルだ。14年前に購入し、今でも愛用している。
■ BSMにはまった
ところが最近、リッチーの音を出したくなってきた。御大の音は王道のストラトサウンドと異なり独特だ。【ランドグラフ】では正統派過ぎてリッチーしない。
そこでBSM【RPA Major】をネットで探し、密かに在庫をして有りそうな楽器店に何店も赴き、なんとか入手した。初めて音を出した時に「失敗したかな……?」と思ったが取扱説明書をみてスイート・スポットを発見した。背中に電撃が走る感動を覚えた。
BSM【RPA】は1974年からのAIWAのテープエコーのブースターを使った歪みを再現したペダルだ。左側にレベル、右側にイコライザーがあり、BSM製品の中ではかなり幅広く音が作れる。【RPA Major】はさらに歪みが増す仕様である。
それにしても「RPA」が2009年に発表された時の国内価格は10万2900円であった。ネットで安く探しても現在税込7万円はする。しかも2023年4月現在、新品は『取り寄せ』。それだけの価値はあるのか?
■ BSMの凄いところ
リッチーマニアで最低限の機材でライブしたいとき、BSMは最高だ。先ほども触れたが、アンプはマーシャル or エングル、ギターのピックアップはナチュラルかハイパワーか?AIWAのブースターの代わりは……?こんな悩みは一切不要だ。
■ BSM一台で完結する理由
リッチーを弾いて30年、40年以上のギタリストが描くブラックモアのサウンドイメージからは、ワウペダル・フェイザー・オクターバーなどを必要とする曲があることは事実である。
しかし基本となるのは歪み=マーシャルアンプにAlWAのテープデッキを使用したブースター、そして美しいメロディに華を添えるリバーブの3点が備われば後は「腕」でリッチーにできると思う。リバーブはコンサート会場なら自然に掛かるので実質マーシャルに代表される真空管アンプとブースターがあれば良い。
とはいえギタリストがリッチーの歪みサウンドを作るのはそう容易い事ではない。
ある日、近くの楽器店に訪れたとき、BSMの【RPA Major】を【FENDER BLUS JUNIOR】につなぎ試奏したところ、なんと1977年発表のアルバム『Rainbow On Stage』の音がした。これはレインボー初来日公演を観たというベテラン店員さんも納得して、『グリーン・スリーブス』をつま弾かれた。私は鳥肌が立った。
「ペダルでアンプを歪ませるのは通ではない!」
と言う意見があるのは私も認める。ところがBSMの取扱説明書には「クリーン、もしくはクランチチャンネルをお使いになってください」「ディストーションチャンネル、ハイゲイン・チャンネルは使用しないで下さい」と明記してある。
つまりクリーントーンの綺麗なアンプでブラックモアのサウンドを再現するわけだ。ここから私の一台完結のコメントがわかっていただけるだろうか?
ペダルの内部基盤は残念ながらプラスチックカバーで覆われており、こだわりの厳選パーツが見えない。電池を入れるスペースもあるが、ブティック系エフェクターの宿命でネジ留めのみのため、私は外部電源に頼っている。幸いセンターマイナスなので電源供給は行いやすい。
メーカーによると、パーツを可能な限り選別してハンドメイドで製作しているとの事。それゆえ、コストと時間がかかるという。さらにブラックモアのサウンドに近づけるために切磋琢磨して音を再現するため研究している。こんなペダルメーカー、他には無いのではないか!!
現在、ネットで新品在庫を探したが日本市場では見当たらなかった。
サウンドハウスでも入荷未定の商品がほとんどである。それに加えて世界情勢を考えると、入荷には最低数ヶ月かかる見込みだとのこと。
しかし……。
ライヴでセッティングが10分ほどしかなく、機材をあまり持ち運べないギタリストなら間違いなくBSMを購入しよう!!ギターとBSMで貴方もリッチー・ブラックモア!!
【RPA】【RPA Major】はギターが純粋なストラトキャスターではなくてもシングルコイルピックアップなら、AIWAのデッキをブースターにしたリッチーの音が出てくる可能性はある。
サウンドハウスは新品商品では国内で一番安い。
ここはぜひとも最安価格で手に入れようではないか。
流通量が極端に少ないのでピンときたら迷わず注文してみよう!リッチーフリークなら、後悔しないはずだ。
■ BSMのオススメ機種
『Live in Japan』のマーシャルを真空管でフルアップしたピュアな歪みなら【HS CUSTOM】。
レインボー三頭政治時代(リッチー、ロニー、コージー)のディストーションサウンドなら【RPA】。
より歪ませたサウンドを求めるのなら【RPA Major】がオススメだ。
具体的には『BURN』や『KILL THE KING』のライブバージョンのサウンドイメージだ。
■ リッチーフリーク達!
ギグ 及び レコーディングでの成功を祈る!
できる限り大音量で!!
「HS」にボリュームを付けた物。
1967年から1969年までのホーンズビー・スキューズのトレブルブースターを再現したモデル。アルバム『Fireball』の音に近いサウンドが身上。
1974年から使用されたAIWAのオープン リール テープ デッキを用いたサウンドの再現モデル。
「RPA」よりもさらにゲインアップしたモデル。
BSM ( ビーエスエム ) / RPA Full Quarter Booster
ハイパワーピックアップを使った時期のサウンドを再現したモデル。
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