ファットフィンガー。あまり知られていないギターパーツだがヘッドに振動を与える事により音を変える物だ。私は10年以上前に真空管で有名なグルーブチューブから発売していた頃のファットフィンガーを使用している。表面に『ファットフィンガー』と刻印されていて、裏面にパテントナンバーが記載されている。後面はギターのヘッドを傷付けない様に両方に布が付けられている。表面のフェンダーのロゴが違う以外は質量も同じであろう。重さは約80gだ。

グルーブチューブ時代、商品パッケージの裏に簡単な説明文があった。以下大意。
『これをエレキギターでもアコースティックギターでもベースでも、ギターのヘッドに付ける事によりあなたの求めるサウンドが得られます。』
また『ファットフィンガーはジョ―・サトリアー二またビリ―・シーンなどが使用しており、今日に至っています』と書いてある。
久しぶりに使ってみた。第一印象としてサスティーンが長くなる。クルーソン型 のペグからロトマチックペグに代えたかの様なサスティーンが生まれる。80gとは思えない重さがネックにあった。
話は1980年頃に移る。 当時ギター業界で求められた音はパワフルで、ロングサスティーンな音だった。
但しストラトはシングルコイルの特性で、レスポールほどのパワーがなく、サスティーンも短い。ここでファットフィンガーの件とリッチーブラックモアと共通する事がある。
『1974年製白ローズストラトキャスター』リッチー・ブラックモアの代名詞となるストラト。1980年の来日の際、2ヶ所金属製のパーツの様な物を付けていた。これに関してリッチーブラックモアは「コージーパウエルがこの金属を見て、これは何か目的があるのか、と言うが、これは単に話題づくりの為に付けているのだ。」と語っており、真実はわからない。
ここからは『仮説』である。
リッチー・ブラックモアの金属製のパーツを着けている2ヶ所は私が思うのに、ファットフィンガーのスイートスポットなのである。フェンダーのロゴ『 F』近くは締まった音がする。またヘッドの丸い部分の真ん中辺りにも金属製パーツがついており、ここからは綺麗な広がりある響きが得られるのである。
更なる事に1984年来日公演で一曲だけ使われた1982年製 いわゆる『スミス・ストラト』にもヘッドの丸みの所に同じ様な金属製パーツを着けているのである。『スミス・ストラト』とはダン・スミスと言うフェンダー社の品質向上の為に来た助っ人の事で、この年で『ストラトキャスター』と言う商品名が終わる年に関わった人物だ。ラージヘッドと三点止めの不評から救った、重要な人物のひとりである。ここから敬意を込めて呼ばれている。
これが1980年から四年越しのジョークならひいてしまう、、、と思うが、偶然だろうか?
ギタープレイヤーはひとりひとり求める音は違うのでスイートスポットは他にもあるかも知れない。またリッチー・ブラックモアがサスティーンにこだわった点としてストラトのジョイント部にある。1974年製白ローズはここをしっかり接着剤で固定してある。後にフェンダー社のリッチー・ブラックモアシグネチャーストラトに、レースセンサーがフロントとリア二つ搭載したホワイトのストラトはデタッチャブルネックではなくセットネックであった事からもサスティーンにこだわっていると思える。
サスティーンについて長くなったが他の効果として、コードが綺麗にまとまる。
そして、一番始めに書くべきものだが・・・一番判りやすい点は生音が大きくなる事だ。広がりというよりぎゅつと絞った音になると感じる。
ファットフィンガーはライブで手荒く使うと外れる事がある。自宅かスタジオ向きだ。しかしネジ山は切れにくいので色々な箇所で試したら良い。ギターのヘッドを傷つけない様に。表面の裏は磨耗しやすい。また 私は自前の布を接着剤でつけて保護している。ラッカー塗装やデカールを傷付けない様に。責任は負えない。
ファットフィンガーは決して安い値段ではないが、色々なギターのヘッドに簡単に付ける事が出来るので試して欲しい。

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