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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その132 追悼 坂本龍一特集part1 ~坂本龍一さんのメロディ志向を考える~

2023-04-25

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

地球環境も憂いていた偉大な音楽家、坂本龍一

日本を代表する音楽家、坂本龍一さんが3月28日にお亡くなりになりました。享年71。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
坂本さんは映画「ラストエンペラー」のサウンドトラックでアカデミー賞を受賞するなど、世界的な音楽家として多くの作品を残しました。
テクノポップの急先鋒であったYMO、イエロー・マジック・オーケストラではシンセサイザーを担当し、シンササイザーの使い手としても知られていました。
また音楽活動だけに留まらず、地球環境に目を向けた活動でも多くの功績を残しましています。
その視点の先に何があったのかは分かりませんが、もっと長生きをして我々に坂本流の音楽を届けて欲しいと願っていました。本当に残念でなりません。

坂本さんを語る時、YMOや戦場のメリークリスマス、晩年のピアノソロなどがテーマになりますが、今回の鍵盤狂漂流記では少し異なった視点から坂本龍一さんを偲んでみたいと考えています。
その視点とは坂本さんの鍵盤ソロにおけるメロディ作りの素晴らしさです。この話は曲作りにも関わってきますが、坂本さんの紡ぎ出すメロディは総じてポップで覚えやすく、親しみやすいという特性を有していると私は考えています。

YMO前夜の坂本龍一

坂本さんはYMOを結成する以前に南佳孝さんや高橋幸宏さん、山下達郎さんなどのレコーディングに参加し、アレンジや演奏はたまた作曲も担当しています。
坂本さんは楽曲中にギターソロが中心だったポップスの間奏において当時は少なかったフェンダーローズピアノやシンセサイザーのソロを弾いています。
そのソロが素晴らしいのです。セッションの流れの中でのアドリブなのか、それともあらかじめ考えていたソロなのか?今となっては聞く術もありませんが、坂本さんの紡ぎ出すソロが創造的でメロディが美しいのです。
坂本さんは稀代のメロディメーカーであり、アレンジャーであったのだと私は勝手に想像しています。
その素晴らしい坂本さんのソロをご紹介していきます。先ずは南佳孝さんのアルバムから…。

■ アルバム:南佳孝 『サウス・オブ・ザ・ボーダー』(1978年)

私が坂本龍一さんを意識したのは1978年リリースの南佳孝さんのアルバム「サウス・オブ・ザ・ボーダー」。
ボサノバやサンバを基調にした楽曲が並ぶ。坂本龍一さんは全曲のアレンジを担当している。坂本さんはコルグのPS-3100というポリフォニックシンセサイザーを使い、ラテンのキモであるブラスアンサンブルをこのポリシンセで再現している。よく聞くと本物のブラスでないことは分かるのだが、78年当時にポリシンセを使ってブラスを再現するなど、誰も考えなかった事。しかも表現力がそれ程巧みでない、このポリシンセがバンドのオケに見事に溶け込んでいる。坂本さんのアレンジの妙である。
このアルバムには後のYMOメンバーである細野晴臣さんや高橋幸宏さんも参加している。

推薦曲:「夜間飛行」

冒頭からアープオデッセイ・シンセサイザーのフルート系のメロディに誘われ幕を開ける。坂本龍一さんはフェンダーローズ・エレクトリックピアノもプレイ。ローズのオブリガートのプレイや1コーラス終了後のブロック奏など、ローズのプレイまでもメロディアス。
この楽曲ではソロを含めアープオデッセイがオブリや裏メロなどでも大活躍している。特に最後に登場するローズのブロック奏の上に乗るオデッセイのソロは秀逸!メロディラインの素晴らしさは元より、メロディの展開されていく様は必聴に値する。多分、これは坂本さんが書き譜を持参し、現場でプレイしたものと思われるが…真相は?

■ アルバム:高橋幸宏『サラヴァ!』(1978年)

高橋幸宏さんの当時のヨーロッパ志向を前面出した78年リリースのソロアルバム。発売されたのは「サウス・オブ・ザ・ボーダー」と同年の78年。
このアルバムでも坂本龍一さんがアレンジを手掛けている。
坂本龍一さんの使用機材はコルグPS-3100、アープオデッセイ、ハモンドオルガン、フェンダーローズピアノ、アコースティックピアノで南佳孝氏のアルバム「サウス・オブ・ザ・ボーダー」とほぼ同じ。シンセサイザーのソロは封印しているがハモンドオルガンによる素晴らしいソロが聴ける。
『サラヴァ!』『サウス・オブ・ザ・ボーダー』両アルバムリリース時に坂本龍一さんは26歳!天賦の才のある方だったと思わずにはいられない。

推薦曲:「ラ・ローザ」

坂本龍一さんは芸大では作曲を専攻しているため、ハモンドオルガンはあまり弾いていないとコメントしている。浅川マキさんのセッションでハモンドを弾いたところ、周囲のウケが良かったのでハモンドの演奏も自身のフィールドに加えたようだ。とはいえこの楽曲におけるハモンドソロは門外漢とは思えないソロを披露している。
音色的にはブラジルのオルガニスト、ワルター・ワンダレーを思わせるソロでレスリースピーカーを通した王道のソロを展開している。アウトロ部ではギタリスト松木恒秀さんとの掛合い的シチュエーションも耳にすることができる。
元々、メロディに対するセンスの良さが坂本さんにはあり、それを表現できる技術も感覚も備えていたのだろう。多分、書き譜と思われるがソロにおけるメロディの展開力には脱帽するばかりだ。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:坂本龍一、南佳孝、高橋幸宏
  • アルバム:「サウス・オブ・ザ・ボーダー」「サラヴァ!」
  • 曲名:「夜間飛行」「ラ・ローザ」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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