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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ヤマハDX7~DX7Ⅱ編~音楽を彩った電子鍵盤とシンセ名盤の数々~ その35

2021-05-01

テーマ:sound&person

今回もシンセサイザーの大傑作、ヤマハDX7がテーマです。私の取材記を交え、DX7を製作した方や名盤をご紹介します。

■ シンセサイザーの有史に名を刻むヤマハDX7

ヤマハDX7は1983年に発売されたシンセサイザーの傑作です。世界中のミュージシャンがDX7を導入しました。DXの新しい音は新しい音楽を生み、音楽の世界を塗り替えました。
プロとアマチュアの垣根も取り払いました。25万円程でプロ仕様の音を作ることができました。これまでは100万円以上の投資がなければ出なかったプロの音がアマチュアにも手が届く様になりました。CDで聴けるマイケル・ジャクソンやマドンナ、チック・コリアと同じ音をアマチュアでも出せるようになったのです。

私はシンセサイザーの番組「世界の音を変えた街」を制作した際、浜松市のヤマハを訪ねました。そこで我々取材チームはDX7の開発者にお目にかかりました。開発者であるN 氏は音楽家というよりは学者肌の方。楽器は弾かず、好きな音楽はポリスとお話しされたのが印象に残っています。この方が世界の音を変えた人なのかと感慨深い想いでした。

■ 大ヒットシンセサイザー、ヤマハDX7の光と影

一方、大ヒットシンセサイザーDX7といえども万能ではありません。DXにも不得意な音がありました。アナログシンセを使ったことのある方は分かると思います。アナログシンセで作るパッドやストリングスなど、オケの背景に置いて厚みを出す、滲むような音を作ることができませんでした。従来のストリングス的な使い方をした場合、DXは音像がクリヤー過ぎてオケを包み込むような効果は期待できません。また、エレピの音は得意でしたが、アコースティックピアノの音も単体では作る事ができませんでした。カシオペアの向谷実氏がDX7の音源を8台集めたTX816という音源モジュールで生ピの音をだしていましたが、生ピとはまた違ったテイストでした。

もう一つ、DX7には大きな課題がありました。それは音を作るシンセサイザーにあって、音作りが難しかったことです。アナログシンセではどのツマミを回せば、どういう音になるかを使い手は理解していました。しかし、FM音源はアナログとは全く違うシステムでした。
DX7は6オペレータ、32アルゴリズムというスペック。32あるアルゴリズムの中からイメージする音に近いアルゴリズムを選択し、各オペレータのレベル値を入力する行為はアナログに慣れたユーザーには大きな負担となりました。また、数値入力するカテゴリーが多く、それが階層になっていた為、深い階層まで遡り、入力を重ねる行為に私は閉口しました(逆にそこまで細かな入力要素が精度の高い音を作り出したという側面はあります)。直観的な音作りができなくなってしまったのです。

■ DX7の音色プログラムチャート

上記の映像データはDX7の音色プログラムチャートです。多くの数値が確認できると思います。1つ1つを呼び出し、小さなLEDの液晶を見ながら入力する作業はそれなりに時間が必要でした。システムに精通しないと音をイメージして作り出すことはできませんでした。
そこにシンセマニュピレーターというDX7の音を作る専門家が台頭します。DX7の音色が作られ、ROMカートリッジに入って売買されるようになりました。坂本龍一氏、向谷実氏、井上鑑氏によるROMなど、多くの音色ROMカートリッジが販売されました。
私もDX7のROMカートリッジを購入した1人です。しかし、音色の中で自分のバンドに使える音は僅かしかありませんでした。その中の1つにアナログブラス音と違ったFM系のブラス音があり、ザラザラとしたホーンのニュアンスが見事に表現されていました。ある意味、デジタル音源はクセの強い音色だったのかもしれませんし、その辺りに優位性を感じたミュージシャンも多かった筈です。
私はDXエレピを好んで使いました。オペレータの変調役であるモジュレータのレベルを変えることでローズピアノの歪み具合のニュアンスをシミュレートでき、複数のDXエレピの音をメモリーした記憶があります。

その後、ヤハマは1986年にDX7が2台入ったDX7Ⅱを発売。このシンセも世界のベストセラーになりました。私が購入したシンセサイザーでは息の長い楽器で大変重宝しました。殆どの音をエレピとして使用していました。DX7ⅡはDX7、2台分の音源の為、エレピ等は重ねる事でコーラス効果も出て、音に深みが増しました。また、鍵盤上で音色がスプリット可能でシンセサイザーとしての完成度は桁違いに高くなりました。

DX7II-FD

■ 推薦アルバム:ジャマイカ・ボーイズ /『J-BOYS』(1989年)

ニューヨークのクイーンズ、ジャマイカ地区を拠点とするファンク・トリオ。ベーシストのマーカス・ミラーが中心となり、ドラマーのレニー・ホワイト、キーボードのバーナード・ライトらにより結成された。バーナード・ライトは渡辺貞夫の97年のアルバム、『ゴー・ストレート・アヘッド・アンド・メイク・ア・レフト』にも参加しているニューヨーク出身のキーボーディスト。アルバム全編にわたり、バーナード・ライトが弾くDXエレピの音が大きくフューチャーされている。音色はFM音源に間違いないが、89年のアルバムの為、DX7のバージョンアップ版であるDX7ⅡもしくはTX816などの音源モジュールを使用している可能性がある。

推薦曲:「YOU GAT A FRIEND」

DXエレピが楽曲全体を覆い、これまでにはない「YOU GAT A FRIEND」のアレンジになっている。ファンク色が強く、テーマとなるリフがそれを後押ししている。バーナード・ライトが曲間で入れるフィルインが素敵です。ファンクとアタック強めのFM音源のマッチングが秀逸。


今回取り上げたシンセサイザー、ミュージシャン、推薦アルバム、推薦曲

  • 使用楽器:ヤマハDX7、ヤマハDX7Ⅱ
  • ミュージシャン:ジャマイカ・ボーイズ 
  • アルバム:J-BOYS
  • 推薦曲:YOU GAT A FRIEND

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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音楽ライター / シンセ鍵盤卿

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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