
<NEUMANNの密閉型ヘッドホンNDH 20>
KH 80 DSPやNDH 30など、近年はモニター機器を積極的にリリースするNEUMANN(ノイマン)。最初のモニター機器は2011年に発売されたKH 120ですが、続いて注目を集めたのが2019年発売の密閉型ヘッドホンNDH 20です。
別の記事で最新の開放型ヘッドホンNDH 30をレビューしていますが、この記事では密閉型のNDH 20について紹介したいと思います。
NEUMANN ( ノイマン ) / NDH 20 スタジオモニターヘッドホン
密閉型ならではのパワフルなサウンド

<密閉型のNDH 20(手前)と開放型のNDH 30(奥)>
最初の印象は非常に元気の良い音という印象でした。筆者のサイトでは「ベニヤ板のような音」と表現したのですが、低域から高域までピークやディップがなくフラットかつ、押し出し感の強いパワフルな音が特徴です。
兄弟機種の開放型NDH 30と比較するとサウンドの傾向は似ているところもありますが、異なるサウンドと言って良いと思います。とはいっても、コンセプトは同じものを感じる音であり、両機種の音が異なる最大の要素は密閉型と開放型という構造の違いであることは言うまでもありません。

<NDH 20のユニットと交換可能なパッド部>
5Hz~30kHzという可聴帯域を超えるワイドな周波数特性を持ち、聴いてみるとスペック通りのワイドレンジな印象です。特にタイトで輪郭のある低域は特徴的で、スピーカーが大きな音で鳴らせず、低域の確認に苦慮している人には優れたソリューションになると思います。
ワイドでフラットな特性を生み出すドライバーは「38mm・ネオジム磁石ダイナミックドライバー」とされており、ゼンハイザーが特許を持つDoufol膜という2枚構造の膜が採用されているそうです。
ヘッドホンの方向性としてはやや元気な音ではありますので、落ち着いた音楽よりはロックやポップスなどの元気な音楽に向いている印象があります。クラシックやジャズ等では楽器の中低域の響きがややワイルドに聞こえることがあります。一方で、ロックやポップスでは持ち前のパワフルさによってモチベーションがあがる音を聞かせてくれますので、アグレッシブな音作りができそうです。オーディオリスニングというよりはモニター的サウンドであり、音作りできるヘッドホンなので、アレンジ用途に向いていると感じられました。
堅牢かつ利便性の高いハードウェア

<カッチリとした感触が心地よいヘッドバンド部>
ドイツメーカーの音響機器は音だけでなく、ネジ部やメタル部分、組み合わせ部分や可動部分など、メカニカルな部分がとてもカッチリとしていて信頼性が高い印象があります。NEUMANNもその印象に違わぬメーカーですが、NDH 20も同じく、ハードウェアがとてもカッチリとしていて信頼性を感じる製品です。

<約90度折り畳める>
ヘッドバンド部は伸縮に対して1クリックずつカッチリとした感触があり、内部構造がしっかりしていることを伺わせます。ユニット部は折りたたみ式になっていて、ヘッドバンド末端で約90度、左右ともに折れ曲がります。開ききったポジションでロックがかかる機構を備えており、同じくしっかりロックした感触を得られます。
これらのメカニカル部分はすべて専用の特殊なネジで固定され、樹脂製のヘッドホンとは一線を画す高級感を漂わせています。側面のNEUMANNロゴもステッカーやシルク印刷ではなく、彫り込まれた「消えないNEUMANNロゴ」になっています。

<専用のケーブル>
ケーブルも専用設計で、ヘッドホンユニットへの差し込み部は回し込むことでロックがかかり、抜ける心配がありません。プラグは2.5mmステレオミニプラグに本機専用設計の3.5mm変換アダプターが装着されています。NDH 20ではNEUMANNオレンジが差し色として使われているのですが、変換アダプターやプラグ根本部分にもオレンジが輝き、隅々まで手を抜かないNEUMANNのこだわりが垣間見えます。
NDH 20は1年以上使用し、様々な現場に持ち込んでいますが、今でも買ったときと同じように安心して使用できます。特にヘッドバンドやユニット部は堅牢で、傷はつきましたが故障する気配は全くありません。むしろ現場を渡り歩いた貫禄のようなものをヘッドホンから感じるようになってきました。
自宅でレコーディングとミキシングを行うミュージシャンに
スペックや音質、使い勝手等を踏まえて考えると、自宅で録音もミキシングも行うミュージシャン、アレンジャーに向いていると感じます。
NDH 20は密閉型であるため、「聞き疲れしない」「自然なサウンド」といったポイントにおいては開放型のNDH 30に軍配があがります。従って、ミキシングのみの用途で考えている方はNDH 30を中心に検討した方が良いと思います。
しかし、開放型はレコーディングには使用できませんので、ひとつのヘッドホンをレコーディングにもミキシングにも使用する場合、選択肢は密閉型に絞られます。NDH 20は密閉型の中でも特に遮音性が高く音漏れが少ないため、レコーディングには最適。パワフルでモチベーションの上がるサウンドも相まって、ご自宅でレコーディング、編曲などを行うミュージシャンの方にはとても良いヘッドホンだと思います。

<大型ではあるのでサイズ感はよくチェックしたい>
欠点を挙げるとすれば、遮音性能は高いのですが390gとやや重く、大型に分類されるヘッドホンであることでしょう。通勤通学のiPhoneリスニング用途にはあまり向いていないかもしれません。
以上、ご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。
先述の通りNDH 20を1年以上愛用していますが、段々と気に入ってきたというのが本当のところです。当初元気が良すぎる感じもありましたが、エージングによって落ち着き、堅牢さが生み出す安心感によって、後になってから「やっぱりいいかも」と思うようになってきました。NEUMANNマイクにも同じような傾向があり、リリースされた作品を聴いて「NEUMANNやっぱりいいな」と思うことがよくあります。-NEUMANNはヘッドホンもNEUMANNだった-そう思わせてくれるハイエンドヘッドホンです。機会があれば開放型のNDH 30共々チェックしてみて下さい。
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
投稿についての詳細はこちら