歴史を振り返るのは面白い。特に自分の人生において衝撃的な展開が続いた30年前、サウンドハウスが産声をあげる直前のハプニングの連続には、今もって驚くことばかりだ。まさに「信じられな~い!」ことが続くことがある。その内容を信じるか信じないかは、その後の結果がすべてを証明するはずだ。
1992年の1月、生まれも育ちも東京の自分が、成田という縁もゆかりもない地に行くことを決めた。そのきっかけは、成田に行くという幻を見たからだった。霊の目が研ぎ澄まされてくると、そんなビジョンを見る時がある。これを天の導きというのだろうか。それ以外に自分が成田に向かった理由は何一つない。「成田に行かなければならない」、という思いだけが心にあった。
とはいえ、何かあてがあった訳でもない。当時、無職の自分はゴールデンレトリバー犬、ミッチー君と一緒に古びたホンダアコードにギター1本を乗せて、躊躇することなく見知らぬ成田の町へと車を走らせたことを覚えている。当初の目的は、成田で高野山のような祈りの山を探すことにあった。なぜか、自分が安堵できる場所は山にあると思い、祈りの山を探し求めてあちらこちらをミッチー君と一緒に巡り回ったのだ。そして数日もしてわかったことは、成田には山がないということ。何ということだ!当時はGoogleマップもなく、地理感だけで動いていたので仕方ない。百聞は一見に如かず。
山の代わりに見つけた場所は、成田市のはずれ、印旛沼沿いにある下総松崎の奥、田んぼに囲まれた田舎にある成田温泉と呼ばれた天然温泉だった。と言っても、その成田温泉は廃業寸前であり、ボロボロのひどい状態だった。浴槽も4-5人が一緒に入れる程度の大きさであり、1950年代に建てられたということで、まさに崩壊寸前の建物であった。ところがその後、調べてみると、その成田温泉が雑誌などで騒がれ、全国的に脚光を浴びた時があったという情報を得た!こんなボロ温泉が注目を浴びることなどあるはずがない?!と思いつつも、成田という未知の町へのボルテージが上がっていく自分がいた。(第2話につづく)

成田温泉周辺の田園風景