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FENDER STRATOCASTER Part7 1967年製-1968年製

2022-03-08

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 楽器, 音楽全般

■ FENDER STRATCASTER 1967年製

今から55年前。この時期のストラトは生産が一番落ち込んでいた年であった。「もしかして生産終了か?」とまで噂されたほどだ。
しかし、この年にオプションとして『貼りメイプル指板』を発表した。この指板はほぼローズ指板と同じ製造過程で製造された。1971年頃に廃止となる。

サウンドは、メイプル指板と同じ、メイプル材が、お互い反発するからか、芯のあるワイルドな音。シングルコイルの強さと、薄くて細いネック材がメイプル指板と反発して、軽やかにクランチする。ぎゅっと絞り出す音色。トレブルでバイト感がある。取り敢えず、セッションしたい時に一本あると有り難みがあるのではないか?他の奏者よりサウンドに埋もれないはずだ。

無骨で男らしいロックやギターが主体のハードロック、に向くと思う。反面、弾き方によっては他の機種よりデリケートでもあるし、よりロックらしく粘っている。音のイメージが掴みやすい。またトレブルに対応しやすく噛み付くようなジミヘンサウンドにも適うスティーヴィー・レイ・ボーンのような豪快にスクイーズする直球一本サウンドにも向くだろう。歪ませればそれに答えてくれる。プレイヤーとの相性が良かったらこれ程、値千金のギターはない。勿論天然木材の為、個体差が有るが『当たりを見つけやすい』この一言に尽きる。

この年代のストラトと思えばジミヘンは別格であるが、この仕様のストラトを弾いていたYJMさんなどが印象深い。照明でスポットライトをボティに浴びて傷だらけのボディだった貼りメイプル、ストラト好きなロックギタリストなら。これだけは『MADE IN USAに敵わない』。一度はおたのしみあれ。

【貼りメイプル指板】 貼りメイプル仕様を撮ってみたものの、難しかった。サイド面からはフレットのタングが貼りメイプルネックの接着面と同じ厚さで、分かりやすい。良ければ『買い』かも知れない。ドット右側の貼りメイプル指板とメイプルネックの厚みとの接着が分かりやすい。

○ ネック

ラージヘッドに移行した当初、ルックスが悪い、品がないと不遇の扱いのストラトキャスターであった。

1970年代中期以降からストラトを使い始めたギタリスト、つまりラージ・ヘッドを後追いで体験したギタリストなら、それほど違和感がないかと思う。私もそうだ。しかし50年代から70年代に青春を謳歌したプレイヤーにはラージヘッドはどの様に映ったのだろうか。

前回トレモロ付きテレキャスターデラックの写真を添えた訳は、ストラト同様ラージヘッドだったから。その仕様をさらに突き詰めると、パワーにおいてはフェンダー製でも強力な部類のハムバッカー2個搭載、それに最強なトレモロユニット。
流石にここまでGibson社に対抗を強めるとユーザーの方が、ひいてしまった。テレキャスター・デラックスは1981年に生産が終了している。

実はこのラージヘッドの表記、デカールが曲者であった、パテントナンバーについて、米国製ストラトと日本製フェンダー、ラージヘッドの生産された個体のデカールに米国製と日本製に微妙な違いがある。

それは・・・。

米国製フェンダーには下記パテント番号が2ヶ所記されているが、フェンダー・ジャパンにはパテントナンバーが一切無い!この事実を既に知っているプレイヤーは、中途半端なヘッドと感じている。

【日本製ラージヘッド】
米国製にはパテントナンバーが2つある。日本製は2つともない。

特許ナンバーなので日本製には無理か、と思うが、何か腑に落ちない。ラーメンで言うと胡椒がないのだ。ちなみに特許番号は2741146と3143028である。前者はシンクロナイズドトレモロ、後者はアジャスタブル・ネックについてだ。

『FENDER』の6文字はトランジション・ロゴのまま。ペグはクルーソンのペグが生産中止となり、代わってレース&オームステッド社とのコラボで作られた。厳密に言うと68年からの仕様だが。『F-KEY』を開発し、搭載している。(ペグの写真参照)フェンダーサイドではフォレスト・ホワイトが開発に参与した。

【FーKey】チューニングの際、若干回しにくいと言うか、頼りない感じがする。私がクルーソンヘグの方に使いなれているからか?

この工場の恐るべし点は、フェンダー社の工場のすぐ裏にあった事だ。よってレオの行きつけの会社であったはず。この事情により、レオ達のアイデアがすぐさま試作品として反映されただろう。そのため、レオからは完璧なパーツを作るよう厳しい注文があった事が容易に察する。

取り敢えず、弦巻きはフェンダー社とレース&オームステッド社共同で生産した。
後に西ドイツ・シャラー製のF-KEYに改良されている。

ストリング・ガイドはひとつ。

F-KEYのネック・ドットはパーロイド・ドット。くすんだ粘土色のクレイ・ドットより、光沢がある。

○ ボディ・ピックガード

11点止め塩化ビニール製三層構造。以前のグリーンガードにみられる様なミントグリーンの退色ではなく、原則、退色していない白色だ。

○ トレモロ・アーム

60年代後半、ストラトに付属したアームの多くはストレートか微妙な曲がり方。これでは手のひらに収めるのが難しく、微妙なビブラートが掛けにくいと思う。ジェフ・ベックは短めのアームを用いている、それに更に角度のついたビブラートアームは右手の中でも使用可能であり、最高の音程を醸し出す。微妙な音の揺れを弾き出す。余談であるがジェフは一瞬にして日本の箸を持ったというエピソードがある。クルマなどの改良もお手のものなのだからギターなら容易く出来たのでは?

コンデンサーなどの細かいパーツもCBSの社員がノウハウも知らないまま大量に仕入れた。全く細かい仕様を考えずこだわりがない。所謂、赤いセラミック製の安いパーツ。黄色いチューブが絶縁のために使われた。

■ FENDER STRATCASTER 1968年製

○ ネック

FENDERラージ・ヘッドが黒文字で、縁取が金色になり、66年からの地味な印象の金色から黒文字になった。ひときわ目立つようになり通称CBSロゴと言われる。71年までのデザインだ。

私はF-KEYを搭載したラージヘッドのストラトを所有しているが、重いロトマチックペグより軽く、コキコキとした感があり、滑らかではない。ちょっと頼りない。しかし歯車の細かい噛み合わせがよく効き、微妙なチューニングは出来る感じはする。

また、あまり知られていない事実だが、ナットの素材はカスタム・ショップ製にも、プラスチックの素材が使われている。私自身も所有ストラトで確認した。(2000年代製現在)

○ シリアルナンバー

ネック・スタンプ・ストラトモデルの番号は13から22に変更された。例えば【22SEP68】だと『ストラトキャスター・68年9月通常の幅のネック』と判断する。

○ ボディ

かなり浅いコンター加工である。50年代の2/3程の削り方。ほとんど削っていない。
塗装も大量生産らしくよりプラスチックっぽい光沢があり、現代においては塗装が頼りない感がある。

ラッカ―フィニッシュは渋く、艶があり、傷がついてもそれは味として受け止められる。昨今のギターの多くはわざと傷をつけたり、塗装を剥がすなど施した個体が何と多い事か。

しかも使用感を増すために手間がかかっているので値段も高い。これは流行で傷だらけの新品を好む方向でありつつ市場では、ヴィンテージ市場は大きな痛手になる。好みなので優劣を競うことは無意味だが、現代においては使用感たっぷりのギターが好まれる。

またエレキギターについて知らない人の多くは、ボディのカラフルな色を見て、「え~っ!これって木材で出来ているの?」とよく言われる。特に女の子に。

○ 電装系

フェンダー社らしく、ムスタングのピックガードの裏面を流用した。ピックガードが上から白、黒とムスタングに使用していた表面パールホワイトの三層構造。白や黒は塩化ビニール製でパールホワイトはセルロイドだ。

今まではノイズ対策にピックガードの裏面に全面シールド加工までするが、この年はコントロール系の狭い範囲内のみのでストラト、他機種の生産が多様化し、そこまでシールドディングに生産が追い付けなかったと思う。

また60年代後半はアメリカ合衆国も政治的問題があり、国内でも暗い影を落とした時代だ。

しかし、しかしだ→翌年1969年、見事にストラトが爆発的にカムバックする。←長いトンネルから漸く脱け出せる事になるのだ!!

お楽しみに♪


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 

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