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FENDER STRATOCASTER 1954-1982 Part5

2022-01-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

■ FENDER STRATOCASTER 1964年時代背景

昭和で言うと39年。東京オリンピック開催など高度成長真っ只中の日本。しかしその当時、エレキギターを弾く事はまず無理で、フォークギターを持つのが精一杯の時代であった。エレキは不良と呼ばれた時代だ。当時の学生のステレオタイプ・イメージは、地方から大学に通うために上京した学生。畳の四畳半アパートに住んでいた感じ。部屋でギターをポロンと響かせるのが最先端だったと想像する。

日本を代表するエレキ・ギタリストは故寺内タケシや、ベーシックなコードしか弾かなかったが存在感のあった加山雄三が映画の中で弾いていた位だ。加山はもう一度人生をやり直すならエレキギターをマスターしたいと言っている。

テケテケ♪のベンチャーズが日本にエレキ文化を浸透させた張本人達ではあるがブームはいつの間にか終った。
Martin、Gibson、Fenderを弾く事などまず無理で、楽器店のショーウィンドウでしか生で見ることが出来なかった。よって、ほとんどのエレキギタリストは国産品を使用していた。

日本では1980年前後、ストラトキャスターを手に入れるために、会社員なら毎月の給料を貯金して、なんとか購入出来た。FENDER STRATOCASTER当時の値段はトレモロ付き250000円。トレモロ無しで235000円、レフティ275000円。しかし現在の中古市場では歴代のストラトの中で、一番安い金額で取引されている。

ではあらためて【1964年製について】
サンバーストは赤がはっきりと残っており、正しく3トーン・サンバーストだ、あまりにもはっきりと幅の均等な三色が重なりあった個体は『ターゲット・バースト』と呼ばれる。

○ ボディ・ネック

形は63年製とほとんど変化がないが、コンターは少なくなった。70年代末期~80年代初頭のコンターに比べればまだ心地よく弾ける様に削ってある。65年前期までは、まだクラフツマン・シップがあった。

後期になると、Fenderのロゴがスパゲッティロゴから変更になる。いわゆる『トランジション・ロゴ』に変更になる。スパゲッテイロゴからの転向で激動の時代にふさわしい『トランジション・ロゴ』。これもまたCOOL。

○ フェンダーのキャッチコピーについて

『いつも、フェンダーギターは一緒』『You wan t否定形 part with yours either』などのキャッチコピーとイメージ写真。戦闘機に乗るパイロットは肩からストラトをしょっている。親にギターを取り上げられそうで、必死で引っ張る女の子。サーフィンをしながらギターを弾く青年。バスに乗る時、ギターを背負って乗車する少年。とにかくユーモラスでファッショナブルな心温まる写真。フェンダーは、ビジュアル重視なカタログでも宣伝活動が上手かった。

ちなみに『フェンダー・ジャパン』のはじめてのパンフレットは、かなり大きな縦に長く黄色い。表紙が、この宣伝用写真のスケートボードに乗っている少年が使われている。

※米雑誌『ギタープレイヤー』広告より。一ページをフルに使い、随分昔に広告を載せていた。

○ ヘッド ・ ネック

スモールヘッドのネックの変化は殆ど無い。真っ黒い指板が蒲鉾みたいにヘッドに盛っていたスラブ指板とは全く違う。しかしラウンド指板も、良い音を出していた。VINTAGE専門楽器店でラウンド指板のオールドを弾くお客さんがいて、その艶やかな音色と音圧。凄かった。そのサウンドは今でも耳に残っている。
ネックの『トランジション・ロゴ』で見た目が大きくかわる。またパテントも2つから4個に変わる。

○ ボディ

ノイズ対策のシールドは通常通り。コンデンサーもくすんだ赤色の円形のセラミック仕様。塗装の黄色は着色が厚く、木目が見えない。ただあまりにも酷い失敗になると、その上からオペイク(塗りつぶし)でカスタム・カラーを吹いたりしていた。

5年前に都内某楽器店のギターコーナーで下地が3トーン・サンバーストの、オペイクのストラトキャスターを見る事が出来た。カスタム・ショップ製のギターだが、当時の失敗作を模倣していた。再現する手間がかかるのか、価格はかなり高い・・・複雑な心境。

ピックアップは1954年からこの年まではゴムチューブによって支えられている。これは劣化が逃がれられない。よってスプリングに交換されている。
私の愛機は楽器店様のご意向でゴムで支えられている。本当はスプリングにしたいのだが、ピックガードを外すのは、その店員様の仕事なので、それに従ってゴムを使用している。ゴム・チューブかスプリングかは個人的にコンデンサーほど、こだわりがない。

■ FENDER STRATOCASTER 1965年製

1965年・・・工場に来た従業員は唖然とした、そう、CBSに買収された事を初めて知ったのだ。

これからは『夢を売る仕事』などと言わないで沢山作って利益を上げようと。お金の計算ばかり考えている上司が、指揮を取った。 ピックアップのワイヤーを少しでも、安い物を大量に調達する、またある上司はギターを担当する前は家電販売をやっていた、楽器の本質を知らない社員などの楽器生産体制は無茶苦茶であった。
挙げ句の果てには、今までより広大な敷地に新工場を作り、とにかく企画・会議、材料の大量調達、大量生産と、儲ける事に重点を置いた会社経営に乗り出した。

買収されたストレスを上手く解消できたオリジナル・フェンダー社員は、まずいなかっただろう。

しかし65年中頃まではまだ生産工具や工程が以前とあまり変わっていなかったので、ストラトの品質は大きく落ちてはいない。重さも3500g近辺で落ち着いており、買収という悪夢を強調しなければ、まだまだ実戦で使える機種だったといえる。

○ ネック

クレイドットからパーロイドドットに変更がある。12フレットのドット間隔は狭い。
ヘッドの『コンターボディのデカール』 は、上下左右ルーズな張り方をしている物もある。

ネックスタンプはほぼ同じで、ストラトコードが『2』から『13』になったのみで大きな変更はない。後の『月』『年』、ネックの幅『A~D』は変わらない。例えば『13AUG65B』なら『ストラトの65年8月製作。ナット幅は通常のネック』となる。
また一時期、往年の細いフレットから、高さは定かではないが幅の広いフレットを打った個体もある。

○ ボディ

ネック・ジョイント部の塗装は63年から金属ではさんで塗装したため、ジョイント部分の左半分は塗装されていない個体がほとんど。。
コンターカットもボディは裏側が広範囲に加工されているが浅い。

○ ネック

1966年から公にラージヘッドになる前 年製造の65年仕様でも、ラージ・ヘッドは存在する。

何故、ラージ・ヘッドになったか? 短い答えだが。【大きい方が目立つから。】

さて、次回からは、ノスタルジックに対抗する『CBS FENDER 限りなき戦い』がはじまる。
次回もお楽しみに♪


コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 

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