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FENDER STRATOCASTER 1954ー1982 Part4

2022-01-31

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

■ FENDER STRATOCASTER 1961年製

1961年ストラトキャスターは 1960年からの仕様変更はほとんど無い。

○ ボディ・ネック

コンターは浅くもなく、深くもない。裏面の加工も前年と比べてほぼ同様であり、体に痛い箇所はなく、快適に演奏できるはずだ。ボディの表から見て左のホーンはスマートな傾向が見受けられる。

ボディのアルダー材は、重さのばらつきが少なく、平均3300gの個体が多い。小柄な方でもあまり負担がかからないはずだ。

木材の質が良くて軽い個体は、倍音が豊富で生鳴りも良い。欠点としてはパンチ力やサスティーンに欠けるので大規模会場ライブには向かないかも。
これに関しては重い個体の方が適している。しかし仕事の殆どが大きな会場のギタリストが現在、日本に100人もいるだろうか?やはり軽くて鳴るのが現在の需要だ。
従って、3キロ+数百gの軽くてよく鳴るストラトは自宅用か小さなライブハウス向きだと思う。会社から帰宅して、つま弾くには心地良いはずだ。さらにネックが軽いと、倍音が豊かになる傾向がある。

自宅で真空管アンプの、パワーダウンスイッチを使用し、1W以下まで落とせるアンプを使うと、至福の時を過ごせるだろう。

ギターを初めて手にした時が、既にデジタルアンプが主流だったギタリストには、真空管のアンプは近所迷惑、値段が高い、維持が面倒、とあまり購入したく無いかもしれない。しかしデジタルは艶がない。音量を上げれば機械的な音が増して、無機質になるだけだ。

真空管アンプは、冬場は真空管が冷たいのですぐには暖まらず、ベストな音が出ない、夏は放熱のためにファンをまわす。数年に一度は真空管を都内まで買いに行き、交換をして、バイアス調整の為に楽器店まで持って行き、アンプを預けて、作業が済んだら引き取りに行く。調整代金も安くはない。おまけに納期が意外と長い。しかもクルマがないと電車ではまず無理だ。ではそこまでして何故、プロは真空管アンプを使うのか?

『つまり音が極めて良いからだ。』手間をかけても使うに値するのだ。
話を戻そう。

○ ネック・ヘッド

Fenderロゴの下に2つのパテントNo.が入る。またヘッドの丸みを帯びた箇所の『ORIGINAL CONTOUR BODY』下に小さく『Pat. Pend』と加わる。

○ ドット・ポジション

指板のット・ポジション。 59~64年に採用されたドットは灰色~白身を帯びたクレイ・ドットである。クレイとは粘土の事で、光沢のないことから付けられた。落ち着いた渋い感じだ。

○ コントロール系

この年からは、54年より続いたコーネルダブラー製コンデンサーから円形で薄い、くすんだ赤色のセラミック・コンデンサーに変更される。値は同じ。

■ FFENDER STRATOCASTER 1962年製

この年、フェンダー社にとってストラトの売れ行きに関わる大きな仕様変更がある。
特にローズ指板にこだわるプレイヤーにとって・・・。
そう、『スラブ指板からラウンド指板に変更』があるのだ。
では何故ラウンド指板に変更があったのか?
それは硬質なメイプルネックと指板材のハカランダの収縮率の違いが起きたからだ。そのため、接着に時間がかかり、かつトラブルも多いという難題が発生したのだ。

薄いラウンド指板は頼りない印象を持つプレイヤーもいると思うが、決して手抜きではない。むしろひと手間、ふた手間かかっている。なんと言っても、ローズ指板を指板のカーブに沿う様に、接着をしなければならなかった。指板の厚みはストラトキャスター最終年の82年までおおむね同じ位であった。
人気度ではスラブ指板かも知れないが、ラウンド指板のサウンドも正しくロックでVINTAGEな音だ。

○ デイト

62年4月からネックエンドの鉛筆書きから、はっきりと判別出来るスタンプになる。生産本数が多くなってきたのでネックの管理に何かしら必要性があったと思われる。

例えば『2SEP62B』なら、ストラトコードの『2』、月『SEP』、年号『62 』 ネック幅を示す『A~D 』 通常の『B』。つまり『ストラトネック固有番号No.2、62年9月製造、一般的なネックサイズのB』と判断する。『A』は細くてほとんど製作されていない。『D』も太くてこれも殆ど無い。この様に分かりやすくした事で、製作する上で効率が良くなると考えたのだと思う。

○ FENDER STRATOCASTER .1963年製

大きな仕様変更はないが、コレクターが見てストラト製作年代に分かりやすい箇所がひとつある。

○ ボディ

重さはローズ指板に変更されてから大きな変化はない。コンター加工はやや浅くなっており、最も深かった57年製よりも2/3ほどしか削られていない。表面も加工が少なく、ボテッとしている。ボディ下部からネックを見たらあまり削っていない。しかし60年代のコンターは変化が比較的少なく安定している。

○ ネック

クルーソンペグは刻印が1列から2列になる。68年のラージヘッド仕様 、通称『F KEY』までの仕様だ。63年中頃より、クレイドットのポジション・マークの12フレットの間隔が少し狭くなる。

【追記】

この60年代プリCBSローズ指板のストラトはあまり仕様変更がない。と言うことはローズ指板の『当たり』を一本手に入れたら、ストラト一途に弾き込めるのでは?ピックアップも有名な女性のピックアップビルダー『アビゲイルの手巻き』で、オーガニックなトーンを醸し出すはずだ。
特にハカランダ指板を持つ個体でコンディションの良い物なら、今後ますます市場に出て来ないだろう。アビは後継者にノウハウを教育して現役を退いている。

ではなぜ人気のミント・グリーン・ピックガードが廃止されたのか?

それは、とびっきり燃えやすかったのだ。木材を扱うギターメーカーにとって火事は何よりもあってはならない事だ。よって廃止された。
何故、ミント・ピックガードの淡い緑の色が存在したかと言うと、3プライの真ん中は黒色のはずだが実際には濃紺の色で、この紺色と薄い白色が微妙に混じった色になるという事だった。そして独特な色になり3トーン・サンバーストにマッチするのだ。年代を経たローズ・ウッドVINTAGE GUITARには美しい組合せと言えよう。

オリジナルの個体で、改良や変更がない事に限定されるが、「おおまかな年代判別法」は以下である。
正面、左のピックガードネジ、上から2本目。それまでの『フロントPUとセンターPUの中間』にネジが一本止められていたが、ネジが『センターPU側』に寄った。

《カタログについて》

赤いカタログが1960年。表紙に登場する四人はジャズマスター、テレキャス、ミュージックマスター、スティールギターを手にしているが、ストラトは奥まった所に位置し、中央にありながら、ひっそり佇んでいるだけ。文章は他のギターも仕様をただ単語を並べているだけで熱意は感じられない。表紙左横のプレイヤーの小さな写真でメアリーケイがブロンドストラトを持って写っているだけだ。これは1961年のカタログにも同じ事が言える。

青いカタログは1961年。表紙は白いジャズマスターで恐らく鼈甲柄のピックガードだろう。カタログの内容もストラトは中央に位置するも、モノクロで印象が薄い。
この60年、61年カタログの製品の紹介の仕方は仕様を書いてあるだけでつまらない。

【フェンダーカタログ フロントライン2003年タイム マシーン シリーズ】より。 白ローズ1960年タイプの正面左から2番目ピックガード中央のネジ。63年モデルのサンバーストの同じく2番目のネジがセンター寄りになっていることが確認できる。

さて数年後~20年あまり、フェンダー社にとって『大変革』が起きる。
次回もお楽しみに♪


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Realize

リッチーブラックモアのアルバム『Diffcult to Cure』の『第9』アレンジを聴いてファンになり、『Spotlight Kid』を聴いてストラトキャスターに目覚める。以後様々なストラトを手にし、20年以上ストラトオンリーで毎月ライブ活動を行っている。
ストラトに対するこだわりは強く、『ギターマガジン』、米国誌『VINTAGE GUITAR MAGAZINE』に所有ストラトが掲載されたことがある。翻訳書として、2002年Fender Accessories Catalogue等に掲載されている『The Fender Stratocaster』第4版がある。
ストラトへの改良は外見からみたら何処を変えたかわからないのがポリシーである。

 
 
 

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