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Rock’n Me 13 洋楽を語ろう:ロッド・スチュワート

2022-01-14

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

こんにちは。洋楽を語りたがるジョシュアです。
第13回目では、ロッド・スチュワートRod Stewartについて語ります。ロッドのことを一行で表現すると「永遠のハスキーボイスを誇る倫敦のドンファン」といったところでしょうか。

ロッドは1945年にイギリスのロンドンで生まれ、現在77歳です。世界史の授業を思い出してほしいのですが、1945年とは、ヒトラーが命を絶ち、日本がアメリカに空襲されて原爆が投下され、第二次世界大戦が終わった年です。調べてみると、同年に生まれたアーティストは結構います。エリック・クラプトン、ピート・タウンゼント、ディープ・パープルのイアン・ギランとロジャー・グローヴァー、そしてニール・ヤング。ロック界の後期高齢者問題は現在進行形の課題です。

話をロッドに戻します。ロッドは初代ジェフ・ベック・グループのヴォーカリストとして名を馳せました。その後スモール・フェイセズ(その後フェイセズに改名)に加入し、”Stay with Me”などロックンロールの名曲を残しました。しかし並行してソロ活動も行い、そちらでは超ポップ路線ですっかりヒットメーカーとなりました。次第にはフェイセズがロッドのバックバンド状態になりバンドは分裂、ロッドは完全にソロとなりました。

ロッドは活動拠点をイギリスからアメリカに移し、ジム・クリーガン(g)、元ベック・ボガート&アピスのカーマイン・アピス(dr)、ジェフ・ベック・グループの『Blow by Blow』で演奏したフィル・チェン(b)などを従え、バラードからロックンロールまでこなす鉄壁のバンドが誕生しました。独特なハスキーボイス、自慢のブロンドとキメキメのアクションで、女子からの人気は絶大でした。そこで世界中で爆発的ヒットとなったのが、『Blondes Have More Fun(邦題:スーパースターはブロンドがお好き)』収録のシングル曲”Da Ya Think I’m Sexy(邦題:アイム・セクシー)”です。まあ、曲の内容はタイトルから想像する通りで、「金髪の美女お持ち帰り」です。ロック的豆知識ですが、このビデオに出演する女優のリリアン・ミュラーは、後にヴァン・ヘイレンの”Hot for Teacher”でも、お色気女優として登場しました。

■ Da Ya Think I’m Sexy

レスポール・カスタムを持つジム・クリーガン、ゼマイティスを持つゲイリー・グレンジャーのツインギターはカッコ良いですが、個人的にはどうしてもリズム・セクションが大好きです。シンプルなオカズにもキメポーズを交えて、ブレイクでは立ち上がらずにはいられない、帝王のようなカーマイン。そして、プレシジョン・ベースを抱えながら、ニコニコしてスクワットし続けるフィル。この曲でのフィルのオクターブ奏法には模倣者が続出しましたが、実は同じアルバムで、フィルがフィルを模倣したような曲があることはあまり語られていません。

■ Standing in the Shadows of Love

次作『Foolish Behaviour』(1980年)からのシングル曲”Passion”(1980年)も、プロモーション・ビデオはツッコミどころが満載です。もちろん、一番大切なのはロッドのシャウトです。そして、延々とスティックを回し続けるカーマイン、ジャズ・ベースを持ちながらロッドと踊り続けるフィルもかなりの見ものです。しかし、一番のツッコミどころは、バンドメンバーがお揃いで着ているTシャツです。そこに書かれているのは…まあ、これ以上は動画をご覧ください。カーマインのインタビューによると、これはバンドの内輪ネタだったそうです。ツアー中は、バンドのメンバーが女性を部屋に連れ込むことが日常茶飯事でした。しかし、それを他のメンバーたちが知ったら最後!他のメンバーたちがこのTシャツに着替え、女性を連れ込んだメンバーの部屋を襲撃して取り締まる…という、いかにも70年代ロックンロール的なイタズラをしていた、とのことです。

■ Passion

その後、ロッドは打ち込み主体のポップ路線を進めました。また、カーマインら一部のバンドメンバーが交代しました。カーマインいわく、解雇の理由は「分からない。後でロッドにも聞いたけど『分からない』って言われた」そうですが、ドラッグ問題が全体的にあったことも匂わせていました。一方で、ロッドは仲違いしていたジェフ・ベックとの関係を修復し、ロッドの“Infatuation”(1984年)にジェフが、ジェフの“People Get Ready”(1985年)にロッドが参加し、名演を残しました。しかしロッドはロックに戻らず、2002年には『It Had to Be You: the Great American Songbook』というアメリカの名曲カヴァー集を発表しました。キザなポップ・シンガーとなったこの時代は、個人的にはまったく関心がありません。しかし、ロッドはこの方向性で商業的に大成功しました。『American Songbook』シリーズは5作目まで作られ、さらにはソウル版の『Soulbook』まで発表し、「株を守りて兎を待つ」という格言を完全に無視していました。

後期高齢者になったロッドですが、最近はまた新たな展開が見られています。フェイセズの再結成話が浮上し、2020年にはイベントで集結、アルバムをレコーディング中との話も出ています。さらには、昨年11月にはソロ名義で新作『The Tears of Hercules』を発表しました。

先行シングルの”One More Time”のプロモーション・ビデオが公開されていますが、これがいかにもロッドなのです。ロンドンの名所をバックに、金髪の美女をずっと侍らせています。しかも1人ではなくて、3人も。

■ One More Time

歌詞の内容がこれまたとんでもなく、昔の恋人に対して「俺は秘密を守れるよ、君も、ね?もう1回、もう1回、もう1回、昔の思い出に免じて」という歌詞です。サーという称号までもらっているのに、こんな恥も外聞もない歌を後期高齢者になって書くというのはどういう性根なのでしょうか。そんなロッドが面白すぎて、ついついリピート再生してしまいます。倫敦のドンファンはまだまだ健在です。

※このコラムは、フィル・チェンの訃報が入った前後に執筆しました。私は、彼のプレイとアクションが大好きでした。彼のFacebookには、温かい人間性を伺わせるエピソードがたくさん載っています。例えば、彼は初対面の人に愉快なニックネームをつける特技があったようです。その特技のおかげで、相手がミュージシャンであろうとファンであろうと、一気に仲良くなったそうです。ご冥福を心よりお祈り申し上げます。


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ジョシュア

1960年以降の洋楽について分かりやすく、かつマニアックに語っていきます。 1978~84年に米国在住、洋楽で育ちました。2003~5年に再度渡米、コンサート三昧の日々でした。会場でのセットリスト収集癖があります。ギター・ベース歴は長いものの永遠の初級者です。ドラム・オルガンに憧れますが、全く弾けません。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズに関するメールマガジン『Depot Street』で、別名義で寄稿しています。
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