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シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その49

2021-09-28

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」

「素直になれなくて」でシカゴ復活!プロデューサー、デビッド・フォスターと共にシカゴを支えた影武者、ビル・チャンプリン。

1982年、デビッド・フォスターのプロデュースにより、「シカゴ16」からのシングルカット「素直になれなくて」が全米1位をとり、シカゴは見事に復活します。その1年前にシカゴのアルバム以上に素晴らしいアルバム、「ランナウェイ」がリリースされています。そのアルバムを作ったのは、シカゴ加入直前のビル・チャンプリン。プロデューサーは勿論、デビッド・フォスターでした。

■ 推薦アルバム:ビル・チャンプリン『ランナウェイ』(1981年)

エアプレイ「ロマンチック」に匹敵する名盤。ビル・チャンプリンは自身のバンド「サン・オブ・チャンプリン」解散後、このアルバムでソロ・デビューをします。プロデューサーはデヴィッド・フォスター。レコーディング・メンバーはスティーヴ・ルカサー(g)、ジェフ・ポーカロ(ds)などのTOTO人脈で、その他にジェイ・グレイドン(G)、レイ・パーカーJr.(G)、マイケル・マクドナルド(Key)といった、ウエストコーストの腕利きが勢ぞろいしています。当然、悪い訳がありません。ウエストコーストの青空のようなカラッとした心地よいロックがベースです。西海岸といっても、前期のドゥービー・ブラザースやイーグルスのようなロックとは音楽の種類が違います。

エアプレイの音楽をTOTOのメンバーが演奏していると云えば分かり易いかもしれません。エアプレイトと違うのはスティーブ・ルカサーのギターがフューチャーされているのが要因です。エアプレイのジェイ・グレイドン(G)も参加していますが、スティーブのトレブリーなギターはジェイ・グレイドンのギターと比べ少しキツめな音がしています。それを和らげるかのように、ペイジズのリチャード・ペイジが参加し、素晴らしいコーラスワークを披露しています。

このアルバム、デビッド・フォスター プロデュースの中でもロック色の強いアルバムですが、ただのロックでないのがデビッド・フォスターの成せる業です。トリッキーでファンキーなロックナンバーから泣きのバラード系までハズレ曲無しです。

勿論、デビッドお得意のアコースティックピアノとフェンダーローズ・エレクトリックピアノのコンビネーションも健在です。また、曲中のリズムフェイクやシンコペーションを上手く使った仕掛けもデビッドの得意とするところです。その辺りの「仕掛け」はアルバム全編に散りばめられています。

また、シンセサイザーの使い処も絶妙で、音的にもこれまで聴いたことの無い素敵な音が効果的に使われています。

推薦曲:『ワンウェイ・チケット』

スティーブ・ルカサーのギターから始まるロックナンバー。キツめのギターをデビッド・フォスターのフェンダー・ローズエレピが上手く中和しています。ただのハードロックにしない辺りはデビッドの真骨頂です。サビ部分の休符の入れ方がトリッキーでデビッドのアレンジの妙味を聴く事ができます。この辺りのリズムのフェイクはデビッド・フォスターの持ち味で、こういう仕掛けはボズ・スキャッグスのミドルマンでも聴く事ができます。

推薦曲:『トゥナイトトゥナイト』

レイ・ケネディのアルバム「ロンリー・ガイ」にクレジットされている「マイ・エバーラスティング・ラブ」からタイトルを「トゥナイトトゥナイト」と曲名を変えてカバーされている名曲でレイ・ケネディとデビッド・フォスターの共作。イントロのアコースティックピアノとフェンダー・ローズエレピの絶妙なアンサンブルはエアプレイ、アース・ウインド&ファイアーの「アフター・ラブ・イズ(ハズ)・ゴーン」を想起させ、バックには美しい弦を纏っています。ボーカル部分に被ってくるホルン的なオブリもデビッドの得意とするところ。デビッド・フォスターの音楽的ルーツがクラシックであることが分かります。

■ 推薦アルバム:シカゴ『シカゴ17』(1984年)

大成功した「シカゴ16」に次いでデビッド・フォスターがプロデュース。更に大きな成功を勝ち取り、グラミーで初の最優秀プロデューサー賞を受賞した。シカゴ最大のヒット作。最高作である一方、シカゴに難しい局面が訪れることを思わせる断片も聴く事ができます。

推薦曲:『ステイ・ザ・ナイト』

世界的に大ヒットしたデジタル・シンセサイザーDX7によるDXエレピから、イントロは始まります。明らかに人間が弾いているタイム感ではなく、DX7をMIDI(ミュージカル・インストゥルメント・デジタル・インターフェイス)を経由し、シーケンサー(自動演奏装置)に繋ぎ、クオンタイズをかけるか、打ち込みをして音がレコーディングされています。MIDIが音楽業界を席巻し、それを利用した音楽が爆発的トレンドになった時期の楽曲です。

デビッド・フォスターが絡んでいる為、お得意の仕掛けが曲中に溢れています。冒頭のスネアから、頭が何処か分からないDXエレピの刻み、2度目のAメロの始まりの前に高速のエレピのカウンターメロディーを入れるなど、デビッドアレンジの真骨頂を聴く事ができます。

推薦曲:『忘れ得ぬ君に』

大ヒット曲、「素直になれなくて」はあまりに強力な楽曲でピーター・セテラの歌声は多くの人の心に刻まれました。当然、多くの人はまたあの様な曲が聴きたいと思います。2匹目のどじょうを追いかけるのは仕方のないことかも知れません。

私はこの曲を聴いた時に「素直になれなくて」の印象が強く、ピーター・セテラの声質も含め「またか」という想いがありました。あまりに楽曲もピーターの声を生かしたアレンジも前作と悲しい位、酷似していました。

ヤマハDX7

今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤

  • アーティスト:ビル・チャンプリン、シカゴ、デビッド・フォスター
  • アルバム:「ランナウェイ」「シカゴ17」
  • 曲名:「ワンウェイ・チケット」「トゥナイトトゥナイト」 「ステイ・ザ・ナイト」「忘れ得ぬ君に」
  • 使用機材:ヤマハDX7、フェンダーローズ・エレクトリックピアノ、 アコースティック・ピアノなど

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

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