
バンド内における便利屋さんであるキーボーディスト。
ピアノを習っていたからという理由でバンドに誘われた人、自らやってみようと思った人は多いはずです。
しかし、現実はピアノのコンクールで賞を取るほどの腕前を持っていても、ロックやポップスなどのバンドでキーボードをやるとなるとなにをやったらいいかわからないということもよくある話です。
ということで、このコラムではピアノを習っていた人がバンドでキーボーディスト(主にシンセサイザー担当)になるにはどうしたらいいかを解説していきます。
■ ピアノと同じ基準で機材を買わない
いざ、バンドを始めようとなれば最初にバンドで使う鍵盤を購入することになります。
生ピアノを持ち歩くわけにいきませんし、ライブ会場やスタジオに必ず生ピアノがあるわけではありませんからね。
まず【キーボード】とひとまとめにされがちですが、キーボードと言ってもピアノ、クラビ、オルガンなどそれぞれ別な楽器です。 なんの音が出したいかを考えて最初の楽器を選びましょう。
ピアノがメインの場合は88鍵でタッチが生ピアノに近いものを選びましょう。
これまで演奏してきた楽器に近いので違和感が少なくなります。
しかし、多くの場合はバンドではピアノだけというよりも色々な音を出してくれる人が求められます。
その場合、購入するのはシンセサイザーです。
持ち運びなどの利便性も考えると61~76鍵くらいのものがいいでしょう。
ピアノ経験者はつい88鍵モデルを選んでしまいますが、大きな車でも持っていないと運搬が大変なうえに88鍵をフルで使用しなければならない場面はそう多くありません。
これから始める人におすすめはROLANDのJUNO-DSです。
ROLAND ( ローランド ) / JUNO-DS61 【純正ケース付】61鍵キーボードシンセサイザー
入門機でもあり、2代目を購入したとしてもサブ機として長く使える優れものです。
ピアノ、エレピ、ストリングス、管楽器、オルガンなど様々な音が出せるのでほとんどのバンドで対応できます。
なお、電子ピアノタイプのものでもピアノ以外にストリングスやオルガンサウンドが出せるものもありますが、実用的ではないので注意しましょう。
生ピアノのような重い鍵盤で弾くプレイスタイルの音ではないので、電子ピアノタイプを購入するなら実際に使用できるのはピアノかエレピの音くらいと割り切ってください。
■ 説明書を読み尽くす
シンセサイザーのバンド内におけるお仕事は音作りと言っても過言ではありません。
もちろん演奏自体も大切ですが、色々な音を使いこなせなければ演奏能力が高くても宝も持ち腐れです。
逆に演奏能力が低くてもなんとかなってしまうのがシンセサイザーでもあります。
そのためにはまず説明書を熟読し、様々な音を使いこなせるようになりましょう。
シンセサイザーにはあらかじめプリセットされたかっこいい音がたくさん入っています。
しかし、そのプリセットを読み込んで弾くだけでは使いこなしたとは言えません。
曲に合わせた自分だけの音を作れるようになるまでは、常に説明書を片手に機材をいじり倒す覚悟が必要です。
■ コードを覚える
バンドで五線譜の譜面を渡されることは少ないです。
コピーバンドで譜面が発売されている曲をやる時くらいですね。
ほとんどの場合はコード譜だけですし、オリジナル曲をやる時はメンバーの作った間違いだらけのコード譜を渡されることもよくある話です。
ギターやベースは五線譜が読めなくてもなんとかコードだけわかればバンドができてしまうのでしっかりと読める人、書ける人はなかなかいません。
逆にクラシックなどから始めたピアニストはコードを知らないことがほとんどです。
仮にコードを覚えたとしても、コードを教えられただけではそこから先に何をしたらいいのかわからないというのがキーボーディスト初心者あるあるです。
それでもまずはコードを覚えましょう。
元々譜面には強いので、1週間くらいしっかり勉強すれば大半のギタリストやベーシストよりも高いレベルでコード理論を習得できます。
それができれば他のメンバーが持ってきた間違いだらけのコード譜を指摘できたり、オリジナル曲のコード進行をさらにカッコよく修正したりできるようになります。
■ バンドに合わせたリズムの取り方を学ぶ
クラシックでソロピアノを学んできた人がバンドに入ると、リズム感が悪いと言われがちです。
実際はリズム感が悪いのではなくプレイスタイルの違いなのですが、まずは他のメンバーと一緒にグルーヴ感を生みだすことに苦労します。
ソロピアノをやってきた人はメトロノームを使った練習もしてきていますが、実際に人前で演奏する時はフリーテンポです。
曲の抑揚などに合わせ意図的にテンポも変えるクセがついています。
これはソロピアノなら悪いことではありませんし、むしろ当たり前にみんなやっていることです。
ただし、バンド内でそれをすることは稀です。
ソロピアノほど頻繁にテンポは変わりませんし、意図的にずらす時はメンバー全員で息を合わせる必要があります。
自分のペースで弾くクセがなかなか抜けず、みんなの音をよく聞くようにと言われてしまったキーボーディストは多いでしょう。
よく聞けと言われてもズレている自覚もあまりないので、多くのピアノ経験者が必ずと言っていいほどぶち当たる壁でもあります。
これには慣れもあるので時間をかけてバンドでの演奏に慣れていく必要があります。
アドバイスとしてはスタジオ練習の時にドラムを目で見て演奏してみてください。
ドラムはバンド全体のリズムを担当しているうえに視覚的にわかりやすい楽器です。
まずはドラムと一体感を感じながら演奏できるようになれば、バンド全体でグルーヴ感を生みだすことに繋がります。
■ まとめ
どういうわけかキーボード(特にシンセサイザー)に関しては入門書のようなものが極端に少ないです。
専門誌もいくつかありますが、そのほとんどの発刊頻度が少ないうえにビギナーが読むような記事は少ないというのが現状です。
そんな背景もあってのことか、バンドでキーボーディストになったピアニストは何をしたらいいかわからないままバンドを辞めてしまうということが多々あります。
ですが、バンドを始めるまでに培ったピアノの経験というのはバンドをやるうえにおいてもプラス要素がたくさん含まれています。 その経験が少しでも生かせるよう、このコラムが参考になれば幸いです。
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