黒人ファンクブラス アース・ウインド&ファイアー!VOL.1
今回の鍵盤狂漂流記は前回のブラスファンクなバンド、スペクトラムを受け、御大アース・ウインド&ファイアーです。1970年代後半に大ブレイクをしたアメリカの黒人ファンクバンドです。アース・ウインド&ファイアーは超強力なブラスセクションを擁し、ギタリストのアル・マッケイ、ベーシストのバーダイン・ホワイト、キーボードのラリー・ダンなどブラス以外の面子も超一流。そこにリーダーでボーカリストのモーリス・ホワイト、ファルセットボーカルのフィリップ・ベイリーと最高峰のメンバーが一堂に会するバンドでした。それに加え、天才エンジニア、ジョージ・マッセンバーグが録音を手掛け、煌びやかで迫力のある最高音質のアルバムを制作しました。
当時、赤坂の「ビブロス」や六本木の「キサナドゥ」など、有名ディスコではアース・ウインド&ファイアーが無ければ営業が成り立たないと云われるほど、最先端でマストなディスコ・ミュージックのマスターピースでした。
■ 推薦アルバム:アース・ウインド&ファイアー『太陽神』(1977年)

アース、ウインド&ファイアーの7枚目のアルバムでアースの最高傑作!
アルバムジャケットは日本人の長岡秀星が手掛けました。古代エジプトのピラミッドやファラオ、黄道12星座のシンボルなどを取り入れ、モーリス・ホワイトが標榜するスピリチュアルな世界を見事に視覚化しています。当時は余り洗練されているとは言えなかったブラックミュージックのレコードジャケットですが、アースはこのアルバムからブラックミュージックではあるものの、音楽的には黒人音楽というカテゴリーに捕らわれない洗練されたグローバルな音楽を目指してしていたのかもしれないと個人的には思っています。
私は黒人音楽が余り得意ではないのですが、このアルバムは大好きなアルバムです。どうしてかと云えば黒人音楽でありながら、このアルバムには余り「黒人」のネチネチした部分を感じないからです。でも黒人が作らなければこの音楽は生まれないのも確かです。しかし、黒人音楽でありながら、白人というよりも白っぽい洗練された何かを感じるのです。
アースというバンドは黒人音楽でありながら、黒い血を残しながら洗練された音楽にたどり着いた非常に稀有なバンドであると思うのです。しかし、この「洗練」というキーワードが将来、音楽の障害になるというのも皮肉な話です。その陰りは次のアルバム「黙示録」辺りから見え始めます。そういう意味で黒人音楽がたどり着いた1つの理想郷的アルバムが「太陽神」だと思うのです。
イントロが長くなりました。このアルバムの素晴らしさはまず、曲がイイという事です。特に1曲目「太陽の戦士」「宇宙のファンタジー」、インタールードを挟み、「ジュピター」という超強力な楽曲が続きます。その楽曲の良さを際立たせているのがフェニックスホーンズによる強力なブラスアンサンブルです。名曲ばかりを収録した超名盤。
推薦曲:『太陽の戦士』
のっけからフェニックスホーンズの強力ブラスが炸裂。オープニングからノックアウトされる。ブラスのフレージングに独特なスピード感があり、モーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリーのボーカル構成も見事なコントラストを見せている。
推薦曲:『宇宙のファンタジー』
ドラマなど、多くのテレビ番組で使用され、再度ヒットした名曲。美しいメロディラインがフィリップ・ベイリーのファルセットボイスと相まって曲の良さを際立たせている。
推薦曲:『ジュピター』
アース・ウインド&ファイアーを象徴するブラスリフとメロディの組み合わせの妙を聴く事ができる。このフェニックスホーンズのリフをホーン・スペクトラムの中村哲氏は涙が出る程、フレーズが複雑でタンギングも難しいとインタビューで答えています。ブラスの強力リフ、ヴァーダイン・ホワイトのベースのうねり、アル・マッケイの単音バッキングなど、楽器アンサンブルが素晴らしく、当時ここまで洗練された黒人音楽を創造していたのはアース・ウインド&ファイアー以外には無かったと思います。
上記の3曲は全て、モーリス・ホワイトとヴァーダイン・ホワイトが作曲をしています。
今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲、使用鍵盤
- アーティスト:アース・ウインド&ファイアー
- アルバム:「太陽神」
- 曲名:「太陽の戦士」「宇宙のファンタジー」「ジュピター」
- 使用機材:アコースティック・ピアノ、フェンダー・ローズエレクトリックピアノ、モーグ・ミニモーグ、ホーナー・クラビネット
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