こんにちは、ネモトです。
先日フェンダーがアッシュの使用を止めると発表しました。
アッシュ材が環境の変化や、エメラルドアッシュボーラーという害虫により枯渇の危機にあるというのが主な理由だそうです。 北米に限った話のようなので他の産地(楽器材としてメジャーなのはヨーロッパかな)のものはまだ確保できると思いますし、レギュラーラインでの使用をやめるだけでカスタムショップでは継続して使うようです。

これからは良材がどんどんなくなっていくでしょう。つまり注目すべきは人工素材。非常に安定した品質を特徴としております。意外と歴史があるものなので素材ごとに解説したり語ったりします(素材の歴史や物性については解説しませんので気になる方は検索してください)
*木が使われる部位に限った話です。主に金属が使われるパーツ(ペグ、ブリッジ、ナット等)には触れません。私の中だとサーモウッドは人工素材に含めていません。
やっていきましょう。
アクリル
私が知る限り最も早く使ったのはフェンダーです。1957年にショウモデルとしてルーサイト(アクリル樹脂の一種)で作ったストラトを発表しました。「Lucite Stratocaster」で検索すると出てきます。美しいギターでしたが残念ながら量産されなかったようです。
おそらく理由は2つ。ギターのボディのように大きく厚いものを気泡が出来ないように作るのは大変難しかったという技術的な問題。もう1つは楽器材として使うにはかなり重いものであったため。
今ひとつ人気が出ず、誕生から10年以上経った69年、アンペグが「クリスタルギター」と称しルーサイト・ボディのエレキギター、ベースの販売を開始。おそらくこれが世界初の量産機。
製作指揮はケント・アームストロングの父ダンでカートリッジ式ピックアップを搭載しており、名作ではないかと個人的に思うのですが、わずか2年でディスコンになりました(余談ですがダンはミステリーピックアップという独特の構造のピックアップも開発しています)
その後もバーニー(hideモデル)やアイバニーズ等でちょこちょこリリースされるのですが、どれも短命です。音も見た目も悪くないと思うのですが…。
現在だと3万数千円で販売されています。技術の進歩によりこんなお値段で販売が可能になったと考えれば有り難みが出てきますね。
カーボン、グラファイト
「カーボングラファイト」ではないので。念のため…。
スタインバーガーのイメージが非常に強いですがパーカー、ステイタス、ゾン、モジュラス、モーゼス等様々なメーカーから販売されています。
非常に硬く軽量なためルーサイトと異なりすぐに定着しました。ネックに採用されることが多く、カーボン・ロッドを木製ネックに仕込むこともままあります(昔はチタンロッドを仕込むことが多かったけど重いのでカーボン・ロッドに変わりました)
ボディ材として使ったアコギもありましたが、音が固過ぎたのか評価はいまひとつ。
また、擦弦楽器用の弓に使われ始めています。今はあまり評価されていませんが、ペルナンブコの取り引きに制限がかかりはじめたのでこれからは研究が進みもっと多くなると思います。
アリウム
アリスティディスが開発した素材です。同社のギター、ベースに採用されています。
アルミニウム
ボディ材としてはトーカイ(タルボシリーズ)が採用しています。非常に金属的な音で割と好きです。世代によって微妙に構造が違うのが面白いですね。
ネック材としてはクレイマーが有名でしょうか。
とはいえ全てアルミで作られたわけではなく、マルチピースネックのセンターとヘッドのみアルミです。アルミネックは曲がらないと言い切ったためトラスロッドが仕込まれていませんが、実際は曲がります。現存している個体は本当にレアで、珍品好きな人はコレクションに加えても良いのではないでしょうか。ヘッド形状も独特。「フォークヘッド」が正式な呼称ですが、日本だと「バルタンヘッド」とも呼ばれます。
ゼマイティスやゾディアックワークス等ボディトップに張るメーカーもあります。飾りかと思っていましたが、ちゃんと音に影響を与えるそうです。
ブラス、ステンレス等
ストラディミュージックインストゥルメンツやヴィジェが指板材として採用したことがあります。
リゾネーターギターではボディ材としても使います。アルミと比べると重量があるためかネック材としては使うメーカーは私の知る限りありません。
木質ボード
ウッドチップを成形して作られたいわゆるリサイクル材です。ダンエレクトロがメゾナイトを使用したギター、ベースを販売しました。
これからもっと増える(はず)の人工素材の世界。ワクワクしながら見守ります。
ありがとうございました。
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