Cheena:前回は私が脱線の匂いを嗅ぎつけて一旦終了させたんでしたね。エフェクター回、再開です。
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Cheena:エフェクター自作は沼と知りつつ手を出し、案の定沼に落ちている。まだ真空管はやってないから大丈夫…
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ネモト:PAはもうやらないと決めつつもPA機器が欲しくて自制するのが大変。もはやカルマ。
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Cheena:前回の中断点、リバーブからやっていきましょう。ネモトさんお願いします。
ネモト:さて、昔のリバーブはなんというか物理的に音を作るものが多かったです。前述のスプリングリバーブや板を使ったプレートリバーブ(EMT140が代表機種) 様々なものを置いた部屋(リバーブルーム)等。
いちいち書くとキリがないので現行機種について話してみましょうか。
ラック搭載型のリバーブの場合(おそらく)世界一普及しているのはレキシコンになります。
Lexicon ( レキシコン ) / PCM92
長い歴史がありますが常に進化を止めないメーカーです。基本的にリバーブのみならず空間系エフェクト特化型マルチプロセッサーです。安いのは単機能だったりしますが。それと、よくわからないならとりあえず買っても損はしないと思います。プリセットの数が半端ではないのでプリセットの音を聞きながら理解を深めることができるはずです。
とはいえ、リバーブに関してはディスクリートを用意しなくてもミキサーに載ってる場合が多いので導入は遅くてもいいと思いますよ。楽器に使うなら別だけど。
Cheena:リバーブは下手にデジタルとして作るより物理に任せた方が簡単に作れるエフェクターの代表格ですね。何ならスプリングリバーブ程度なら週末DIYでも作れます。ガチガチの技術で殴ってくるスプリングリバーブもあるけど…
Gamechanger Audio ( ゲームチェンジャーオーディオ ) / LIGHT PEDAL
ネモト:単純だからねぇ…。
浴室でマイク録りすればルームリバーブを得られる。ルームリバーブはフルートやホイッスルによく合うね。ギターはもう少し強めというかホールリバーブの方が合うかな(個人の感想です)逆に不要なリバーブを切るならアンビエントルームフィルターを使えば簡単に抑えられますよ。
Cheena:ホールリバーブは音量がある程度無いとリバーブが効きづらいのが残念ですね。
ちなみにエフェクターとはあまり関係がないですが大きな教会堂はパイプオルガンと合わせて設計し、最適な余韻が得られるようになっています。
ネモト:コンサートホールなんかも考えられているって聞くね。あんま馴染みのない世界だから今ひとつわからないけど。
教会は結構いい音響機器使っていること多いよね。
特にプロテスタントはよく歌うからか一流メーカーの品多いんだよな…。
Cheena:教会堂やモスクは積極的に(結果的に?)
リバーブを強化する構造ですが、寺社仏閣の場合は構造に音響的な配慮をせず、リバーブは皆無ということが多いですね。
何せ壁面はオープンだし畳は吸音率が高く、無響室に近い環境かもしれない。
あとでかいホテルのロビーにオルガンが仕込んである例がありました。かっこよかったな…
それはそうとエフェクターに戻りましょう。次は何がいいかな。
ネモト:そうだ。脱線しないようにしないと…。
イコライザーの話でもしようかしら。
イコライザーは大別するとグラフィックイコライザー(グライコ)とパラメトリックイコライザー(パライコ)になる。
グラフィックイコライザーはコンスタントQとバリアブルQ(プロポーショナルQとも呼ばれる)、パラメトリックイコライザーはピーキングとシェルビング。イコライザーはこの4種類に分かれます。Cheena君は知ってると思うけど。
誰でも使ったことのあるエフェクターだけど非常に奥が深い。本当に上手い人が使うとボーカルリデューサーになる(数段重ねる必要があるけど)というのはあんまり知られてないかな? 価格帯は1万円から150万円までとかなりのものです。
マスタリング用が高いんだよなぁ…。

私のラックだとEQP-KTはシェルビングのパライコで2215はコンスタントQのグライコ(上下。間にあるのはエンハンサーです)
Cheena:例に漏れずというか、イコライザーもラックの方が強力なものが多いですね。
仕方ないのでワウペダルやオートワウの話でも…あれらは特定の帯域だけを残してカット、又は特定の帯域だけブーストし、その帯域を変えることでワウワウ音を出しています。
ペダルの場合は踏み込み具合により、オートの場合は時間または入力の大きさに応じてフィルター帯域を操作しますね。
ネモト:いやー、こっちは私がついていけない。
ワウペダルはジミー・ペイジがトレブルブースターみたいな感じで使ってたかな。普段はゼロだけどいきなりフルテンにするとトレブルブースター風になるとか。
オートワウは使ったことある。何故ならブーツィー・コリンズが好きだから…ってくらいしか語れない(涙)
Cheena:感覚としては演奏中にMid Freqをいじっている状態ですかね?
ちなみに半踏み状態の音を再現するストンプボックスが(また電鱧…)出ています。
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / Cock Fight エフェクター
ネモト:電鱧何でも作ってんな…。
面白エフェクターで思い出すのはakaiかな。
ウインドシンセで有名なメーカーだけど、昔は独特なエフェクターも作ってたのよ。私が持ってるのはunibass(ウニって呼ばれてた)1オクターブ上のギターの音を出せるオクターバーで、さらに+5度か-4度の音を追加して1人でパワーコードを鳴らせるという面白エフェクター。deep impactってベースシンセもあって、こっちもすごい面白い。今はプレミアついて結構高いね。
Cheena:AKAIのEWIはT-Squareで有名ですねえ。
AKAI ( アカイ ) / EWI5000J
電子楽器関連に強いからエフェクターにも転用できるのか…知りませんでした、たのしい。
ネモト:優秀な飛び道具を作っていたけどどれも2年くらいで終売…。短命なのが残念。今の時代改めてリリースしたらハネるかもね。ルーパーと組み合わせたら面白いと思うからルーパー買おうかな。
Cheena:ルーパーはいいですね。実演奏に使うには慣れが必要だけど練習や単独収録では威力を発揮する。
ラックは見たことがありませんが、単機能コンパクトエフェクターや殆どの高性能マルチで利用可能です。
BOSSは謎技術でコンパクトディレイに内蔵していたな。ループ時間は確か40秒ぐらいだったはず。
BOSS ( ボス ) / DD-8 Digital Delay
ネモト:ルーパーはずいぶんとメジャーになったね。15年くらい前だと見たこともなかった。
DTMの進化に伴ってソロプレイヤー増えたからかな?
35より上の人ならわかってくれそうなエフェクター話をしようかな。昔ライブハウスのサポート要員として派遣されたことがあってさ、下っ端だからライブ終わりに楽屋の片付けや掃除もやらされて、掃除してるとたまに野生のエフェクター(ボスのBD-2とかプロコのラットとか)がいるから保護してたもんだよ。保護したエフェクターの新しい主人を見つけるために楽器屋に行ったもんさ。懐かしいな。
Cheena:野生のエフェクターw
私は話にしか聞いたことがないですねえ。そもそもクラフトがメインなのでライブをしない。
ネモト:昔はみんなテキトーだった。時間にもだらしない奴が多かったな。そんな連中なのに機材の貸し借りが多くて、そのせいでエフェクターみたいに小さなものだと誰かに貸したっけ?とか曖昧になっちゃうのよ。今思うとアホみたいだ。
俺もライブはあんまりやったことないよ。サポートばっかりだからね。バンド活動してれば違ったんだろうけど。
Cheena:BDもRatも、以前はかなり安かったと聞きますね。現在の市場だとハイエンドが大量にあったりで全体的に高く見えるのかな…
ネモト:両方とも中古市場に大量に出回っていたのがあるんじゃないかな?需給のバランス崩壊していたというか。ロングセラーモデルの値上がり(新品価格)は、もちろんものによるけど10〜20%程度かな。消費増税とか考えたら値上がり感はあまりない。
ビンテージはエグいほど上がっているけどね。昔は3万程度でビンテージマフを買えたのに今じゃ10万超える。
Cheena:オリジナルCentaurなんかのビンテージやら、Y.O.S. Smoggy Overdrive( https://www.yosguitars.com/)などのブティックからBoss TB-2Wに至るまでかなりの高値ですもんね…しかも転売が横行してるときた。

ネモト:値下がりしないという保証があるからね。
楽器界隈に投機マネーが入ってからは高くなった。
古いものは適切に管理しなければならないから気楽に手を出すと後悔することになる。素人はやめた方がいいよ(数量限定なら新品でも高額転売できるし、この記事を読んでいる人がズブの素人だとは思わないけど) エルメスのバーキンなんかも値下がり知らずだね。買わないけど。
Cheena:転売だのビンテージ投資だのの話始めるとまた脱線するので戻りましょう…せっかくなので古いもの、ゲルマニウムトランジスタの話でもしますか?ここでしないとなかなか話題に出せないと思うので…
ネモト:確かにわかってくれる人は少ないか…。
ゲルマニウムはケイ素が出てきたら一気に消えた印象。ビッグマフも昔はゲルマニウムコンデンサを使ってたね。根強い人気はあるけどいかんせん高いもんな…。
Cheena:Germanium4 Big Muffは名前の通りゲルマ採用でそこそこ安いですよ。ただしいわゆるBig Muffの音を出そうとすると調整が面倒…最近になってやっと扱いが分かってきたところです。

上:Germanium4 Big Muff。
下:裏蓋を外した部分。ラベルのない銀色の円筒がゲルマニウムトランジスタ。
さっきのTB-2Wやその元ネタのTone Benderなどもゲルマニウムファズです。
温度により音響特性が変化し、低温では腐った音がすると言われますね。
ネモト:前者は知らなんだ。勉強になる、ありがとう。
温度によって音が変化するというのは知ってる。
腐った音と言われても今ひとつピンと来なかったけど確かに温度によって音が違うからリハ終わってもずっとステージに置いておかないと音が変わってPA的にめんどくさいからそのまま置いとけってなってた。
対バンやスタッフにこっそり盗まれたらどうすんじゃい、と文句が来たけどじゃあ持ち込むなめんどくさいんだよ馬鹿って言い返していた。昔はライブハウス側が異常なまでに強かったな。今は違うみたいだけど。
Cheena:ペルティエ素子かなんか使って温度無理やり抑え込むゲルマニウムファズがあってもいいかもしれないですね…
ネモト:ペルチェはいいね。汗かかないから精密機器にも安心して使える。
Cheena:ただまぁ、そこまでして浪漫を求める必要があるかと言われるとそうなんですけど…
真空管の排熱でも利用するか、普通にBossのデジタルファズでも使った方が早い。
ネモト:そうだね。その気合いは買うけど実用性はなぁ…。
Cheena:普通にいいファズ色々ありますからね…
安定した鈴鳴りだけに注力したSound Project “SIVA”のもの、通称水着ちゃんファズとかもありますし、ゲルマがシンプルだのなんだの言ってもBossのFZ-3なんかの高機能ファズに押されがちというか。
でもTone Benderは欲しいしFuzz Faceはあれにしか出せない音がする。Big Muffは筐体のサイズで音が変わる。
実機にしか出せない暴れ馬の浪漫を見せるエフェクターです。
ネモト:ビッグマフでかいからって小さな筐体に作り直してあれ?ってなるの自作界隈あるあるだよね。
そういった浪漫がないと音楽屋として2流よ。
Cheena:幾ら高性能なマルチでもマフのモデリングはなかなか上手くいかないと思うと凄いですよね。
そうだ、マルチエフェクターの話してませんね…
ネモト:そうだった…。

<私が持ってるのはローランドのGR55。
マルチエフェクターというかギターシンセだけど。
専用ピックアップの取り付けが地味に面倒なのでシックネスゲージ持ってない人はシックネスゲージ買うか楽器屋に頼んだ方がいいね。色々とできてなかなか楽しい。ウッドベースのモデリングは結構よかったよ。高性能でできることが多すぎるから上級者向け機材だと思う。
Cheena:GRはいいですね、楽器側の見た目で明らかにやばい機材使ってますよってのが分かる。
ちなみに私のメインマルチはZoomのB1Xです。
ZOOM ( ズーム ) / B1X FOUR ベース用マルチエフェクター
歪みや飛び道具より補正やらコンプ系やらの常時掛けておくものを付けて放置することが多いかな。
そうそう、ギターやベース用シンセだと面白いもの色々出てますし、行ってみます?
オルガンマシンだのシターライザーだのありますよ。
ネモト:面白いね、やろうか!
Cheena:まずはいわゆるシンセサウンドを出すシンセから…
BOSS ( ボス ) / SY-1 シンセサイザー
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / HOG2
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / SYNTH9 Synthesizer Machine
あとは別楽器の音を出力するタイプのものですね
BOSS ( ボス ) / AC-3
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / C9 Organ Machine
ELECTRO-HARMONIX ( エレクトロハーモニックス ) / Ravish Sitar
Roland GRもこの類ですかね。またも電鱧が強い。
ネモト:やつらは何でも作るなぁ…。
Line6のVariaxもシンセってことにしてもいいかな?
Line 6 ( ライン6 ) / Variax Standard Black
Cheena:Variaxはモデリングギターでしたっけ?エフェクターではないけどあのあたりは楽しいですよね。
RolandのG-77とかVoxのStarstreamとか、最近はMooreからTone Capture GTR内蔵ギターが出たんだったかな。
VOX ( ヴォックス ) / VSS-1P-WYGBK(Starstream Type 1 Plus W )
さらには執筆中にBossからモデリングギターの予告が出たり。黄金期なるか?
※Tone Capture GTR…楽器の音を収録し、別の楽器の音に被せるマッチEQ
ネモト:トーンキャプチャー気になる。
MOOER ( ムーアー ) / Tone Capture GTR トーンキャプチャー
ローランドだとG-88もあるね。グレコとコラボしたベースはスティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」のMVでネイザン・ワッツが弾いていた。
Cheena:Grecoもなんでも作りますねえ…
さて、これらのシンセ系だと、専用ピックアップを使用するものと普通に入力すればいいものと2通りありますが、専用ピックアップは基本的に弦ごとの音を個別に拾って音程を検出するところ、普通のストンプボックス型のものは入力音から無理やり検出しています。オクターバー類と同じく、和音を入力すると明確な音程が取れなくなってバグったりというのは有名ですね。
逆にミュートしながら弾いて音程検出させずに怪音を出す"ワザップ奏法"なるものもあるらしいです。
ネモト:私が持ってるUniBassもそうだね、和音には一切対応していない。同時に2本以上鳴らした場合はもちろんミュートが甘いと余弦の鳴りのせいで変な音になる。フレットラップ使えば済むけど。
ワザップ奏法面白そうだからやってみよ。
Cheena:むしろ和音に対応できるストンプボックスが変態なんですよね。それも大抵電鱧、それ以外で有名なのはTCのPolytuneか一部のオクターバーぐらいしかないという…
C9 Organ Machineの和音対応オルガンサウンドが素晴らしい。
ネモト:すごいな電鱧。買ってみようかな。とりあえず試奏行こう。
Cheena:なかなか無いですけどね。でも電鱧だし音はいいから良いのか…と思って買ったり買わなかったりしてしまいます。 あとは変なエフェクターといえば…サスティナー。
Gamechanger Audioと電鱧(またまた…)が主に作っていて、音を無限に伸ばします。
MOOER ( ムーアー ) / Tone Capture GTR トーンキャプチャー
ネモト:E-BowとかAEONとかだっけ?
Cheena:E-Bow、AEONやFernandes Sustainerは弦に磁気で振動を与える方向のアクセサリーなんですが、エフェクターの方は純粋に入力音をサンプリングして再生する方向ですね。ルーパーのループ時間が極限まで短い、というか。
フォンジャックがあればなんでもいいのでボーカルや管楽器にも掛けられます。
ちなみに最近確認したところAEONは終売していましたね。大人しくE-Bow買いましょう。
ネモト:なるほど。知らんかったわ。
E-Bow買おうかちょい悩む。一度買ったけどどうにも合わずに手放したから。
ちょっと離れるけど、エフェクトボードや電源の話でもしようかな。
ちょっと教えてほしいんだけど、エフェクターって原則的に電池駆動の方がノイズ面では有利じゃない?
でも技術の進歩によりローノイズな電源出てきたんのかな?私は古い人間だしあんまりエフェクター使わないから最近の事情は知らなくて。
Cheena:低ノイズ電源だとVivieのClearPowerが爆発的に売れていますね。
Vivie ( ビビー ) / ClearPower-VI パワーサプライ
身も蓋もないですが、高いサプライを使えば一定のところまでノイズは減ります。そこからはエフェクターの構造やら周りの電子機器とか楽器本体のノイズやらですね。POSとかBehringerのプラ筐体使ったりすれば当然増えますし。
ネモト:ほうほう。原則は変わらないけど技術の進歩でねじ伏せるという感じかな。少しズレるけど、昔と比べるとパッチケーブル安いの増えた。昔は割高だったからいちいち作ってたもんな…。
Cheena:ケーブル、重要ですねえ。
Classic Proの80円ジャックと適当なケーブル使って作るのが最安かな…?と思ってたら同じくCPから15cmのパッチが各色300円で出てました。恐ろしい。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / GIC0015 Patch R/BLACK
それとこの頃は格安ソルダーレスも多いですねえ。小柳出やMontreuxにOne Control、サウンドハウスで取り扱いがないものだと結ソルダーレスやらなんやら。もちろんノーマルと比べると割高ですけど、これらの強みは取り回しやすい長さを最速で作れることですからね…
ネモト:ケーブル作るの面倒だからね。というか被覆を剥くのが面倒。LANケーブルもそうだけど。
自分から話振っておいてなんだけどパッチケーブルとか電源はアクセ回でやる予定だからここで切ろう。
Cheena:恒例行事とはいえあまり脱線すると大変ですからね…ケーブル制作の話は工具の回でも扱ってしまったし、エフェクターも大体浚ったのでここらで終わりにしましょう。
アクセサリー回は楽器本体編と周辺機器編の二本立てでお送りする予定です、お楽しみに。
ネモト& Cheena:ありがとうございました!
コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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