バンドで自作曲を共有する際、まず最初に思い浮かぶのはボイスメモやDAWで作ったデモ音源をメンバーに送る方法でしょう。手軽に共有できるため、多くのバンドがこうした方法をとっています。
しかし、メンバーの中に譜面を読める人がいるのであれば、音源に加えて 譜面(スコア)を渡す という選択肢を強くおすすめします。
とはいえ、市販のバンドスコアのように全パートを細かく採譜しようとすると膨大な時間が必要です。特に作曲者が一人で全パートを楽譜にするのは、慣れていないと非常に骨の折れる作業になります。
そこで活躍するのが、今回紹介する 「マスター譜」 です。
マスター譜とは?
マスター譜とは、
- 拍子
- テンポ
- コード進行
- 曲構成
- キメ
など、アレンジに必要な最重要情報だけを抜き出して書いた簡易的な譜面 のことです。
TAB譜や特定の楽器に特化したスコアとは違い、バンドメンバー全員が共通して使える「曲の設計図」 のような位置づけになります。 文章で例えるなら、「完成した原稿」ではなく「章立てと重要ポイントをまとめた構成メモ」のようなもの。 細部は各パートのプレイヤーがアレンジしながら詰めていくため、曲作りの自由度を保ちつつ、必要な情報だけを的確に伝えることができます。
マスター譜のメリット
1. とにかく作りやすい
複雑な記譜をする必要がなく、ざっくりした情報を整理するだけで形になるので、作業時間が圧倒的に短くて済みます。
曲のアイデアを思いついたその日のうちに、ラフなマスター譜を作ってスタジオへ持っていく…といった使い方も可能です。
2. 書き込みやすい
マスター譜は余白を多く取れるため、リハ中に出たアイデアを書き込んだり、その場で決まったアレンジをメモしたりできる利点があります。
たとえば、
- 「Aメロの4小節目でギターのカッティング入れよう」
- 「サビのブレイクは2拍止めに変更」
など、変更点を書き込むことで情報が共有しやすくなります。
3. メンバー間のコミュニケーションが圧倒的にスムーズ
リハーサル中に「音源の1分38秒の部分さ…」と言うより、「Cセクションの2小節目からやろう」と言える方がはるかに早く、誤解もありません。
4. レコーディング時にも大活躍
レコーディングでは構成の確認やテンポ情報が非常に重要になります。
マスター譜があれば、
- 構成の認識違いによる録り直し
- リズムの解釈違い
- キメの食い違い
といったトラブルを大幅に減らせます。
実際にマスター譜を作ってみよう
ここからは、筆者が実際にバンド活動で使用していたマスター譜を参考に、作り方のポイントを解説していきます。

1. タイトルを書く
曲名が決まっていなくても、仮タイトルをつけておくことで、譜面を見たときにどの曲かわかりやすくなります。
例えば、
- 「Ballade #3」
- 「Funk_idea」
- 「ミドルテンポ新曲」
といった感じで「曲の空気感を表す簡単なキーワード」でも十分です。
2. テンポを書く
テンポは曲の雰囲気を共有するうえで最も重要な項目の一つです。
具体的に書けるなら BPM を記載し、まだ決まっていない段階なら Slow / Mid / Fast といった抽象表現でもOKです。
また、スタイルやグルーヴを書いておくと、さらに伝わりやすくなります。
- Fast 16beat Funk
- Slow 4beat Ballad
- Mid Shuffle
- Uptempo Rock
ジャンル表記があるだけで、初見のメンバーでも「大体こんな感じか」とイメージできる点が大きいです。
3. セクションを書く
曲の構成やセクション名は、後のアレンジ作業を劇的に効率化してくれます。
一般的にはアルファベット(A, B, C…)を用いますが、バンド内の文化に合わせて、
- Aメロ
- Bメロ
- サビ
- ブリッジ
- 間奏
など、わかりやすい表現で統一すればOKです。
このセクション名があるだけで、
- 「Aメロの4小節目にドラムフィル入れよう」
- 「Cセクションから合わせてみよう」
といったやり取りが一気にスムーズになります。
4. コードを書く
コード進行は、ギター・ベース・キーボードにとっては当然必須ですが、実は ボーカルやドラマーにも重要 な情報です。
- ● ボーカル
- →メロディやハモりを考える際に、音源だけでは理解しづらい部分を補える。
- ● ドラマー
- →曲のハーモニー進行を理解することで、展開に合ったフィルやダイナミクスを作りやすくなる。
バンド全体で曲を「構造として理解」できるため、統一感のあるアレンジに繋がります。
5. キメを書く
メンバーでリズムやフレーズを合わせたい “キメ” がある場合は、そのフレーズを簡易的でも良いので譜面で示しておきます。
譜割りがわからない場合は、DAWでフレーズ打ち込み → 内蔵のスコア表示機能で譜面確認 という方法も有効です。

※Logicの場合
「キメのタイミングが毎回ズレる」というありがちな問題は、マスター譜があるだけで解決できます。
6. その他の記号と工夫
- ダルセーニョ
- コーダ
- リピート記号
などを使えば譜面をコンパクトにできますが、複雑になりすぎると逆に読みづらくなることもあります。
特に近年は タブレットで譜面を読み、フットスイッチでページをめくる というスタイルが増えています。
IK MULTIMEDIA ( アイケーマルチメディア ) / iRig BlueTurn Bluetooth フットペダル
こうした場合、反復記号を多用すると「ページを巻き戻す」必要が出てしまうため、あえてストレートに書いた方が親切な場合もあります。
まとめ
マスター譜の最大の魅力は、メンバー全員が楽曲に対して共通認識を持った状態でリハ・アレンジ・レコーディングに臨める点 にあります。
音源だけの共有では、「この部分、16小節あると思ってた」「構成が違うように聞こえた」といった認識のズレが起こりがちです。
しかし、マスター譜が1枚あるだけで、
- 曲作りのスピード
- 情報共有の正確さ
- アレンジの統一感
が劇的に改善します。
ぜひ参考にしてみてください!
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