■ 豊富な音源を持ったYC61
これまではYC61にまつわるオルガン関連の音源、レスリーシミュレーター周辺の情報を提示してきました。
YC61リポートの最終回はこのキーボードのオルガン以外の音源や機能を紹介したいと思います。
■ オルガンだけではない!
YCの一番の売りはVCM音源によるリアルなオルガンサウンドだと思いますが、それだけではありません。FM音源とAWM2音源もインストールされています。
私はDX7以来のFMサウンドのファンです。FM音源の特性はアナログシンセサイザーでは出せない音を出せること。グロッケンやマリンバ、スティールドラムといったパーカッシブな打楽器音、太いベース音などはYCの得意とするところです。
DX7はどちらかといえばアナログ系のストリングス音などはあまり得意ではありませんでした。当時、DXのストリングスは箸にも棒にも掛からない(失礼!)というのが私の認識でした。今回、YCの音をチェックしていて驚いたのはストリングスの音質が向上していたことです。FM音源は以前、6オペレータだったのが8オペレータにバージョンアップされていますし、発音数も128と増えています。その辺りが音を良くしている要因なのかもしれません。
そしてなんといってもFM音源によるエレクトリックピアノの音です。いわゆる、DXエレピです。1980年代は世の中にDXエレピの音が溢れていました。YCではさらにパワーアップしたDXエレピの音を聴くことができます。
私は80年代中盤からDXエレピの音を好んで使用しました。当時はDX7Ⅱでエレピの音を重ねてピッチをずらし、音に厚みをつけていました。そこにRoland D-50のパッド音をMIDIで重ね、ボーカルバッキングの音を作っていました。こういったDXエレピの音にパッドを重ねて音作りをする手法は世界的にも広がりを見せ、多くのスタンダード的な音が生まれました。
YCは、かつて2台のシンセサイザーを使って出していた音をいとも簡単に出すことができます。当時のDXはエフェクターも内蔵されていませんから、エフェクターとミキサーが入った2U、3Uのラックケースも必要でした。そんな機材はもう必要ありません。
FM音源を持たない各社ではDXエレピをサンプリングしてFM音源のエレピサウンドとして加えていました。しかしサンプリングだと、ただでさえ薄いDXエレピの音が平べったくなってしまい、エレピ音色としてのニュアンスも変わってしまいます。そういう意味ではFM音源によるDXエレピ音はヤマハ独自の音色であると言えます。
エレピを弾く際にはタッチによって発音のレベルを変えることができるという便利な機能もあります。
オルガン専用機を含む2台のシンセサイザーを使って出していた音が、YCでは簡単に出るのです。ビックリですね!
■ 充実したエフェクト
エフェクトも充実しています。
デジタルディレイ、アナログディレイ、デジタルリバーブはもちろん、コーラス、フェイザー、ディストーション、フランジャー、ワウなど、数多のエフェクトを内蔵しています。
これらのエフェクトも設定した音色をkey A、Bに分けて別系統でかけるなど、そのバリエーションの多さに舌を巻きます。スピーカーの種類もクランチやリード、フェンダーローズのスピーカーシミュレートなど、音の出力も選択が可能です。
マスターイコライザーも装備しています。痒い所に手が届く沢山の高品位のエフェクトが用意されているので自分の出したい音のイメージさえあればそれに近付くことができます。
系統も分かりやすいレイアウトで設定も容易です。

YC61のエフェクトパネル(私物YC61)
■ AWM2音源
YCにはヤマハのサンプリング音源AWM2音源も搭載されています。この中にはアコースティックピアノでヤマハのフルコンサートグランドのCFXの音や、新しくサンプリングされたナッシュビルピアノ(私はこのナッシュビルピアノが一番好きなピアノ音)など、素晴らしい音が入っています。
ヤマハの名機CP80のあの音やフェンダーローズ・エレクトリックピアノの音、ダニー・ハザウェイを思わせるウーリッツアーのエレピの音など、使える音が沢山あります。
またパッド音やブラス音も多くあり、兎に角、出したい音が全てといっていいほど入っています。
オルガンと2つのシンセ、合計3音色を同時に鳴らすことも可能です。こういった2~3種の音を選択する場合、パネル上で操作をするのですがパネル下部に付いているOn / Offスイッチを操作するだけです。
キーボードの液晶を見て階層の奥深く入っていくという行為が必要ないため、よく考えられたとても使いやすい構造です。
■ 欲を言えば…
欲を言えばMODX的なもう少し大きなカラー液晶パネルが欲しいです!あと、楽器を持ち上げるための指に掛かる穴が中央部にあるといいなと思います。もう1つは本体が軽いのでオルガンをグリッサンドした際に本体がキーボードスタンドからずれてしまうのがなんとかなれば……贅沢な悩みですね(^^♪

YC61の液晶パネル(私物YC61)
これからも便利なYC61を使ってみて気づいたことがあれば、リポートできればと考えています。
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