私がこれまで出会ったなかで一番素晴らしいと感じた女の子のお話です。
その女の子との出逢いは、彼女(Mちゃん)が小学2年生になったばかりの時でした。当時、私は小学校で仕事をしており、その時に担当になった一人がMちゃんでした。
彼女は重い自閉症と診断がありましたが、最寄りの小学校に通っていました。Mちゃんは意思疎通が得意ではありません。でも、色鉛筆で淡い色を使った絵がとても上手です。その絵を使って気持ちを表現してくれます。だからMちゃんの周りにはいつもお友達が集まっていました。楽しそうに一緒にその絵を見ながら話している姿が今でも目に焼き付いています。
Mちゃんはテレビから聞こえた英語をそのまま話せるなど記憶力がとても良いです。学習発表会の出し物で、すべてのセリフをすぐに覚えてしまい、リハーサルではセリフを忘れてしまったお友達に教えてあげていて先生がびっくりしていました。
でも、じっとして居ること、黙って座っていることが苦手なMちゃん。そんな時はいつも先生に連れられて外に出て行っていました。
ある時、私が卒業式に演奏するピアノを練習しているところに駆け寄ってきて、拍手をしてくれたのです。びっくりしたのはそのあと!すぐにその曲のメロディーを正確にハミングしたのです。その曲を聴いたことがあるのかと思い、お母様に伺うと、おそらく聴いたことはないだろうというのです。それからというもの、音楽室に行こうかと誘うと「ピアノーピアノ♪」といいながらついてくるようになりました。もしかしたらと隣に座らせて真似してごらんとメロディーを弾いてみると、ワンフレーズそのまま真似して弾いたんです。あっという間に1曲弾いてしまいました。そこから、ソルフェージュや歌を一緒に楽しむようになって5か月たった時でした。体育館での全校集会、30分黙ってじっとしているMちゃんにびっくりしました。音楽療育でいくらか緩和できるのは知っていましたが、こんなに成果が出るのかと肌で感じました。それから毎日20分間一緒にピアノを弾いたり聴いたりするようになり、3年生が終わるころにはお友達と会話のキャッチボールがなんとなくできるようにまでなりました。もしかしたらこれは音楽の力なのではないかと感じています。なぜなら、学校の行事などでいつものピアノの時間を確保できなかった翌日は必ずと言っていいほど落ち着きがなく泣いていることが多かったからです。
女川の無料こども音楽教室を開いて9月で1年になります。
ここでしかできないレッスンをしたくてサウンドハウスにいます。
ハンディキャップを持つ子供たちは、健常者よりも楽しみを感じる場面に出くわす時間が短いと言われています。実際に、群衆が苦手であったり、逆に嬉しくて動き回ってしまったりすることから、なかなかその場で大勢と楽しい時間を共有するのが難しい場面が多々あるからです。
だったら、その楽しい時間を作って、どんどん提供すればいい!
私たちの無料音楽教室ならそれが可能だと思っています。みんなの笑顔を毎週楽しみにしている私たち講師は、毎回どうすれば楽しい時間が増えていくのか試行錯誤しています。
音楽の持つ力。それは子供たちの笑顔を増やしてくれる魔法のようなもの!と感じています。