
人の意識には「顕在意識(有意識)」と「潜在意識(無意識)」という2つの意識があります。
この2つの意識は「海に浮かんだ氷山」に例えられます。
水面から突き出ている部分が「顕在意識」、水面下に隠れている部分が「潜在意識」です。
「顕在意識」は人が理性で考える時の意識です。つまり頭の中で「こうしよう」と考えている意識領域です。
「潜在意識」は自分では知覚する事が出来ない意識領域です。過去における考えや経験などにより、無意識的に考えている事、行動している事です。
氷山で例えられるように、潜在意識が占める部分の方が圧倒的に大きく、全体の約9割を占めています。
楽器の演奏は『無意識の力を借りる必要がある』
ライブやコンサート、またはレコーディングで演奏する時、「次は身体のこの部分を動かして・・・」「次のAメロではこのフレーズを叩いて・・・」と考えていては、当然良い表現が出来ません。
練習の時とは違い、会場の空気や温度、一緒に演奏しているメンバーとのグルーヴ、お客さんの表情など、本番には自分の演奏以外に感じることがたくさんあります。
演奏中に自分のフレーズだけを考えてしまっていては、アンサンブルとして成り立ちません。
演奏中に「音楽」の中に入り込む為には、「無意識の力」は必要不可欠なのです。
「自動化」「習慣化」する「無意識」の活用 4つの段階
楽器の習得に反復練習は欠かせません。
自転車に乗る時も、バランスを崩し、時には転びながら何度も練習することにより、ゆくゆくはハンドルやペダルを意識することなく、「無意識」に乗れるようになります。
楽器の練習をしている時に、「自分は今どのくらいできているのか」の判断ができるようになると、どれくらい練習すれば良いかがわかります。
では、どうすれば意識している状態から、無意識に移行できるのか。
練習する時に4つの段階に分けて、今自分がどの段階にいるのかを自己チェックしてみましょう。
◎【第1段階】 無意識・無能
何も意識していないし、何も出来ない状態。自転車に乗る練習をし始めた段階。
◎【第2段階】 有意識・無能
意識して練習をするが、出来ない状態。自転車に乗るが、バランスを崩しうまく乗れない段階。
◎【第3段階】 有意識・有能
意識すれば出来る状態。ハンドルやペダルの使い方を意識し、集中すれば乗れる段階。
◎【第4段階】 無意識・有能
無意識でも出来る状態。スマホを触りながら自転車に乗れている段階。(やってはいけません。)
記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があります。
(物覚えが悪いのはあなただけじゃない!記憶の仕組みと練習方法!)
第1段階~第3段階までは「短期記憶」と言えるでしょう。
「意識したら出来る」という状態は言い換えれば「意識しなければ出来ない」という事であり、時間が経てばすぐに忘れてしまう可能性があります。
なかなか上達を感じられない方は、第3段階で「出来た気」になってしまい満足してしまってる状態なのかもしれません。
もしも第3段階で本番を迎えれば、フレーズを間違えてしまったり、曲の構成を間違えてしまったり、思わぬミスをしてしまうリスクも高くなります。
◎ 第4段階に入る為の練習方法
私はドラム講師です。私のドラムレッスンでは、【第4段階】に突入できている事を自分自身で確認できる良い方法として「クチでカウントしながら練習する」をオススメしております。
大きな声で「ワン!ツー!スリー!フォー!」とカウントすることにより、意識がカウントしている方に向くので、実際に手足を動かして叩いているフレーズは、無意識でないとうまくカウントが取れません。
また、自分以外のパート(ボーカル、ギター、ベースなど)のメロディーをクチで歌いながら練習するのも効果的でしょう。

夢を叶えるための「無意識」
認知心理学に「選択的注意」と言われているものがあります。
選択的注意は自分にとって重要だと認識された情報のみを選択し、それに注意を向けることです。
例えば、「セッションに行ってみたいなあ」と考えていると、SNSでイベント情報が目に入ってきたり、友人から情報が入ってきたりします。
「ドラムセットが欲しい!」と思っていると、やたらドラムセットの写真が目に入るようになります。
それらはSNSのタイムラインなどで普段から見ていたもの、聞いていたものですが、「選択的注意」を行うことによって、普段意識していなかったことが認識されるようになるのです。
人間は自分に興味のあることや、自分にとって重要なことに関する情報を受け取って、情報を処理しています。
つまり自分のやりたい事に対して、「やりたい!」と強く思うことで、脳は重要な事と判断し、選択注意を行い、あなたにとって重要な情報を見つけます。
思い込みの効果
人生は自分が強く思い描いた通りの結果になります。
思っている事は「習慣」になり「行動」になるからです。
「自分には才能が無い」「自分は若くないから物覚えが悪い」「日本人はリズム感がない」「音楽で成功するのは無理」といったような、いわゆる『できない理由』は「前例を変えてやる!」というポジティブなエネルギーに変わると良いのですが、「やっぱり音楽で成功するのは難しいよね」と考えていると、脳は「じゃあそんな危険な事はやめておきましょう」と防衛本能を働かせます。
そうすると無意識にブレーキをかけてしまうので、日常に転がっている成功するためのキッカケや出会いにも気付きにくくなります。
「音楽で成功する!」と強く思っていると、脳は無意識にその願いを叶えようと働きます。
情報をキャッチするアンテナを立たせるので、テレビを観ていても、SNSを見ていても、電車の中吊り広告にも、気に留めなかった情報に敏感に反応できるようになります。
そして積極的に行動していると、自分に興味を持ってくれる人も増えてきます。
出会う人も変わってくるし、人脈が広がり「こんな仕事やりませんか?」と声をかけてくれることもあるでしょう。
「できない」と「できる」の思い込み。
どちらを強く思うかで、習慣と行動が変わり、結果が変わるのです。

思い込むトレーニング。「でも~」の位置を変えてみる
「旅行に行きたい。でも、お金がない。」
「バンドをやりたい。でも、時間がない。」
「音楽で成功したい。でも、もう若くない。」
「大きなイベントをやりたい。でも、人脈が無い。」
何かを始めようとする時は、どうしてもできない理由が浮かんでしまいます。
人間には「快適領域(コンフォートゾーン)」というものがあります。
これは、人が不安を感じることのない安心できる精神領域のことで、人間は特別な理由がない限り「昨日と同じ仕事」「昨日と同じ人間関係」などの快適領域から出ようとしない習性があります。
これは動物的にいうと「縄張り」のようなもので、縄張りから抜け出すことは、危険な領域に突入することになります。
思い切ったチャレンジをする事は「快適領域」から抜け出す事になるので、ノルアドレナリンが分泌され、不安と恐怖も高まり、「やめたい」、「逃げ出したい」という気持ちになってしまいがちです。
とはいえ、快適領域から抜け出し、チャレンジしなければ成長はありません。
できない理由が浮かんだ時はこう言い変えてみてください。
「お金がない。でも、海外旅行に行きたい!」
「時間がない。でも、バンドしたい!」
「もう若くない。でも、音楽で成功したい!」
「人脈が無い。でも、大きなイベントやりたい!」
先に述べた通り、思っている事は行動になるので、「〇〇がない。でもやりたい!」を習慣にしておくと、願いが叶う確率はグッと高くなります。
終わりに
「楽器がなかなか上達しない。」「夢が叶わない。」それはもしかしたら「無意識」のうちに、そうなるように行動しているせいかもしれません。
とりあえず行動すると、なんとなくやり方がわかって、目標に向かう道のりが見えて、夢が叶うかもしれません。
なんの裏付けもない「根拠のない自信」は、やりたい事を実現させる、とんでもないエネルギーなのです。