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シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その139 名プロデューサーの名盤特集 パート2 ~トミー・リピューマとマーク=アーモンド編~

2023-06-29

テーマ:音楽ライターのコラム「sound&person」, 音楽全般

横浜CDショップで驚きのアルバムとの出会い

先日、横浜で所用後に時間ができたため、横浜の某CDショップを訪れました。今はサブスクリプションが席巻しているのが理由でCDの購入が減ってしまった私です。しかしサブスクリプションにはない情報や意外な掘り出し物があるため、なるべくCDショップには足を運ぶように心がけています。そこで予想だにしないCDを発見しました。英国人デュオ、マーク=アーモンドのファースト・アルバムです。

マーク=アーモンドといえば、学生時代友人から教えてもらった「TO THE HEART」という、現在では廃盤になっているアルバムがありました。このアルバムのトラックで二人はビリー・ジョエルの「ニューヨークシティ・オブ・マインド」をカバーしています。どちらかといえばフォーキーなデュオですが、ドラムはビリー・コブハムが叩いているという素敵なトラックだったのを記憶しています。

私はこのアルバムを探し続けていますが復刻盤がでない限り、手に入れることができないとほぼ諦めています。

横浜のCDショップの棚の隅っこを見ていた時に、古臭い(失礼!)灰色のジャケットに記された「Mark Almond」というサイケ調の文字が目に飛び込んできました。「噓でしょ!?」復刻盤だと確信した私は即座に「TO THE HEART」を探しましたが、このアルバムはありませんでした。レーベルが違うか、設定年代の括りの関係だったのかもしれません。

ファースト・アルバムの紹介コメントには「初CD化&入手困難盤復活!! ロック黄金時代の隠れた名盤 〈1965-1975編〉」と書かれていました。

ロックの黎明期である1965年から10年の間に廃盤になった音源の再発売です。嬉しいことに歌詞や対訳まで付いています。価格も1,100円と安価。こんな出会いがあるのでCDショップ巡りはやめられません。

トミー・リピューマプロデュースの名盤にクレジットされた「ザ・シティ」の文字がこのファースト・アルバムにも!

私は即座に「マーク=アーモンド」のファースト・アルバムを購入しました。裏面を見ると収録楽曲の中に「ザ・シティ」という記載が。この楽曲はトミー・リピューマがプロデュースし、リリースされた名盤「アザー・ピープルズ・ルーム」の「ザ・シティ」と同名同曲なのは間違いないだろうというのがその理由でした。
マーク=アーモンドがトミー・リピューマのプロデュースで1978年にリリースしたアルバム「アザー・ピープルズ・ルーム」はジャズフュージョン、AORの名盤としてその筋のファンには広く知られています。
トミー・リピューマが「アザー・ピープルズ・ルーム」のプロデュースの際、ファースト・アルバムのセルフ・カバーで「ザ・シティ」を提案したことが容易に想像できます。
トミー・リピューマがプロデュースした「ザ・シティ」は洒落たジャズテイスト漂うボーカルとインストが交錯する好トラック。トミーの魔術が生かされています。
「マーク=アーモンド」ファーストに収録された「ザ・シティ」の原型とは一体どのようなものか?私の期待は膨らみました。

■ 推薦アルバム:マーク=アーモンド『マーク=アーモンド』(1971年)

マーク=アーモンドはジョン・メイオール・バンドのセッション・ギタリストであるジョン・マークとサックス/フルート奏者のジョニー・アーモンドを擁したジャズ・ロックグループ。彼らのファースト・アルバムは71年リリースということもあり、洗練という言葉には遠いものがある。しかしアコースティック・ギターを多用し、ラテン的なテイストを取り入れるなど、ある種の「粋」を感じる。

推薦曲:「ザ・シティ」

ファーストアルバムの中で最も、後のマーク=アーモンドに近いイメージの楽曲。ボサノバをベースにラテンなパーカッションが効いている。この楽曲からマーク=アーモンドの世界が拡大したといえるほど、ワンアンドオンリーなオリジナリティに溢れている。

■ 推薦アルバム:マーク=アーモンド『アザー・ピープルズ・ルーム』(1978年)

スティーヴ・ガット(Dr)、ウィル・リー(B)、ジョン・トロペイ(G)、レオン・ペンターヴィス(Key)等、ニューヨークのジャズ系ミュージシャンがマーク=アーモンドの楽曲に花を添えている。それに加えプロデューサーであるトミー・リピューマとエンジニアのアル・シュミットという鉄壁な面子がこのアルバムの出来を際立たせている。
ジョン・マークの退廃的なボーカルとダークなニューヨークの音が相まってアルバム全体のムードを構築している。出来のいい楽曲と卓越した演奏の組合せはこのアルバムでトミー・リピューマが仕掛けた一番のポイントとして挙げられるのではないか。その一種独特なムードは彼にしか作り出せないものなのだろう。
また、そのアルバムムードを引き立てているアートワーク。三位一体になった完璧な演出だといえる。

推薦曲:「ザ・シティ」

ウィル・リーのベースとスティーブ・ガットのドラムがリズムを刻み、レオン・ペンターヴィスの深くフェイザーがかかったローズピアノが被る。ファースト・アルバムのボサノバベースは香るものの完全にニューヨークの夜の世界が描き出される。そこにくぐもったジョン・マークの声とジョニー・アーモンドのフルート、サックス…。
ファースト・アルバムの原画は変わらないがミュージシャンが変わることで音楽がここまで洗練されるという恰好の例だろう。これがプロデューサー、トミー・リピューマが頭に描いた映像なのだろうと思う。


今回取り上げたミュージシャン、アルバム、推薦曲

  • アーティスト:ジョン・マーク、ジョニー・アーモンド、ウィル・リー、スティーブ・ガット、レオン・ペンターヴィスなど
  • アルバム:「マーク=アーモンド」「アザー・ピープルズ・ルーム」
  • 曲名:「ザ・シティ」

コラム「sound&person」は、皆様からの投稿によって成り立っています。
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鍵盤狂

高校時代よりプログレシブロックの虜になり、大学入学と同時に軽音楽部に入部。キーボードを担当し、イエス、キャメル、四人囃子等のコピーバンドに参加。静岡の放送局に入社し、バンド活動を続ける。シンセサイザーの番組やニュース番組の音楽物、楽器リポート等を制作、また番組の音楽、選曲、SE ,ジングル制作等も担当。静岡県内のローランド、ヤマハ、鈴木楽器、河合楽器など楽器メーカーも取材多数。
富田勲、佐藤博、深町純、井上鑑、渡辺貞夫、マル・ウォルドロン、ゲイリー・バートン、小曽根真、本田俊之、渡辺香津美、村田陽一、上原ひろみ、デビッド・リンドレー、中村善郎、オルケスタ・デ・ラ・ルスなど(敬称略)、多くのミュージシャンを取材。
<好きな音楽>ジャズ、ボサノバ、フュージョン、プログレシブロック、Jポップ
<好きなミュージシャン>マイルス・デイビス、ビル・エバンス、ウェザーリポート、トム・ジョビン、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾン、佐藤博、村田陽一、中村善郎、松下誠、南佳孝等

 
 
 
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