オーディオインターフェイスやAD/DAコンバーター、マスタークロックなど、ハイエンドのレコーディング機器を手がけるブランドとして、昨今注目度が急上昇しているANTELOPE AUDIO。
かねてよりマスタークロックのトップブランドとして、音楽業界はもちろん、映像業界でも世界中のプロスタジオに君臨してきました。最近ではハイエンド機にとどまらず、ポータブルなオーディオインターフェイス、Zen Go Synergy Coreの発売なども話題を集めています。
ANTELOPE AUDIOがどういうブランドかご存知でない方や気になっている人向けに、今回はANTELOPE AUDIOの大定番モデル、Discrete 4 Synergy Coreをご紹介したいと思います!実際に使ってみたリアルな感想をお伝えしたいと思います。

また、文字通りシナジー=相互作用を引き起こす同社の高音質モデリング・マイク、Edge Soloと合わせてレビューしていきます!
特徴とスペック
早速、Discrete 4 Synergy Coreの特徴を見ていきます。
名は体を表すと言われるように、「Discrete 4 Synergy Core」にもその名前にしっかり特徴が表されています。

Discreteは英単語としては「個別的な、分離した」という意味ですが、オーディオ業界では、集積回路を使用しない単体素子で構成された回路であることを意味します。そのため、音質に特化した、より精度の高いプリアンプとなっています。
続いて「4」は先述の高音質なプリアンプが4台搭載されていることを示しています。名前とは関係ないと思いますが、ヘッドホン端子を4つ装備していることも特筆すべきポイント。バンドなどでの録音にもこれ一台で入力から出力までフレキシブルに対応可能です。
そして前身機種からの名称の変化として「Synergy Core」が末尾に付けられています。
これは、FPGAとDSPチップが搭載され、コンピューターに負荷を与えることなく高品質なAntelope FXを利用できるというものです。
Discrete 4 Synergy Core を入手すると無料でコンプやEQ、リバーブやアンプシミュレーターなど36種のAntelope FXが付属します。
■ Spec
- 接続方式
- USB / Thunderbolt
- 最大サンプリングレート
- 192khz
- 最大ビットデプス
- 24bit
- 入出力
- 14in / 16out(デジタル入出力含む)
- ヘッドホン出力
- 4
- デジタル入出力
- S/PDIF、ADAT
- ワードクロック
- ◯
- ダイナミックレンジ
- 121dB
- 重量
- 1.7 kg
- サイズ
- W261 mm × H44 mm × D208 mm
サウンドチェック
早速セッティングしてサウンドチェックをしていきます!
セッティングはマニュアルもあり、サポートページにも充実したインストラクションがあるため、特につまずくことなくMacに認識されるところまでたどり着けました。
一点注意しておきたいのは、Thunderboltで使用する予定でも、最初のアクティベーションはUSB接続で行う必要があるということ。アクティベーションさえ済ませばあとはThunderboltオンリーでも大丈夫です!
まずはPC内にある音楽を聴いてみます。背面のメインアウトからモニタースピーカーに接続して試聴。
最初驚いたのは深みのある低音!特別低音が大きいわけでもないのにベースラインが心地よく体の芯まで響いてくる感じがします。
高音域も非常に繊細で、澄み渡るようにクリアです。
EDMでも重厚なロックでもクラシックでも、それぞれのおいしい帯域がしっかり際立ってきます。
音の生地の手触りまで伝わるような、ダイレクトなサウンドにしばらく仕事を忘れて浸りきってしまいました。
続いて、マイクに接続してプリアンプの音質をチェック。
印象としては、アナログ的な太さもあり、現代的な煌びやかさもある、ハイブリッドなサウンド。
個人的にハードウェアのプリアンプも持っていますが、内蔵のプリアンプでこれだけ良い音だとかえってそのまま使った方がいい結果得られるかも...と考えてしまいました。
Antelope FX
Discrete 4 Synergy Coreは、2つのDSPチップとFPGAプロセッサーを搭載しています。
DSPは、Digital Signal Processorの略で、大雑把に説明すると、オーディオインターフェイスのパワーを使って、PCに負荷をかけることなくエフェクトなどの処理ができるというものです。
DSPといえばUNIVERSAL AUDIOのApolloシリーズなどが有名ですが、ANTELOPE AUDIOでも多岐に渡る高品質なエフェクトを提供しています。
FPGAはField Programmable Gate Arrayの略称で、これもDSPと近いものですが、高速かつ安定した処理を実現するため、エフェクト処理において極めて低いレイテンシーを実現します。
そして、このAntelope FXは「ハードウェアベース」ということが大きな特徴です。完全に独立した機構のため、ハードウェアのプロセッサーやエフェクターがオーディオインターフェイスにそのまま埋め込まれているような感覚です。
Discrete4 Synergy Coreをアクティベートすると最初から36種のエフェクトが含まれています。
- Stay-Levin
- Vari-Mu Tube Compressor
- A-Tuner
- Guitar Tuner
- Power Gate
- Noise Gate
- Power EX
- Expander
- Clear Q
- Parametric EQ
- PowerFFC
- Feed-Forward Compressor
- VEQ-HLF
- Tube 2-Band HPF/LPF
- Veq-1A
- 2-Band Tube EQ
- VMEQ-5
- 3-Band Tube Mid-Range EQ
- 11 x Shred Guitar Cabinets
- Real-Тime FX Bundle
- 11 x Shred Guitar Amps
- Real-Тime FX Bundle
- AuraVerb
- Reverb
- Ba-31
- Germanium Mic Preamp
- Gyraf Gyratec IX
- Dual Tube Mic Preamp with HPF
- X903
- VCA Compressor/Limiter
- Vca160
- VCA Compressor/Limiter
- Fet-A76
- FET Compressor / Limiting Amplifier
世界中のスタジオで活躍する名機がモデリングされており、これだけでもかなり充実していますが、さらに追加したい場合には有料で公式サイトからお好きなエフェクトを追加していくことができます。
早速、試していきます。
付属のミキサーソフトウェアからエフェクトをインサートしていくことが可能で、挿入したらすぐにダイレクトモニターの信号にエフェクトが適用されます。


複雑そう...と少し身構えていましたが、いとも簡単に使えてしまいました。複数のエフェクトを重ねてかけることもできます。ルーティングも自由度が高いため、エフェクト通した信号とドライの信号両方録音することなども可能です。
FPGAの高速処理が関係しているのか、レイテンシーもほぼ感じることはありません。
コンプやEQ、ギターシミュレーター、チューナーなどをこのラックから挿入していき、リバーブはセンドリターンでかけられるよう別途用意されています。EQ、コンプやプリアンプは元ネタを知らなくても、通すだけで心地よいアナログ感を得ることができます。ボーカルにオケの中で使っても自然に際立ってくるようなサウンドになります。リバーブは極めてクリーンでどの楽器にも躊躇なく使える良質なサウンドです。
ここで先述の同メーカーモデリング・マイク、Edge Soloのマイク・エミュレーションもここで適用していくことができます。
Edge Soloについても見ていきましょう。
モデリング・マイクEdge Solo
Edge Soloモデリング・マイクは、かの有名なヴィンテージマイクから、スタジオの定番マイクまで、18種のコンデンサーマイク、ダイナミックマイクの特性を緻密に再現したものです。

Edge Solo自体は一般的なコンデンサーマイクと見た目も変わらず、パッとみてモデリング・マイクとはわかりません。実際にコンデンサーマイクと同じ様に使用することができます。
まずはエミュレーションを使わずにEdge Solo本体のサウンドをチェック。モデリング・マイクというぐらいなので素の状態で使うものではないという先入観がありましたが、実際に音を出してみてビックリ、手持ちの他のコンデンサーマイクと比較しても遜色ないどころか、クリアな中高域が心地よく、すっかり気に入ってしまいました!制作中のデモ曲の録音に使ってみましたが、抜けも良く、ボーカルの存在感がしっかり際立ってきます!モデリングをオンにしてみると、それぞれのヴィンテージマイクの特徴が自然に再現されます。モデルとなるマイクが何かは明言されていませんが、そのイラストと名称でほぼ推測がつくものになっています。
例えばこのマイク。
Berlin87という名称ですが、NEUMANN / U87のモデリングと思われます。モデリングを適用すると、このEdge Soloの素の音の特徴である中高域は落ち着いた感じになり、非常にバランスの良いサウンドになります。
Vienna414はAKG / C414のモデリングと思われますが、煌びやかな高音域が伸びてきて、明らかに実機のサウンドに近くなったことを実感します。それでいて自然な変化のため、使っていてもエミュレーションであることを忘れるほどです。
他にもSHUREやSONY、TELEFUNKENやElectro Voice(と思われる)錚々たる有名マイクのエミュレーションが用意されています!


モデリングの適用や設定は、上述のAntelope FXと同じミキサーソフトウェアから行います。そのため、基礎的な音作りをまとめて行うことができ、合理的です。

その他
Antelope FXは、「AFX2DAW」を別途オプション購入することで、DAWソフトウェア上にてプラグイン・エフェクトを挿入するように使用することが可能です。こちらはWindows / MacのThunderbolt上でのみ使用可能となっております。(Zen Go Synergy CoreのみUSBで動作します!)
Discrete4本体に話は戻りますが、その他、前面パネルの操作感もシンプルにやりたい操作ができるため快適です。入力、出力レベルの調整はもちろん、ミュートやファンタム電源、Dimなど、あまり考えずに直感的に操作できるため作業時にストレスを感じません。また、一番下のボタン長押しからスタンバイ状態にすることができるのも便利です。
まとめ
Discrete 4 Synergy Coreについて説明してきましたが、最も特筆すべきはやはりそのサウンドです。その前提があるからこそ、Antelope FXやマイク・モデリングなどもより説得力のあるものになっているように思います。
ANTELOPE AUDIO伝統のデジタル・クロッキング技術により高い解像度を誇る一方、アナログでもディスクリート回路にこだわって作られていることで、単なる「良い音」にとどまらない一歩先を行く魅力的なサウンドを実現しています!
伝統と革新を併せ持つANTELOPE AUDIO、今後もさらに目を離せないブランドになりそうです!