オーディオインターフェース、ホームスタジオミキサー、ポータブルPAシステムなどの機器に、Hi-Zと記された入力ジャックを目にしているかもしれません。「Hi-Z」は「ハイインピーダンス」の略です。
しかし、それは一体何なのでしょう。さらに言えば、インピーダンスとはいったい何なのでしょうか。
この記事では、Hi-Z入力をシンプルな言葉で整理してみます。
インピーダンスを簡単に
初めて電気について教えるとき、よく理科の先生は、回路の中の電子の流れを配管の中の水の流れに見立てて説明します。電池の電圧はポンプの圧力、電線を流れる電流はパイプの幅、抵抗はパイプの圧着部分です。
これは直流回路の基本を学ぶにあたって、非常に良い方法です。ただし、電気として表されるオーディオ信号について語るとき、数学はかなり複雑になります。波形が上下に動いたり、ゼロより上になったり下になったりして、電線の中の電子が往復運動します。つまり、交流(AC)回路は直流回路とは異なるルールに従います。
インピーダンスとは、回路内または回路の一部で電気がどれだけ「動きにくい」かを表したものです。直流回路に見られる抵抗も含まれます。しかし、それだけではありません。リアクタンスもあり、これにはキャパシタンスとインダクタンスが含まれます。
オーディオ機器において、インダクターは通常、厳選された素材のコアの周りにワイヤーを巻いたコイルを指します。電子がコイルの中を行ったり来たりして磁界が発生するのです。そのため、トランスやスピーカー、ヘッドフォンなどにコイルが使用されています。
どう繋げるか
ごく簡単に言えば、交流回路におけるインピーダンスを直流回路における抵抗と同じように扱えばよいわけで、「水の例え」が役に立ちます。
まず、電気が流れている回路(回路の構成要素)から見てみましょう。1秒間に流れる電子の数が電流で、電子を前に押し出す起電力(背圧)が電圧です。回路は、電圧と電流に関係する所定の出力インピーダンスを有しています。
最初の回路が持つ出力インピーダンスと全く同じ入力インピーダンスを持つ回路を取り付ければ、電子の流れは変わりません。これがインピーダンスマッチングであり、オーディオの接続に有効です。

最初の回路が持つ出力インピーダンスと全く同じ入力インピーダンスを持つ回路を取り付ければ、電子の流れは変わりません。これがインピーダンスマッチングであり、オーディオの接続に有効です。

回路が低い入力インピーダンスを持つと、多くの電流が行き交える(たくさんの電子が動ける広いパイプができる)ようになりますが、それはシステムに投入されるエネルギー量が一定なら、電圧が低くなります(パイプ内の圧力が小さくなる)。

一方、入力インピーダンスが高い回路では、通過する電流量は少なくなり(パイプが細くなる)、それに対応する電圧は高くなります(パイプ内の圧力が高くなる)。

この2つの状況は、それぞれ異なる用途において有用です。パワーアンプでスピーカーを激しくドライブする場合、電流の流れが最良になるように両者のインピーダンスを合わせます。通常、アンプとキャビネットは非常に低いインピーダンス、時には2オーム(Ω)ほどになります。
一方、ギターのパッシブピックアップを考えてみてください。ピックアップは、バッテリーや電源もなく、ギタリストが弦を弾いて弦を振動させ、ピックアップのコイルに微量の電流を流すだけです。もし、可能な限り大きくきれいな波形をケーブルに伝達させ、ギターから外界に電流を流さないようにする必要があります。そのため、ギターの音を入力するには、ピックアップの出力インピーダンスの何倍もの入力インピーダンスが必要です。つまりHi-Z入力です。
これはギターの場合、特に重要です。なぜならインピーダンスは信号の周波数によって変化するからです。ピックアップの信号は、ギターのボリュームやトーンコントロールを経てケーブルに送られるため、様々な”抵抗”に遭遇し、最も高い周波数から徐々に信号が損なわれます。ケーブルが長くなると音が不明瞭になるため、ギタリストは長いケーブルの使用を避けます。Hi-Zインプットは、このような「音質の損失」を最小限に抑えます。

ミュージシャンの世界で活躍するHi-Z入力
ギターの信号を、その音色を損なわず目的地に到達させる方法は数多く存在します。プロオーディオでは、ダイレクト・インジェクション・ボックス(通常、ダイレクト・ボックスまたはDI)と呼ばれ、ハイインピーダンスの信号をローインピーダンスに変換します。ローインピーダンスの信号は非常に長い距離を移動できます。
Hi-Z入力は、ギターの信号をケーブルから機材へ、可能な限り音に影響を与えずに、しかもDIを介さずに入力するように設計されています。ギターやベースを簡単に接続して演奏できるように、Hi-Z インプットが用意されています。
その好例が、Samson Expedition XP800ポータブルPAシステムです。このパワードミキサーはHi-Zインプットを備えているため、ギタリストはペダルボード(またはエレアコに内蔵されたピックアップ)から直接接続でき、手間をかけずに素晴らしいサウンドをPAに取り込めます。

USBオーディオ・インターフェースでギターを直接コンピューターに録音する場合、特にギタリストがコンピューターのソフトウェアを使用してエフェクトなどをかける場合は、Hi-Z入力があると非常に便利です。Samson G-Track Proは、Hi-Z入力を装備しており、ボーカルとギターを同時に録音できます。

もうひとつHi-Zインプットに関して重要な点があります。それはワイヤレス・ギター送信機です。ギターに接続するトランスミッターの入力インピーダンスが低いと、レシーバーがどのようなペダルボードに接続していても、元のトーンを再現できません。SamsonのAirLine 88x AG8、Concert 88x、Concert 99ギター・ワイヤレス・システムのトランスミッターにHi-Z入力が搭載されているのはこのためです。

では、Hi-Zのインピーダンスはどの程度の高さにすればよいのでしょうか。
デバイスのスペックシートによると1MΩです。つまり100万オームです。一般的なパッシブ・ピックアップを搭載したギターにこのインピーダンスを供給すれば、トーンは問題なく再生されます。これより低いインピーダンスを使用すると、音色が損なわれる危険性があります(一部のメーカーは、これよりはるかに低いインピーダンスでも「十分」であるとしています)。
小さなピックアップの信号からオーディオ機器が最大限の電圧を得るには、ピックアップを高い入力インピーダンスの端子に繋がなくてはなりません。その数値は明確です。
この記事はSAMSONによるWhat’s a Hi-Z input and why does it matter?の翻訳です。