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音響機材のヒューズ交換(電源部)をする前に知っておきたいこと

2024-08-02

テーマ:実録 ! サービスマン日記

音響機材で突然電源が入らなくなるケースが時折見られます。そんなケースに遭遇した場合、まずはヒューズを交換して様子を見てみようという方も少なくないかと思います。そのような場合、ヒューズ交換を行う前に知っておきたい内容をご紹介します。なお、今回の内容は前提としてヒューズボックスに外側からアクセスでき(機器筐体天板等を開かずとも)ユーザー側で交換が可能な場合のヒューズ交換についての内容となります。予めご理解ください。
……と前置きしましたのも、機器内部に存在するヒューズが断線している場合、ヒューズ単体の故障というのは稀です。ほとんどのケースで内部回路に異常が発生し、結果としてヒューズが断線するということがあります。その場合、ヒューズを交換しても改善が見られず、修理を依頼しなければならないためです。

目次

  1. ヒューズに関する基本事項
  2. ヒューズ交換の際に役立つノウハウ
  3. ヒューズ交換でも改善しないケースに関して

1. ヒューズに関する基本事項

「ヒューズの役割」

ヒューズというのは、機器へ流れ込む電流がヒューズの溶断電流を超過した場合、ヒューズが切れることで機器内部に異常な電流を流さないようにし「機器内部を保護する役目」また「他の機器に影響を及ぼさないようにする役目」があります。ヒューズはACインレットのL極側(非接地側/活電側)、と電源基板部分のAC受電端子の間に存在していて、基本的には外部AC電源側で異常な電流が発生した場合にヒューズが溶断することで機器を保護します。※下図参照。

余談ですが、電源コンセントのLとNを厳密に意識して使用される方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。推奨としてはLとNは正しく接続された方が宜しいです。たとえ反対に接続した場合でもヒューズは正しく機能しますが、電源コンセントのL側から常に電圧は印加した状態ですので、(遮断点がヒューズの位置につき)内部回路の状態によって微弱ながら電流が流れる恐れがあります。

「ヒューズボックスの形状」

ヒューズ交換がユーザー側で可能な場合、具体的にヒューズボックスがどのようなものかがあるかご紹介します。

ACインレットにヒューズボックスがあるタイプ

ヒューズボックスは引き出し式で、マイナスドライバー等で引き出すことができます。

円筒形のヒューズボックスがあるタイプ

ヒューズボックスはマイナスドライバーなどで押し込みながら回転させることで、ホルダー部分を取り外しできます。
※なお、ヒューズの取り外し/取り付けの際は感電防止のため、必ず電源ケーブルを抜いた状態でゴム手袋等装着して作業してください。

2. ヒューズ交換の際に役立つノウハウ

次にヒューズを交換する際、どのヒューズに交換すべきか迷うことがあるかと思います。残念ながら交換に適するヒューズが入手できない場合は、販売元へ確認のうえ修理などを依頼しなければならない場合もあります。

ヒューズを確認する上で以下のポイントを押さえましょう。

①定格電流

頭にF(速断型)T(タイムラグ型)がつくものがあり、溶断する速度に違いがあります。音響機材ではF型は見かけることは少ないですが、T型は多く見かけます。

②定格電圧

250Vなどの表示があります。

③遮断容量

L(低遮断容量)、E(中遮断容量)、H(高遮断容量)の表示があります。

④サイズ

「5.2φx20mm」が多く「6.4φx30mm」「8AG(6.25φx25mm)」のものもあり、それ以外のサイズの場合もありますが音響機材では見かけることは少ないです。元々取り付いているヒューズのサイズを計測すればサイズの把握ができます。

まずは元々取り付いていたヒューズを確認して、サイズや定格表示を確認しておきましょう。なお、ガラス管だけでなく、セラミック管もあります。

上記画像右側がセラミック管。セラミック管は(ガラス管と比較すると)遮断容量が高く、可能な限り同じ材質のヒューズを選ぶようにしましょう。

次に定格表示を読み取ります。下記の画像は実際のヒューズの表示ですが、この場合、定格表示はT200mA/250Vと表示されています。同じ定格のヒューズを探しましょう。サイズは実際にスケールなどで計測します。

さらにACインレットにヒューズの規格が示されている場合もあるので、それに沿って交換ヒューズを選びましょう。

インレットの上に白いプリント印字が見えます(太線赤枠)。これがヒューズの定格を指します。この機器の場合電源電圧がAC100-120Vであった場合、「T800mA L 250V」の規格のヒューズを使用します。220-240Vは欧州などで使用する場合の規格ですので、今回は割愛させていただきます。

ここまで話を進めてきましたが、実際に全く同じヒューズを入手することが難しい場合もあります。その場合は販売店に修理を依頼するのが賢明です。ヒューズは仕様が細かいうえ、メーカー側で試験を行い適切なヒューズの規格を選定しているため、同等規格のヒューズに交換することが必要です。定格の値が異なるものや、溶断特性が異なるものは避けなければなりません。

3. ヒューズを交換しても改善しないケースに関して

最後にヒューズを交換しても、すぐにヒューズが切れてしまうなど、症状が改善されないケースについてです。その場合、冒頭にもお話したように、ヒューズ以外の部分(回路など)に問題がある可能性が考えられます。そういった場合は販売店に修理を依頼されることを推奨します。以上参考になりましたら幸いです。

技術サポート / 堀江 司

社会人経験を経て、ESPギタークラフトアカデミー卒業後、楽器音響業界へ。音響機器修理エンジニア就いて10年。PA音響機器の修理を中心に数多く携わってきました。年々修理分野の幅を広げ、現場で培ってきた知識・経験・技術を土台に、時代とともに変化する新しい技術や製品へ対応すべく歩み続けています。主にJBL、QSC、BEHRINGER、SUMMITAUDIOを中心とした音響機器の修理に従事。電源機器の修理サポートも行っています。第2種電気工事士資格保有。

 
 
 

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