日本でも10月に公開がはじまった映画「CREATION STORIES/クリエイション・ストーリーズ~世界の音楽シーンを塗り替えた男~」。1980年代から90年代においてイギリスのミュージックシーンを席巻したクリエイション・レコーズの創設者Alan McGeeの波乱万丈な半生を描いた、UKインディーロック文化を知る上でも重要な作品として、ロックファンの間で多くの反響を呼んでいるようです。80年代から90年代前半という、特定の時期にフォーカスしてイギリスのカウンターカルチャーを肌で感じる作品という意味では、「さらば青春の光」や「ノーザン・ソウル」「ベルベット・ゴールドマイン」などとともにブリティッシュ・ロックファンには忘れがたい作品になるかと思います。
さて、映画に関することはまだ公開中のためここでは詳しく触れませんが、鑑賞して改めて思ったのはイギリスのロックファンにとってクラブという場所がいかに重要なスポットなのかということでした。常にロックファンの傍にいた映画の主人公アラン・マッギーが創ったレーベルであるクリエイション・レコーズだからこそプライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」やマイ・ブラッディ・バレンタインの「ラブレス」のようなレイヴするロックアルバムが登場したと言っても過言ではないと思います。
そんなインディーロックの重要レーベルの中で、リリース当時は日本ではあまり紹介されないながらも、一部のクラブを沸かした裏レイヴなロック名曲がたくさんあります。今回はそんなプレ・ニューレイヴともいうべき(?)、クリエイション・レコーズが「自然に」放った、血の気が騒ぐキラーナンバーをいくつかご紹介します。
このブログが昔その手のクラブで遊んでいたロックファンの思い出を呼び起こし、80~90年代インディーロックの追体験のきっかけになったら幸いです。 5曲に絞るのは難しいのですが、選曲は完全に私の書いているときの気分によるものであることをご了承ください。
1. The Telescopes/Celeste
DVD化をぜひ希望したいビデオ作品「The Creation Records Compilation Volume Two - Creation2」。未だにVHSを家宝としている私にとって、一番に紹介したかったのがビデオのオープニング・ナンバーであるこの曲です。サイケなオルガン、ファンクなリズム、シャープなギターサウンド、なのにコズミック感ゼロの醒めた脱力ボーカルが心地いい男女混成バンドThe Telescopes。1987年から活動をしていますが、昨今のシューゲイザー人気もあってか2021にもアルバムをリリースするなど精力的です。そして1991年にリリースされたこのナンバー。当時のメインストリームではあり得ない程の高純度なネオサイケサウンドが映像とともに襲い掛かるナンバー。
映像とともに流して踊りたい1曲と言えるでしょう。
2. Slowdive/Morningrise
甘味なフィードバック・ギターノイズの洪水の中から牧歌的な歌メロが湧き出るような1991年のシングルナンバー。これも映像が秀逸で、先述のビデオ作品にも収録。お家で脱力系のレイブ・パーティをやるならお部屋を真っ暗にして、フラッシュを使用しながらこの曲を大音量でかけると最強にトリップできました。
※刺激に弱い方は気を付けて楽しみましょう。
AMERICAN DJ ( アメリカンディージェイ ) / S81 LED II LEDストロボ
なお、Slowdive昨今ではシューゲイザー人気もあり2017の再結成の際はフジロック・フェスティバルで初来日を果たしています。
3. The Jazz Butcher/Our Friends the Filth
惜しくも昨年、亡くなったパット・フィッシュ氏が率いていたThe Jazz Butcherが1991年にリリースしたアルバム「Condition Blue」からのナンバー。
80年代は主にGLASS RECORDSというレーベルで活動。ベルベット・アンダーグランドの影響が強いナンバーやフェイクジャズ、他ゴッタ煮ながら味あるアルバムを多くリリースしてきました。ハウスミュージックに特化した作品も変名プロジェクト含めリリースしましたが、ここでは、ロック作品の中からこの曲を。ファンキーなリズムに、清涼ネオアコースティック・ギターサウンドと女性コーラスが絡んでいくという、これも90年代前半のインディーロックのひとつのエッセンスと言えるでしょう。
4. Swervedriver/Ravedown
クリエイション・レコーズにしてはハードロックよりの曲が多くも、ボーカルのクールネスな声で、現在ではシューゲイザーの登竜門バンドの一つとして紹介されることも多いSwervedriverの1990年の1stアルバムにして名盤、「Raise」からのシングル。
スローながらひたすら下を向きながら大音量を受け入れながら踊り狂えるナンバーです。12インチにはトランシーなシューゲイザーインストもカップリングされています。
5. The Jasmine Minks - Think!
最後は1984年とクリエイション・レコーズの歴史の中では最初期のシングル曲を。アメリカンサイケなギターといい感じに無理やりソウルなボーカルが、必死にファンキーに叩くドラムとベースをバックに感情むき出しにひたすら暴れ続ける、トランシーなガレージ・ソウルミュージック。脱力系ボーカルが多いシューゲイザーバンドとは真逆のサウンド。美しきやっつけグルーヴこそ、メジャーではできないUKインディー・レーベルであるクリーション・レコードによる宣戦布告のようなナンバー。酔っ払って大音量でかけた時の醍醐味は今の時代でも変わらないと思います。
以上、書いているだけのノリで選んだ5曲ですが、レコード大音量で聴くときにはSHUREのカートリッジM44Gと100SOUNDSの対応針RS-44-100Bを使用しています。
100SOUNDS ( ヒャクサウンズ ) / RS-44-100B M44G/M44-7対応 交換針
UKロックをトランシーに楽しみたい方にはこの組み合わせが個人的にはおすすめです。
皆様もクリエイション・レコーズを楽しんでみては!