今月は製作記事を一旦お休みします(本当に大変なのよ)。
以前にも書いたが、私は自前の音響システムを構築する際にスピーカーらしいスピーカーを買ったことが無い。
こんなこと言うと語弊があるが、要は「スピーカーは自作が当たり前!」と思っているからだ。
理由は自分の好きな音にいくらでも調整できるから。
高校生の時にバイトしたお金で、生まれて初めて自分のステレオ装置を買った。
記憶に薄いが、確かアンプがDENONのPMA-510とカセットデッキがTEACのV-5RXだった。
しかし、肝心のスピーカーが無い。
実はここで予算がほぼ尽きたのだ、手元には兄が廃車から外してきたCORALのフルレンジFLAT8が2個ある、、、ならば!と残りの小遣いを握りしめホームセンターに行き180cm×90cm の通称サブロク板を2枚買ってきた。
それに図面に書いた設計図を基に線を引いて、親戚のおじさんに頼み込みカットソーで切ってもらって箱を組み上げた。



さらに翌月、翌々月の学校までのバス代を使い、テクニクスEAS-10F10というフルレンジを2個とパイオニアPT-8Dというツイーターを追加して堂々の(?)3Wayシステムが完成した。
さまざまな雑誌(当時の「無線と実験」や「ラジオ技術」)の記事を読んで、頭の中には理想とするシステムが出来上がっていたが、当時はいかんせん高校生。経済力は理想の10分の1も満たせずただ音が鳴るだけのシステムだったが、その当時は自慢のシステムで、親の力も援助も無く自力でそろえた事に誇りを持っていた。
上京時にはアンプとデッキは持ってきたが、さすがに1個20キロ近いスピーカーは持ってこられなかったので、先輩に頼んでテクニクスの小型2Wayスピーカーと自慢のシステムを交換した。
そして15年後、コツコツ集めた機材で理想のシステムにたどり着く。
プリアンプとチャンネルデバイダー、さらに3Way用にステレオパワーアンプが3台。
それらで鳴らすスピーカーはやはり自作品だが超弩級の力作となった。
38cmウーファーにしようと思ったが、どうしてもTwinウーファーにしたくてFostexの30cmウーファーFW305を4つ用意した。



そして秋葉原で見つけたJBLのホーンHL-91と音響レンズにアメリカ出張の際にアリゾナから持ち帰った(1個5Kgを2個)JBLのdriver2470を使って、高域にはAIDEN社のスーパーツイーターAT-7000を使用した。
これらのスピーカーを収める箱など存在するはずもなく、問答無用で箱の自作に取り掛かったが完成まで2か月以上の時間を費やした。
池袋の東急ハンズで板を買いカットサービスで指定した大きさにカットしてもらったものに、近所の住宅建築現場から廃棄になる端材を貰ってきて縦75cm横90cm奥行き70cmのTwin ウーファーバスレフシステムを作り上げた。
もちろん釘やネジは1本も使っていない。
子供のころからの夢であった超弩級のスピーカーシステムである。
しかし、とんでもなく音が悪かった。出力バランスが悪い、周波数のつながりが悪い。
実はここからが一番大変!
チャンネルデバイダーのカットオフ基板モジュール(1枚15,000円前後)を何枚も替えてカット&トライ、出力バランスも何度も何度も聴き直しては調整する日々。
そしてついにコレでイイだろうくらいまで来た。
最終的にヤマハのB-1、LUXMAN、などのパワーアンプを経てONKYO M-509インテグラを2台。
高域用にJBLパワーアンプを経て、自作のJ-FETモノラルパワーアンプを2台という大所帯システムになってしまった。
友人が一度ウチに遊びに来た際、知り合いのうちで聞いたBOSEの802が本当に音が良かったなどと言うものだから、それならば本当のいい音を聴かせてあげようと、かなりの大音量でMETALLICAのEnter Sandmanを聞かせてみた。
友人は口をあんぐり開けたまま言葉も無く立ち尽くすだけだった。
「どお?BOSEと比べて?」などと少々意地の悪い質問などしても返答はため息のみ。
やっと最後に「全然違うわ、、、。」との一言。
私自身かなり気に入ってガンガン毎日聴いていたが、バンドの音源を作る時にラージモニターとしてこの自作スピーカーを使用したのが大失敗の始まりだった。
何しろ自分の好きな音が出るように作ってしまったので、このスピーカーでモニターした音源は他の再生機器で再生するととてつもなくバランスが悪い。
ここで初めてリスニング用のスピーカーとモニター用のスピーカーは全く違うのだと言う事に気付く。
そのため、今度はモニター用のスピーカーシステムの自作(よせばいいのに)に踏み切る事になる。
16cmフルレンジでまとまりのある音を目指したがこれも失敗。
なぜかと言うとボーカルの音が出すぎているため、バランスをとったつもりでもミックスダウンした音源を他の再生機器で聞くとボーカルが奥に引っ込んでしまう。
さらに低域と高域が聴こえづらいため、どうしても最終ミックスで低音、高音を上げがちになってとても耳障りな音になってしまう。
Fostexの小形スピーカーも試したが、全体の音像の大小がつかみづらく作業がしづらかったのでこれも却下。
ボロボロのYAMAHA NS-10を手に入れ、ネットワークのコンデンサーを交換しユニットも新品にしてやっと落ち着いた。

数多くのエンジニアが選ぶ理由も何となく納得できた。やはりバランスは大事。
同じような沼は他にもアナログプレイヤー編も有るしギターアンプ編なども有るが今回はこの辺で。
読者のみんなは出来れば沼にはハマらない事を祈る。