マンガ家「永井豪」が週間少年マガジンに『デビルマン』を連載したのは、1972年~1973年。ほぼ同時期にTVでアニメ版も放送されました。が、そちらは子供向け。一方、漫画版は青年向けに描かれていて、劇画調でバイオレンス・シーンも惜しみなく表現されています。読者層も少年誌とはいえ大学生、社会人まで広がっていきました。この『デビルマン』、さまざまなメディアや作品に影響を与え、中でも漫画版の衝撃・影響度は圧倒的でした。

TV版「デビルマン」

マンガ版「デビルマン」
ストーリーは悪魔と融合してしまった主人公の明が、自分の存在に苦悩しながらも悪魔に戦いを挑んでいく。ところが、守るべき人間に裏切られ、恋人を惨殺される。守るべきものがなくなった明は、すべての筋書きを裏で操っていた友人:飛鳥了(サタン)に戦いを挑む。戦いはアルマゲドンとして、20年にも渡り、悲しい結末を迎える。ラストのシーンは観念的ながらとても美しい名シーンでした。

日本のカルチャー史上に打ち立てられた金字塔として、『デビルマン』は後続の作家や作品に絶大な影響を与えてきました。それどころか、永井豪自身も、その呪縛から逃れることが出来ず、何度もデビルマンを自身の漫画に登場させています。『デビルマンレディー』という女性版まで登場してしまうほど。また、『デビルマン』はオリジナルアニメや実写映画化もされましたが、やはり原作を超えるまでの完成度には至りませんでした。

そんな2018年。永井豪画業50周年記念としてNETFLIXでの限定配信が行われます。それがオリジナル・アニメーション作品『Devil Man – cry baby -』。初めて「ストーリーを最後まで描く作品」という謳い文句で話題となりました。ストーリーは漫画版を踏襲し、作画や色彩が非常にスタイリッシュでカラフルなのが特徴です。また、ラッパーが登場し、キーとなるセリフをラップに乗せて歌ったり、音楽も電気グルーヴが担当するなど現代的アプローチも各所にちりばめられています。

この作品、配信と同時に大きな反響が上がっています。オリジナルを超えたという声も聞かれる背景には、サブタイトルの「人が泣きじゃくる理由」という大きなテーマがあり、それが幼馴染みの明と了。デーモンとサタンの間にも登場します。ラストシーン。原作にはない「なんだ?この気持ちは?教えてくれ」と亡くなった明に了が泣きながら問うシーンはオリジナルに新たなエッセンスを加えています。主人公たちが陸上部に所属し、バトンを受け渡すシーンも重要なイメージシーンとなっています。湯浅監督いわく「“了に愛情というものを伝える話”と解釈してストーリーを展開。了が最期に気付くことは、明たちが守ろうとしているもので、それが了に伝わるまでさまざまな現実の出来事にも対峙(たいじ)している姿をバトンやリレーのイメージで重ねて描ければと思いました」とのこと。壮大で奥深いストーリーが、観た人の内面に食い込んでくる近年稀に見る傑作アニメーションに仕上がっています。

NETFLIXの限定配信なのだけが、非常にもったいない。


V.A.「MAN HUMAN / 今夜だけ」(CD)
2018年1月10日リリース
TRACK LIST
1. MAN HUMAN(DEVILMAN crybaby Ver.) / 電気グルーヴ
2. 今夜だけ / 卓球と旅人
KSCL-6302 / ¥926+税