レコードやCD購入者に向け、アーティスト側がサプライズとして用意したのが隠しトラック。クレジットにはないが、音としては存在するトラックです。「ヒドゥン・トラック」や「シークレット・トラック」と呼ばれることもあるそうです。



その隠しトラックの先駆者となったのは間違いなくザ・ビートルズでしょう。『Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band』の最終曲「A Day In The Life」の最後の部分には、「Sgt. Pepper Inner Groove」(犬にしか聞こえないほどの高音とビートルによる意味不明のおしゃべり)と呼ばれるトラックが収録されています。この隠しトラック、レコードの溝部分まで音が収録されていて、レコード針を上げない限り、音が延々と続く手法が採られています。『Abbey Road』の最終曲にも隠しトラック「Her Majesty」が収録されています。CD時代に入り「Her Majesty」は正式に曲としてクレジットされました。どちらにせよ、アルバムが終わったと思ったら唐突に別曲が始まる手法に驚かされた方も多かったと思います。隠しトラックがアルバムの最後にあるのは、わかりやすいのですが、別の手法として、曲間に隠しトラックを配置したのもザ・ビートルズでした。それはホワイトアルバムと呼ばれる『The Beatles』のD面。「Cry Baby Cry」の後に小曲「Can You Take Me Back」が次曲のプロローグ的役割として挿入されています。隠しトラックとしては不思議な場面で登場する曲です。


その他、レッド・ツェッペリン『フィジカル・グラフィティ』の「In My Time Of Dying」のエンディングや、キング・クリムゾン『Islands』のエンディングにも隠しトラックがあります。これらはすべて、アーティスト側のお遊びに近いものが基本になっているようです。
隠しトラックとは別に、最近、多くなってきたのがボーナストラックの挿入です。ボーナストラックはアーティストの意向によるもの以外に、レコード会社の意向として挿入される場合が多くなりました。例えば、輸入盤などは圧倒的に国内盤より安いので、国内盤に付加価値をつけるためにもボーナストラックが追加される傾向にあります。海外アーティストの場合は、来日に合わせて、ボーナストラックを追加してアルバムを再発するという流れも盛んになってきました。
最近のCD発売については、通常盤とデラックス盤など、ボーナストラック(アルバム・アウト・テイクス)満載で出し惜しみをしない販売方法が採られています。余談ですが、それらの国ごとによるオリジナル編集盤は海外のコレクターに人気があるようです。

Phil Collins『Face Value (夜の囁き)』
1981年発売:最後のTommorow Never Knowsの後に隠しトラックとして、「Somewhere Over the Rainbow」が歌われています。
右は2016年に再発売されたボーナストラック入り(アウトテイクスや未発表ライブを収録した)デラックスエディション2枚組。